
暗号資産20億円を盗んだ20歳、高級外車とプライベートジェット豪遊で逮捕
スピード違反で止められたロールス・ロイスの中から、20歳の“暗号資産詐欺師”の転落劇は始まった。トレントン・リチャード・ジョンストンは3月に逮捕されたが、捜査当局がほどなく見つけたのは、単なる交通違反ではなく、より大規模な詐欺スキームへの関与だった。

カナダ出身の若者が、ソーシャルエンジニアリング詐欺によって1300万ドル超、日本円にして約20億9000万円相当の暗号資産を盗み出し、マイアミとロサンゼルスで「派手な生活」を送っていた――。米検察当局がそう明らかにした。
盗まれた資金は、高級車、宝飾品、プライベートジェットでの移動などに使われていたという。
米検察は5月、当時19歳だったトレントン・リチャード・ジョンストンを起訴した。ジョンストンは共犯者らとともに、グーグル、トレザー、その他の暗号資産関連企業の従業員になりすまし、被害者の暗号資産にアクセスしていたとされる。
そして火曜日、20歳になったジョンストンは、マネーロンダリング共謀罪について有罪を認めた。これにより、最大で禁錮40年に及ぶ可能性のあった追加罪状は回避される見通しとなった。

Trenton Richard Johnston’s mugshot. Source: Miami-Dade County
“人をだます”だけで、20億円が消える
暗号資産業界では、ソーシャルエンジニアリング攻撃が広がっている。詐欺師が信頼できる企業や人物を装い、被害者をだまして情報を引き出す手口だ。近年はAIツールの進化によって、なりすましの精度も上がっている。
サイバーセキュリティ企業サイバーズのCEO兼共同創業者デディ・ラヴィド氏は、コインテレグラフにこう語った。
「今回の事件は、今日の大規模な暗号資産窃盗の一部が、高度なコードの脆弱性を突くものではなく、むしろ基本的な人間心理の操作によって起きていることを示している」
同氏はさらに続ける。
「暗号資産では送金が速く、基本的に取り消しが難しい。それが危険性を一段と高めている」
つまり、攻撃者に必要なのは、被害者の信頼を一度だけ、ほんの数分間だけ勝ち取ることだ。その一瞬で、損失は取り返しのつかないものになり得る。
グーグル、コインベース、トレザーを装う
裁判資料によれば、ジョンストンと共犯者らが暗号資産詐欺に手を染め始めたのは、2024年1月ごろだった。
同年2月、ジョンストンはある被害者に対し、グーグルのメールアカウントとコインベースの口座が侵害されたと信じ込ませた。その結果、被害者から約4万1000ドル、日本円で約660万円相当のイーサリアムを盗み出したという。
それから1カ月も経たないうちに、ジョンストンらは今度はグーグルとトレザーの担当者を装った。カリフォルニア州の別の被害者に対し、誰かが暗号資産ウォレットにアクセスしようとしていると信じ込ませたのである。
その結果、被害者の口座から約1300万ドル、日本円で約20億9000万円相当のビットコインが抜き取られた。
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2カ月で約1億9000万円を浪費
検察によると、盗まれた暗号資産のうち約120万ドル、日本円で約1億9300万円相当が、わずか2カ月のうちに、マイアミとロサンゼルスでの豪遊資金に充てられた。
そこに関与したのが、高級車レンタル会社のオーナー、ブランドン・ターディボーンである。ターディボーンもまた、マネーロンダリング罪で有罪を認めている。
ジョンストンは、ターディボーンの協力を得ながら、盗んだ資金の多くを高級車の購入やレンタルに使った。そこには2台のBMW、そしてランボルギーニ・アヴェンタドールSVJも含まれていた。

A picture of a Lamborghini Aventador SVJ, a luxury car prosecutors say Trenton Johnston used stolen money to rent. Source: Wikimedia Commons
さらに、盗まれた資金はプライベートジェットのレンタル、ノースマイアミの賃貸住宅、そして「ニューヨークから来た2人の女性」の航空券にも使われていたという。
ロールス・ロイスでスピード違反、そこから転落
ジョンストンの逃走劇は3月に終わりを迎えた。
ロールス・ロイスを運転中、スピード違反で警察に止められたのだ。その際、ジョンストンはアンフェタミンと疑われる錠剤21錠を所持していたとされる。
捜査当局は、彼のコンピューター、携帯電話、手書きのメモを押収。そこから詐欺スキームとのつながりが明らかになった。
ジョンストンはその後、約53.16ビットコインと275.23イーサリアムを引き渡した。現在価格で約370万ドル、日本円で約5億9400万円相当である。
司法取引と全面協力を踏まえ、検察はジョンストンについて禁錮51〜63カ月を求刑するよう勧告している。また、通信詐欺罪については取り下げる方針だ。
一方、ターディボーンについては、禁錮27〜33カ月が勧告されている。
米当局、暗号資産詐欺への締め付け強める
今回の事件は、大規模な暗号資産詐欺を追跡する米当局にとって、また一つの成果となった。
4月には、カリフォルニア州の住民が、ソーシャルエンジニアリングと住居侵入を組み合わせ、2億6300万ドル、日本円で約422億円相当の暗号資産を盗んだ犯罪組織に関与したとして、禁錮70カ月の判決を受けている。
この人物、22歳のエヴァン・タンゲマンは、少なくとも350万ドル、日本円で約5億6200万円相当の不正資金の洗浄に協力したとして、昨年12月に有罪を認めていた。
また2月には、中国籍の人物が、世界規模の暗号資産詐欺により7300万ドル超、日本円で約117億円以上を被害者から盗んだとして、米連邦刑務所で禁錮20年の判決を受けている。被害者の多くは米国の投資家だった。
ラヴィド氏は、業界の課題をこう指摘する。
「業界は、教育だけに頼ることはできない」
ウォレット、取引所、カストディアン、銀行は、資金が口座から出ていく前に、不審な行動、危険な送金先ウォレット、資金洗浄のパターンを検知するリアルタイムの事前セキュリティ管理を導入する必要があるという。
要するに、盗まれた後に追跡するのでは遅い。実行される前に止める。その発想への転換こそが、いま暗号資産業界に求められている。
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