
CLARITY法案はまだ生きているのか 上院否決でも残る復活シナリオ
米国のデジタル資産市場構造法案「CLARITY法案」は、上院での討論終結に失敗した。だが、手続き上はまだ葬られていない。問題は、残された時間と60票の壁、そしてトランプ大統領の暗号資産ビジネスをめぐる倫理規定だ。

「水はどこにでもある。だが、飲める一滴がない」
この一年、CLARITY法案を何とか成立させようとしてきた暗号資産業界、ロビイスト、そして議員たちの胸中を表すなら、そんな言葉になるだろう。
交渉もあった。修正案もあった。政治的な駆け引きも、嫌というほどあった。それでも法案は、上院で前に進むだけの力を得られなかった。
CLARITY法案は今週、上院という名の壁に正面衝突した。とはいえ、まだ「即死」ではない。あえて言えば、満身創痍で歩いている状態だ。
デジタル資産市場構造法案が、上院通過に必要な60票をかき集める可能性は、まだ残っている。
共和党のトム・ティリス上院議員が土壇場で賛成から反対に票を変えた時、それは法案そのものへの反対というより、手続き上の判断だった。CLARITY法案に背を向けたように見えたが、実際には議会手続き上の一手だった。再考動議を提出できる余地を残し、法案を再び上院本会議に戻す道を温存したのである。
暗号資産業界団体クリプト・カウンシル・フォー・イノベーション(CCI)の米連邦担当ディレクター、ライアン・イーガン氏は、Magazineにこう語る。
「ティリス上院議員の再考動議により、今会期中であればいつでもCLARITY法案の討論終結採決をやり直す機会が残される。今後の具体的な時期はまだ明らかではないが、その機会を残したいという意向の背景には、過去1週間で進展があったこともある」
ただし、上院に残された時間は少ない。ドナルド・トランプ大統領に関わる倫理規定をめぐり、民主党も共和党もなお割れている。法案支持者の間からも、より超党派的な交渉プロセスが必要だとの声が出ている。
では、CLARITY法案は蘇生できるのか。できるとして、どれだけ大がかりな心肺蘇生が必要なのか。
CLARITY法案は死んでいない だが時間切れが迫る
法案の討論を終わらせ、最終採決へ進めるための手続きである討論終結採決が失敗したからといって、CLARITY法案の議会での旅が終わったわけではない。上院で討論終結に必要なのは60票だ。CLARITY法案は火曜日、49対50で届かなかった。
ティリス氏の再考動議により、今会期中に採決をやり直すことはできる。だが、そのルートには、より現実的な問題が立ちはだかる。時間である。
上院は10月2日から休会に入る予定で、その後、中間選挙後に再開する。下院はすでに選挙期間入りで休会しており、年内に上下両院で法案を前に進めることは一段と難しくなっている。
2025年7月にCLARITY法案が下院を通過した際に賛成した民主党のシュリ・タネダー下院議員は、Magazineに対し、この日程が合意形成に向けた「大きな障壁」になっていると語った。
「今議会に残された立法日は20日しかない。しかもそのすべてが中間選挙後だ。残念ながら、2026年中に妥協が成立する可能性は非常に低い」
非常に低い。だが、不可能ではない。
暗号資産業界には前例がある。米ステーブルコイン法案「GENIUS法案」は2025年5月、48対49で討論終結に失敗した。しかし、そのわずか11日後、2度目の討論終結採決を66対32で通過した。翌月には上院も通過している。
ただし、暗号資産投資会社MVグローバルの創業者カイル・シャッセ氏は、Magazineにこう語る。
「GENIUS法案は討論終結失敗から11日で戻ってきた。だが、GENIUSには合意があった。今回あるのは日程表だけで、票がない。1月3日を逃せば、2027年にゼロからやり直しだ。しかも下院はおそらく民主党になる」
11月の選挙後のレームダック会期でCLARITY法案に再チャンスが回ってくる可能性はある。だが、それは成立可能な合意案がすでに待機していることを意味しない。
60票の問題は、交渉の問題である
CLARITY法案に賛成した49票のうち、民主党からの票は1つもなかった。シャッセ氏はこう言う。
「49票はすべて共和党だった。民主党は、討論を始めることにすら1人も賛成しなかった」
明らかに望ましい状況ではない。ただし、それは民主党が法案そのものを完全に見捨てたことを意味しない。
水曜日、7人の民主党上院議員は、前日に法案前進に反対票を投じていたにもかかわらず、同法の成立に「引き続きコミットしている」と表明した。その中には、5月に銀行委員会で法案を前進させることに賛成したアンジェラ・アルソブルックス上院議員も含まれていた。彼女は今回の討論終結採決では反対したものの、「今こそデジタル資産を規制すべき時であることは明らかだ」と述べ、倫理規定をめぐる交渉にも応じる用意があるとした。
「私たちは今日、合意する準備ができていた。採決の直前まで協議していた。成功する道筋が見えたまさにその時、共和党指導部が土壇場でそれを止めた」
ティリス氏は水曜日、「民主党を説得して乗ってもらいたい」「彼らに責任を負わせる圧力をかけたい」と述べた。自身の手続き上の票変更は、その可能性を残すためだったという。「これは規制されていない市場であり、一定のガードレールが必要だと強く感じている」とも語った。
もはや対立点は、議会が暗号資産にルールを設けるべきかどうかではない。現在の法案パッケージが、超党派の支持を得るのに十分かどうかである。
7人の民主党上院議員は、同法の成立に「引き続きコミットしている」としている。

