
コインベース、スペースXの“IPO前取引”を開始 未上場株投資はどこまで広がるのか
コインベースが、ついに未上場企業の「IPO前市場」に乗り出した。第一弾として選ばれたのは、イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXである。米国外のユーザーに対し、同社が上場する前の価格変動に連動する永久先物契約を提供する。上場前のスペースXに、いわば“先回り投資”できる商品だ。

米暗号資産取引所大手のコインベースが、ついに未上場企業の「IPO前市場」に乗り出した。
第一弾として選ばれたのは、イーロン・マスク氏率いる宇宙開発企業スペースXである。米国外のユーザーに対し、同社が上場する前の価格変動に連動する永久先物契約を提供する。上場前のスペースXに、いわば“先回り投資”できる商品だ。
コインベースが木曜日に公表したブログ投稿によれば、この商品はUSDC決済の永久先物契約で、スペースXのIPO前評価額を追跡する。期限やロールオーバーはなく、24時間365日取引が可能。損益はUSDCで決済される仕組みだ。コインテレグラフも同商品の概要を報じている。
ポジションは、同社プラットフォーム上の既存の永久先物と同じように、いつでも建てたり閉じたりできる。将来、スペースXが実際にIPOした場合、保有中のポジションは自動的に上場後の公開株価格を参照する永久先物契約へ移行するという。
ただし、今回の商品は開始時点では米国人向けには提供されない。対象となるのは、米国外の対応地域にいる「適格ユーザー」に限られる。米国内では、未上場企業への証券性のある投資機会を広く提供することに厳しい規制があるためだ。
コインベースは、この商品について、これまでベンチャーキャピタルや機関投資家に限られがちだった未上場市場へのアクセスを広げるものだと説明している。初回銘柄としてスペースXを選んだのは、マスク氏の宇宙・衛星企業に対する世界的な投資需要が強いためだ。

Pre-IPO perpetual futures launch on Coinbase. Source Coinbase
コインテレグラフはコインベースにコメントを求めたが、記事公開時点で回答はなかった。
暗号資産取引所が競う「IPO前」市場
今回の参入は、暗号資産取引所の間で、未上場企業への投資機会をトークン化、あるいは合成的な金融商品として提供する競争が激しくなる中で起きた。
クラーケンの親会社ペイワードは水曜日、IPO前企業へのトークン化アクセスを提供する同様の取り組みを発表した。バイナンスも5月、スペースXを含む有名未上場企業に連動するデリバティブ商品を投入している。さらに4月には、ビットゲットがIPO前投資商品向けのプラットフォーム「IPOプライム」を立ち上げ、こちらもスペースX関連商品から開始した。
背景にあるのは、現実資産をブロックチェーン上で扱う「RWA(リアルワールドアセット)」市場への関心の高まりだ。バーンスタインが5月26日に公表した調査では、RWA市場は510億ドル、約8兆1600億円規模に成長し、年初来で42%拡大したと推計されている。
一方、同じく5月26日に公表されたビットゲット・ウォレットの報告書では、トークン化株式はRWA市場全体の中ではまだ数%程度にとどまるとされた。取引の多くは、テスラ、アルファベット、マイクロソフトといった一部の大型テック株に集中しており、主にオフショアのプラットフォーム上で売買されているという。
スペースXは、世界で最も注目される未上場企業の一つであり続けている。近年の未公開市場や機関投資家の推計では、その評価額は算定方法やセカンダリーマーケットでの価格次第で、最大1兆7500億ドル、約280兆円に達するとの見方もある。
未上場企業は、本来なら一般投資家には手が届きにくい“奥座敷”だった。そこに、暗号資産取引所が永久先物という形で風穴を開けようとしている。だが、その先にあるのが投資機会の民主化なのか、それとも新たな投機熱なのか。スペースXの名を借りたこの市場は、早くも熱を帯び始めている。

