
カルシ、米政治家らを「インサイダー取引」で処分 元議員は永久追放、候補者は3年間取引禁止
予測市場カルシが、自ら結果に影響できるイベントに賭けた政治家2人を処分した。元米下院議員ジョージ・サントス氏には永久取引禁止と約1116万円の制裁金。現職候補ローリー・バックハウト氏にも3年間の取引停止処分が科された。予測市場をめぐっては「賭けの当事者」が結果を動かせる構造への批判が強まっており、規制当局も監視を強めている。

予測市場プラットフォームのカルシが、ついに政治家の「身内賭け」に鉄槌を下した。
同社は、米下院選候補のローリー・バックハウト氏と、議会から追放された共和党のジョージ・サントス元下院議員について、イベント契約の取引に内部情報を利用したとして処分を発表した。
2021年のサービス開始以来、カルシが科した処分の中でも、永久追放を含む異例の厳しい措置となる。
カルシのコンプライアンス部門が金曜日に公表したそれぞれの懲戒処分に関する和解通知によると、サントス氏はカルシでの取引を永久に停止され、7万1356ドル(約1116万円)の制裁金を科された。
一方、バックハウト氏には3年間の取引停止と2590ドル(約40万円)の制裁金が科された。
問題となったのは、2人が「自分自身の行動によって結果を左右できる可能性があるイベント」に賭けていたことだ。
ノースカロライナ州第1選挙区から出馬しているバックハウト氏は、公職への立候補を発表したことで、同州の下院選挙を対象とするイベント契約の選択肢に自らの名前が追加された。
つまり、自分が候補者として戦っている選挙そのものが、カルシの「賭け」の対象になったわけだ。
サントス氏については、2026年2月の一般教書演説への自身の出席に関連する市場で取引していたという。
カルシのルールは明快だ。
「トレーダーが、直接または間接的に意思決定者である場合、あるいは影響の規模や重要性を問わず、契約の対象となる出来事の結果に直接または間接的な影響を及ぼす立場にある場合、そのトレーダーは当該契約市場において、直接・間接を問わず取引を試みることを禁止される」
要するに、「自分で結果を動かせる賭けに、自分で金を張るな」ということである。
今回の処分は、予測市場に対する州・連邦議員の視線が厳しくなるなかで打ち出された。
イベント契約の中には、参加者自身の行動によって結果を操作できるものが少なくないとの批判が高まっているためだ。
実際、ドナルド・トランプ大統領のテレプロンプター担当者であるガブリエル・ペレス氏は、トランプ氏の演説内容に関連するカルシのイベント契約を取引したとして、米連邦規制当局から17万2000ドル(約2690万円)の制裁金を科されている。
カルシのコンプライアンス部門によると、バックハウト氏は「調査に協力」し、3年間の取引禁止と制裁金を受け入れた。
一方、サントス氏については、調査に協力したことを示す記述はない。
ボストンのニューイングランド・ローで客員実務教授を務めるメリンダ・ロス氏は、コインテレグラフにこう語った。
「ジョージ・サントス氏が当局による『インサイダー取引』調査に協力しなかったことを考えれば、カルシでの永久取引禁止は妥当だ」
さらにロス氏は、今回のケースについて「私や同僚が『ステータス・ベースド・トレーダー』と呼んでいるものの典型例だ」と指摘する。
これは、イベント契約の結果そのものを自ら決定、あるいは左右できる立場にあるトレーダーを指す。
関連記事:トランプ氏のテレプロンプター担当者、演説に賭けて10万ドル稼いだか=ABC報道
バックハウト氏は現在も、2026年中間選挙でノースカロライナ州第1選挙区の共和党候補となっている。
一方のサントス氏は、かつてニューヨーク州第3選挙区選出の下院議員だったが、詐欺疑惑が相次ぐ中、2023年12月に議会から追放された。
今回の和解を受け、サントス氏は日曜日にXへの投稿で、カルシを「まともな会社ではない」と批判した。
バックハウト氏は、自分自身が出馬する議会選挙に賭けたことについて、「愚かな間違いだった」と語ったと報じられている。
ただ、皮肉なことに、カルシでは火曜日時点でもバックハウト氏が出馬するノースカロライナ州第1選挙区の勝敗を予測するイベント契約が取引されていた。
市場では、民主党現職のドン・デービス氏の勝利確率が63%、共和党のバックハウト氏が41%となっている。

Event contract for Laurie Buckhout in North Carolina House race. Source: Kalshi
CFTC、州との「予測市場戦争」で緊急権限
カルシやポリマーケットなどの予測市場プラットフォームをめぐっては、米国の各州のゲーミング当局との法廷闘争も続いている。
州当局側は、両社がスポーツイベントを対象とする違法な賭博を事実上提供していると主張し、複数の訴訟を起こしている。
これに対し、米商品先物取引委員会(CFTC)の唯一の委員で委員長も務めるマイケル・セリグ氏は、予測市場についてCFTCが「排他的な管轄権」を持つと主張。
この立場に異議を唱える州当局に対しては、法的措置も辞さない姿勢を示している。
さらに先月、CFTCは異例の措置に踏み切った。
ニューヨーク州がカルシによるスポーツ、選挙、その他のイベントに連動する契約の提供を禁止しようとしたことに対し、CFTCは緊急権限を発動して反対した。
予測市場が「金融商品」なのか、それとも「賭博」なのか。
その境界線をめぐる争いは、政治家自身による“身内賭け”という新たな火種まで抱え込み、さらに激しさを増している。

