
4.1万BTCを盗み、豪遊──約376億円の暗号資産窃盗事件で首謀者が有罪認める
ソーシャルエンジニアリングや自宅への侵入を駆使し、2億4500万ドル超(約376億円)の暗号資産を盗み出した国際犯罪ネットワーク。その首謀者とされるシンガポール国籍のマローン・ラム被告が、RICO法に基づく犯罪組織への関与について有罪を認めた。

シンガポール国籍のマローン・ラム被告が、暗号資産の窃盗と資金洗浄を目的とした国際的な犯罪ネットワークへの関与について、米国で有罪を認めた。
米司法省は9月8日、ラム被告が国際的な犯罪ネットワークの首謀者として、標的となる被害者の特定や共犯者への指示などを担っていたと発表した。
捜査当局によれば、ラム被告らは「ソーシャルエンジニアリング」と呼ばれる人をだます手口に加え、実際に被害者の自宅へ侵入するなどして、2億4500万ドル超(約376億円)相当の暗号資産を盗み、資金洗浄していたという。
裁判記録によれば、この犯罪組織はオンラインゲームのプラットフォーム上で生まれた人脈を起点に形成され、遅くとも2023年10月ごろから2025年5月ごろまで活動していた。
ラム被告は、米ワシントンD.C.の住民から4100BTC超をだまし取った事件をめぐり、2024年に起訴されていた。
4100BTCを奪った「なりすまし」
始まりは、1人の被害者から4100BTC超を奪った事件だった。
米検察当局によれば、ラム被告と共犯者のジーンディエル・セラーノ被告らは、2024年8月18日、ワシントンD.C.在住の被害者から4100BTC超を不正に取得した。当時の価値は2億3000万ドル超(約352億円)にのぼったという。
2024年には、ブロックチェーン調査で知られるザックXBTが、この被害者について、経営破綻した暗号資産レンディング企業ジェネシスの債権者だったと指摘した。
犯行グループが使ったのは、なんとも古典的で、しかし暗号資産の世界では極めて危険な「なりすまし」だった。
犯人らはまずグーグルのサポート担当者を装って被害者のアカウントに侵入。その後、暗号資産取引所ジェミニのサポート担当者になりすまし、「セキュリティ上の問題がある」と信じ込ませた。
そして被害者に2要素認証のリセットを促したうえ、画面共有ソフトを使わせることで、最終的には暗号資産の秘密鍵を露出させたとされる。
この事件については、Cointelegraphの過去記事でも詳しく報じている。
ラム被告とセラーノ被告は2024年9月18日に逮捕され、翌19日に起訴内容が公表された。米司法省は当時、2人が盗んだ暗号資産を暗号資産ミキサー、取引所、資金中継用ウォレット、VPNなどを経由して洗浄したと主張していた。
いつの間にか「2.63億ドル事件」へ
当初は約2億3000万ドル規模だった事件は、その後さらに膨らんでいく。
米検察は2025年5月15日、12人の追加被告を含む修正起訴状を提出。事件は、2億6300万ドル超(約403億円)に及ぶ暗号資産窃盗を含むRICO法上の犯罪組織共謀事件へと発展した。
そこには、2024年7月に起きた約1400万ドル(約21億4000万円)相当の暗号資産窃盗や、ハードウェアウォレットを狙った自宅侵入事件も含まれている。
RICOは「Racketeer Influenced and Corrupt Organizations Act」の略で、複数人による組織的な犯罪活動を対象とする米国の法律だ。
ラム被告は今回、このRICO法に基づく犯罪組織共謀への参加1件について有罪を認めた。
米司法省によれば、ラム被告はワシントンD.C.地区の米連邦地裁でコリーン・コラー=コテリー判事の前で有罪答弁を行った。次回の手続き上の審理は2026年12月8日に予定されているが、具体的な量刑言渡しの日程はまだ発表されていない。
盗んだ暗号資産で「1晩7650万円」の豪遊
事件が世間の耳目を集めたのは、盗んだ金額の大きさだけではない。
米司法省によれば、グループは盗んだ暗号資産を、プライベートジェットや高級腕時計、高級品、賃貸住宅、超高級車などに次々とつぎ込んでいた。
ナイトクラブでの支出は、1晩あたり最大50万ドル(約7650万円)に達したという。
高級腕時計には10万ドル(約1530万円)から50万ドル超(約7650万円超)が費やされ、ロサンゼルス、ハンプトンズ、マイアミでは賃貸住宅を借り、移動にはプライベートジェットを利用。さらに私設の警備チームまで抱えていたとされる。
そして目を疑うのが車だ。
米司法省によれば、グループは少なくとも28台のエキゾチックカーを保有。その価格は1台あたり10万ドル(約1530万円)から380万ドル(約5億8140万円)に及んだという。
暗号資産を盗み、洗浄し、そして豪遊する。
だが、それでも足りなかったのか。
検察側は、ラム被告が拘置中にも共犯者への指示を続け、恋人への高級品の配送まで手配していたと主張している。
ネット上の「なりすまし」から始まった犯行は、やがて被害者の自宅へ実際に侵入するところまでエスカレートした。
暗号資産を狙う犯罪が、もはやオンラインだけの問題ではないことを、この事件はあらためて浮き彫りにしている。