Seven Democratic senators “remain committed” to enacting the legislation. Source: Kirsten Gillibrand, Senate
タネダー下院議員は、現行案を支持しているとしつつも、火曜日の結果は、法案の起草をめぐって両党がさらに協力する必要性を示したと認める。
「火曜日のCLARITY採決の失敗は、より超党派的な起草プロセスを経ることで、この法案を法律として成立させるために必要な、超党派の圧倒的多数連合をつくれる可能性が高まることを示していると思う」
CLARITY法案を救うために書き換えるなら、何が残るのか
シャッセ氏によれば、問題はもはや暗号資産政策の技術的な条文作りを超えている。焦点は、トランプ大統領の暗号資産関連の利害と、それをめぐる倫理規定に移っている。
「これは起草の問題ではなくなった。選挙の6週間前に、大統領の暗号資産保有をめぐる国民投票のようなものになっている。今の条文のままでは持ちこたえられない」
共和党は火曜日の採決に先立ち、民主党が求めた126項目の実質的な修正をすでに盛り込んでいた。公職者が暗号資産事業から利益を得ることへの制限強化や、一部の倫理規定について州司法長官に執行権限を与える内容などだ。

Alsobrooks votes no on CLARITY. Source: Angela Alsobrooks, Senate.
それでもタネダー氏によれば、民主党は「大統領が職権を私的利益のために利用する能力」に対し、さらに強い制限を求めている。トランプ氏が2025年の年次財務開示で、暗号資産関連事業から少なくとも14億ドル、約2187億円の収入を報告したことは、「大統領に説明責任を負わせ、デジタル資産市場の長期的な健全性を守るために、ガードレールが必要であることを示している」と同氏は語る。
ただし、倫理規定だけが火種ではない。
シャッセ氏は、業界は「その丘で討ち死にするのをやめるべきだ」と言う。代わりに注目すべきは、ステーブルコインの報酬制度だという。「利回りに何らかの上限やサーキットブレーカーを設けること」が、銀行寄りの上院議員や一部民主党議員を取り込むための「代償」になる可能性が高いとみる。加えて、「不正金融対策や州による執行に関する文言の強化」も必要になるという。
一方で、セルフカストディや開発者保護については、暗号資産業界が安易に差し出すべきではない領域だと同氏は指摘する。これらの保護は交渉の中で激しく守られてきた。非カストディ型の開発者を金融規制やマネーロンダリング対策要件からどこまで保護すべきかをめぐり、議員や業界団体は激しい議論を続けてきた。
議会が止まっても、暗号資産規制は止まらない
仮にCLARITY法案が議会で足止めされたとしても、米国の暗号資産規制が止まるわけではない。
イーガン氏によれば、米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)は、ガイダンス、規則策定、ノーアクション救済、適用除外を通じて「不確実性を減らすコミットメント」を示している。
「CCIは、CLARITY法案の成否にかかわらず、各当局の暗号資産アジェンダは力強く進むと見ている」と同氏は述べる。さらに、GENIUS法の実施作業は財務省と銀行監督当局で続いていると付け加えた。
ストラテジーのエグゼクティブ・チェアマンであるマイケル・セイラー氏も、SEC、CFTC、財務省は既存法の下で規則整備を進めることができると指摘した。
「前進は、議会を待つ必要はない」
それは事実かもしれない。だが、行政機関による対応は、CLARITY法案を成立させることと同じではない。規制ガイダンスは政権交代でひっくり返される可能性がある。一方、法律は簡単には覆らない。
CLARITY法案には、まだ上院へよろめきながら戻る道が残されている。だが、法案の原形をとどめたまま60票を見つけられるのか。
それはまた別の話である。

