
予測市場にEUが待った「イベント契約」を名乗っても規制逃れはできない
欧州の規制当局は、企業がバイナリーオプション型の商品をデリバティブではなく「イベント契約」として売り出したところで、EUの金融規制を回避できるわけではないと指摘した。

欧州証券市場監督局(ESMA)は、多くの予測市場の契約が、すでに既存のバイナリーオプション規制の対象になっている可能性があると警告した。企業がそれらを「イベント契約」と称して売り出したところで、金融規制をすり抜けられるわけではない、というわけだ。
ESMAは金曜日に公表した声明で、企業に対し、金融商品の定義に該当するイベント契約については、2018年に導入されたESMAのバイナリーオプション規制を各国が実施する国内措置のもとで、すでに個人投資家への販売、流通、勧誘が禁止されていると改めて注意を促した。
ESMAによれば、判断の基準となるのは、その商品がどう売り込まれているかではなく、契約そのものの特徴である。結果が二択で、支払い額が固定されているイベント契約は、規制対象となる金融商品に該当する可能性が高いという。
またESMAは、仮に個人投資家を対象外にしたとしても、該当するイベント契約をプロ投資家や機関投資家に提供する場合には、EUの金融商品市場指令、いわゆるMiFID IIに基づく認可が必要になるとも指摘した。

Excerpt from ESMA's July statement on event contracts. Source: ESMA
今回の声明は、新たな規制を導入するものではない。ESMAは、イベント契約の提供が増え、予測市場が急速に拡大していることを受けて、注意喚起を行ったとしている。一定の条件を満たすバイナリーオプションについては、2018年以降、EU全域で各国の規制対象になっている。
米国では予測市場をめぐる法廷闘争が激化
一方、米国では予測市場をめぐる規制バトルが激しさを増している。争点は、イベント契約をギャンブルとして扱うべきなのか、それとも連邦政府が規制するデリバティブとして扱うべきなのか、という点だ。州のゲーミング規制当局と、米商品先物取引委員会(CFTC)が正面からぶつかっている。
3月までに、11州の当局がカルシやポリマーケットなどのプラットフォームに対して、法的措置または規制措置を講じていた。ネバダ州は、カルシの業務を一時的に差し止めた最初の州となった。アリゾナ州は、同社が違法な賭博事業を運営していたとして刑事訴追に踏み切った。
その翌月、CFTCは予測市場に対する「専属管轄権」を主張した。議会は、イベント契約を含む商品デリバティブ市場を規制する唯一の権限をCFTCに委ねている、という理屈である。同委員会はさらに、複数の州を相手取って訴訟を起こし、カルシなどのプラットフォームを支持する法廷助言書も提出したと説明している。

The CFTC's April announcement defending its authority over prediction markets. Source: CFTC.gov
法廷闘争はその後もエスカレートしている。6月30日、マサチューセッツ州の判事は、カルシを相手取った進行中の訴訟で、州当局が修正訴状を提出することを認めた。この訴訟では、同社のスポーツイベント契約が州法上の違法賭博にあたると主張されている。
この対立は、議会による対応を求める声にもつながっている。先月、インディアン・ゲーミング協会とアメリカン・ゲーミング協会は、部族団体や労働団体とともに、議員らに対し、CLARITY法を修正するよう求めた。具体的には、予測市場プラットフォーム上でスポーツ関連のイベント契約を明確に禁止する文言を盛り込むべきだと訴えている。彼らの主張では、こうした契約はCFTCの権限外であり、引き続き州の賭博法のもとで規制されるべきものだ。
一部の法律専門家は、予測市場をめぐる連邦規制当局と州規制当局の対立が、最終的には米連邦最高裁に持ち込まれる可能性があるとみている。
「イベント契約」という新しい看板を掲げれば、金融商品でも賭博でもない第三の何かになれる――そんな都合のいい話は、欧州でも米国でも通用しなくなりつつある。予測市場は、成長のスピードに規制の網が追いついてきた局面に入ったと言えそうだ。
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