東南アジアを拠点に、米国人を狙って暗号資産を巻き上げる巨大詐欺ネットワーク。その資金の一部に、ついに網がかかった。
暗号資産取引所大手のコインベースは、東南アジアのサイバー詐欺ネットワークに関連する暗号資産300万ドル超、約4億8000万円を凍結したと明らかにした。
今回の作戦は、米司法省の「スキャム・センター・ストライク・フォース」が主導する「ディスラプション・ウィーク」の一環として行われたものだ。政府機関と民間企業が手を組み、米国人を標的にした暗号資産詐欺の摘発に乗り出した。
コインベースは、こう強調する。
「この作戦は、詐欺師たちを一社、あるいは一機関だけでは止められないことを示している」
同社によれば、今回の摘発では、SNS企業、金融機関、通信事業者、そして法執行機関が足並みをそろえた。オンラインアカウント、資金の流れ、物理的なインフラ――詐欺の連鎖を構成する複数の急所を、同時に叩いた格好だ。
作戦には、メタ、マイクロソフト、スターリンクも参加した。各社は、詐欺ネットワークに関係するサーバーやホスティング基盤の停止に協力。さらに、SNSやメールアカウント140万件超にわたる犯罪活動を妨害した。その結果、タイ王国警察の反サイバー詐欺センターによる複数の逮捕にもつながったという。
なかでも米司法省が警戒を強めているのが、投資詐欺と、いわゆる「ピッグ・ブッチャリング」と呼ばれる手口である。これは、被害者と時間をかけて信頼関係を築き、最終的に投資名目で資金を奪い取る詐欺だ。米司法省は、米国人を狙う詐欺の中でも、急速に拡大し、被害額が極めて大きい類型だと指摘している。
FBIは今月初め、2025年に米国人が暗号資産関連およびAI関連の詐欺で失った金額が110億ドル、約1兆7600億円を超えたと報告した。なかでも最も深刻だったのが投資詐欺だった。

Source: US Attorney DC
一方で、コインベースは暗号資産に向けられる「犯罪に使われやすい」というイメージに反論する。
「暗号資産が違法金融をめぐって不公平な評判を負っていることは承知している。だが現実は逆だ」
同社は、ブロックチェーン技術には、従来の金融システムでは得られにくい特徴があると説明する。すなわち、すべての取引について、透明で、改ざん不能で、永続的な記録が残るという点だ。捜査機関にとっては、資金の流れを追うための強力な手がかりになり得るというわけだ。
今回の連携には、FBI、米シークレットサービスのほか、英国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、タイの法執行機関も加わった。
メタは、参加各機関・企業から共有された「実行可能なインサイト」が、プラットフォームをまたいで散在していた情報を結びつける助けになったと説明した。複数のテック企業による共同作業があったからこそ、詐欺の連鎖のほぼ全段階で犯罪者を狙い撃ちできた、というわけだ。
世界各国の当局は今年、詐欺インフラへの締め付けを一段と強めている。
4月には、米スキャム・センター・ストライク・フォースと法執行パートナーが詐欺拠点を摘発し、投資詐欺に関連する暗号資産7億100万ドル超、約1122億円を凍結した。
また、ドバイ警察が主導した国際的な詐欺組織摘発では、276人が逮捕され、少なくとも9カ所の暗号資産詐欺センターが閉鎖された。
さらに、オーストリアとアルバニアの当局が、ユーロポールとユーロジャストの支援を受けて実施した別の捜査では、アルバニアの首都ティラナにある3カ所の詐欺センターに関連して、10人が逮捕された。
暗号資産は、詐欺師にとっては国境を越えて資金を動かす道具になり得る。だが同時に、ブロックチェーン上に残る足跡は消えない。今回の摘発は、その「逃げ道」と「足跡」のせめぎ合いが、いよいよ本格的な国際戦に入ったことを示している。

