
ロビンフッド元社員2人を起訴 暗号資産上場情報で先回り取引か
米検察当局が、ロビンフッドの元エンジニア2人をコモディティー詐欺と通信詐欺の罪で起訴した。両被告は、同社が暗号資産を上場する前に非公開情報を利用し、ハイパーリキッドで無期限先物を取引していたとされる。2025年から2026年にかけ、それぞれ5万ドル(約775万円)超の利益を得たという。

ロビンフッドが暗号資産を上場する前に、その情報を使って先回り取引をしていた――。
米検察当局が、同社の元エンジニア2人を起訴した。
米司法省は9月15日、ロビンフッドの元エンジニア、ヘフ・チャイ氏とホワイソン・「ジェリー」・シャン氏を、コモディティー詐欺と通信詐欺の罪で起訴したと発表した。
司法省によると、2人はロビンフッド・クリプトへの上場が予定されていた暗号資産に関連する無期限先物を、上場発表前にハイパーリキッドで取引していたという。
ロビンフッドによる上場発表後に価格が上昇するとポジションを決済し、利益を得ていたと検察側は主張している。
取引は2025年から2026年にかけて行われ、2人はいずれも5万ドル超(約775万円超)の利益を得たという。
非公開のSlackで上場情報を把握か
検察側が問題視しているのは、2人がロビンフッド内部の非公開情報にアクセスできる立場だったことだ。
司法省の訴状によれば、チャイ氏は2021年ごろから2026年5月までロビンフッドに在籍し、新たなデジタル資産の上場を担当するテクニカルリードを務めていた。
シャン氏は2024年ごろから2026年9月までソフトウェアエンジニアとして勤務し、暗号資産の上場業務に関わっていたという。
チャイ氏に関する訴状と、シャン氏に関する訴状によると、2人はいずれも「Coin Aware Individuals」と呼ばれる従業員に指定され、上場予定の暗号資産に関する情報が共有される非公開のSlackチャンネルへのアクセス権を持っていた。
ロビンフッドの社内規定では、このグループに属する社員が、上場または上場廃止の発表前後24時間に、ロビンフッドや他のプラットフォームで対象銘柄を取引することを禁止していた。
ところがチャイ氏は、少なくとも10件の上場発表を前に無期限先物を取引していたとされる。
対象には、キャット・イン・ア・ドッグス・ワールド(MEW)、ムー・デン(MOODENG)、アスター(ASTER)、プラズマ(XPL)、ハイパーリキッド(HYPE)、エテナ(ENA)、エアロドローム・ファイナンス(AERO)などが含まれる。
シャン氏も2025年3月、ポップキャット(POPCAT)の無期限先物を取引。その後、少なくとも10件の上場発表を前に取引していたとされる。
舞台は分散型デリバティブ市場
今回の事件が従来の暗号資産インサイダー取引事件と異なるのは、実際の暗号資産を購入するのではなく、無期限先物を使っていた点だ。
ハイパーリキッドは、暗号資産のデリバティブを扱う分散型取引プラットフォーム。2人はロビンフッドでの上場前にロングポジションを構築し、発表後の値上がりを利用したと検察側はみている。
今回の事件には、2023年に発覚したコインベースのインサイダー取引事件との類似点もある。
当時は、元コインベース社員が新規トークンの上場に関する非公開情報を利用し、上場前に対象の暗号資産を直接購入して利益を得ていた。
今回の事件では、その手口がデリバティブ市場にまで広がった格好だ。
「無期限先物でも法の抜け道にはならない」
米南部ニューヨーク地区のジェイミー・マクドナルド連邦検事は、企業内部の人間が不正に取得した情報を無期限先物やトークン化証券などを通じて利用しても、証券・コモディティー関連法を逃れることはできないとの見解を示した。
今回、チャイ氏とシャン氏には、それぞれコモディティー取引所法違反1件と通信詐欺1件が問われている。
コモディティー取引所法違反の法定刑は最高10年、通信詐欺は最高20年の禁錮刑となっている。
ただし、現時点で明らかになっているのは検察側の主張だ。
司法省も、両被告に対する訴えはあくまで起訴内容であり、有罪が確定するまで無罪と推定されると明記している。
暗号資産の上場情報をめぐるインサイダー取引は、これまで現物市場を中心に問題となってきた。
今回の事件では、それが無期限先物という別の金融商品にも及んだとされる。
ロビンフッド側がどのように上場情報を管理していたのか、そして非公開情報を使った取引がどこまで広がっていたのかが、今後の焦点になりそうだ。

