
英国の銀行、暗号資産企業を"口座締め出し"! 年間2180億円もの取引を拒否…ついにブチギレた議会が本格調査へ
暗号資産取引の実に4割がブロック・遅延――業界からは「もはや"敵対的"」と悲鳴が上がっていた。「世界一の暗号資産ハブを目指す」という政府の掛け声とは裏腹に、銀行の"仕打ち"で投資は海外へ逃げ出す始末。見かねた英国の超党派議員グループが、ついに銀行にメスを入れる。

英国議会の超党派議員グループが、暗号資産ビジネスと利用者が銀行サービスから"締め出し"を受けていないか――口座開設の拒否から暗号資産がらみの取引制限に至るまで――本格的な調査に乗り出した。
月曜日、暗号資産・デジタル資産超党派議員連盟(APPG)は、こうした制限が投資・競争・経済成長にどんな影を落としているかを精査すると発表。制限が"やり過ぎ"になっていないか、その妥当性にもメスを入れるという。
銀行、決済事業者、暗号資産企業らからの意見書は8月31日まで受け付ける。締め切り後、同グループは調査結果と提言を公表する予定だ。
今年1月、英国暗号資産事業者協議会(UKCBC)が実施した調査では、10社の暗号資産取引所が「銀行によって、暗号資産プラットフォーム向け取引の実に4割がブロック、あるいは遅延させられた」と証言。回答者の7割が「こうした制限のせいで、英国での投資・事業拡大・雇用への意欲が削がれた」と答えている。
「投資は海外へ逃げていく」――暗号資産企業の悲鳴
UKCBCの調査に名を連ねたのは、コインベース、クラーケン、ジェミニ、OKX、ビットパンダ、ルーノ、アップホールド、ワイレックス、ズモ、そしてザポ・バンクの10社。このうち8社が「この1年で、送金をブロック・制限される顧客が増えた」と回答し、7社は英国の銀行環境が暗号資産事業者にとって、ますます"敵対的"になっていると訴えた。
ある取引所(社名は非公表)は、1年間で銀行に拒否された取引が10億ポンド(約2180億円)近くに上ったと明かした。この数字には、拒否されたカード決済や、オープンバンキング経由で始めた送金が含まれる。しかも、他のルートで途中断念・ブロックされた取引は除いてこの額だというから驚きだ。
UKCBCは金融行動監視機構(FCA)に対し、すべてのプラットフォームに一律の制限をかけるのではなく、規制上のステータスやガバナンス、詐欺対策の水準に応じて取引所を"仕分け"するよう銀行に求めるべきだ、と訴えている。
ロンドンのコンサル会社デジタル&アナログ・パートナーズのパートナー、ユーリー・ブリソフ氏はCointelegraphの取材に対し、銀行が詐欺やマネーロンダリングのリスクを管理する正当な義務を負っていることは認めつつも、その対策はリスクの程度に応じてケースを見極めるべきだと語る。
「"妥当性"を測る物差しは至ってシンプルだ。その措置は、高リスクの案件と低リスクの案件をちゃんと区別できているか? 今の措置は、まったくできていない」(ブリソフ氏)
ブリソフ氏が問題視するのは、送金先がFCA登録済みの取引所だろうが、無認可の海外プラットフォームだろうがお構いなしに適用される"一律ルール"や"送金額の上限"だ。
背景には、英国の「認証済みプッシュ型送金(APP)詐欺」被害をめぐる補償ルールがある。これが、銀行に「暗号資産がらみの取引は、個別に精査するよりまとめてブロックした方が得」という金銭的インセンティブを与えている可能性があるのだ。2024年10月以降、決済事業者は原則として、対象となる詐欺被害者に1件あたり最大8万5000ポンド(約1850万円)の損失補償を義務づけられている。
暗号資産ハブ"を掲げながら…英国のちぐはぐ
この議会調査は、FCAが9月30日から暗号資産企業の認可申請の受付を始めるのを前にしたタイミングで動き出した。
ブリソフ氏によれば、この申請受付開始は、「世界的な暗号資産ハブを築く」という政府の野望と、FCA登録済みの企業までもが取引所として銀行制限の標的にされ続けている現実との間に、大きな"矛盾"を生んでいるという。
「いったん規制当局が企業を認可したら、銀行はもう『その企業のリスクは分からない』とは言えないはずだ」とブリソフ氏。「それでもなお、その企業を"腫れ物"のように扱うなら、監督当局は理由を書面で説明させるべきだ」
英財務省は2025年12月、「暗号資産規制」案を議会に提出済みで、制度が本格的に施行されるのは2027年10月とみられる。
ブリソフ氏は、認可を受けた暗号資産企業が結局は銀行システムにアクセスできないままなら、規制上の"お墨付き"など実質的にほとんど意味をなさない、と釘を刺す。「自らを暗号資産ハブと名乗る国が、自国で認可した産業に対して決済システムの扉を閉ざし続けるなど、あってはならない」

