
テザー、金裏付け型ステーブルコイン「aUSDT」終了へ 需要低迷で主力商品に集中
テザーは、主力プロダクトについて、より強いユーザー需要、厚みのある流動性、そして長期的に大きな市場機会が見込める領域へと軸足を移す。

ステーブルコイン発行大手のテザーが、金に裏付けられた過剰担保型ステーブルコイン「aUSDT」と、その基盤サービス「アロイ・バイ・テザー」を段階的に終了する。開始からわずか2年。理由は明快だ。より需要の強い商品と領域に経営資源を集中させるためである。
テザーは水曜日、「戦略的変更」を発表した。ユーザーの利用状況、市場需要、そして同社全体の優先事項を見直した結果だという。
同社は今後、「より強いユーザー需要、深い流動性、そして長期的に大きな市場機会」が見込める分野にリソースを振り向けると説明している。具体的には、金裏付け型デジタル資産「XAUT」や、テザーのエコシステム内にある中核プロダクトがその対象となる。
テザーにとって、ステーブルコインが本業であることに変わりはない。しかし近年の同社は、ステーブルコインの枠を超えたテクノロジー分野にも強い関心を示している。投資先は、ビットコインのマイニングインフラ、人工知能、クラウドコンピューティング、ロボティクスなど多岐にわたる。直近では6月11日、ドイツのテック企業ニューラによる10億ドル、約1,608億円規模の資金調達ラウンドを主導した。
aUSDTは、XAUTを土台にした過剰担保型のデリバティブ商品で、イーサリアムのスマートコントラクト上に構築されている。金裏付け資産や、トークン化された現実資産、いわゆるRWAへの需要を映す商品でもあった。
アロイ・バイ・テザーでは、ユーザーがXAUTを担保として預け入れ、aUSDTを発行できた。ロックされたXAUTの価値は、発行されたaUSDTの価値を上回る仕組みである。これは、DeFiで暗号資産を担保にステーブルコインや合成ドルを作る構造に近い。
つまりユーザーは、保有するXAUTを売却せずに、ドルに似た流動性へアクセスできた。金価格へのエクスポージャーを維持したまま、借り入れや発行ができるというわけだ。
アロイ・バイ・テザーは2024年6月に発表された。現在の時価総額は120万ドル、約1億9,300万円。テザーによれば、14.73キログラムの金、約220万ドル、約3億5,400万円相当によって裏付けられている。
テザー・ゴールドはなお人気
終了は段階的に進められる。第1段階は即時開始され、新規ポジションの開設や新たなaUSDTの発行が停止される。
ユーザーには3カ月の猶予が与えられる。9月17日の締め切りまでにaUSDTを返却し、担保として預けていたXAUTを取り戻す必要がある。
関連記事: テザーがロボットに“財布”を持たせる 独ニューラへ最大2240億円投資
一方で、XAUTそのものの人気は健在だ。テザーによれば、XAUTの時価総額は30億ドル、約4,824億円に達し、2万2,169キログラムの現物金に裏付けられている。
XAUTの時価総額は今年初め、金価格が1オンスあたり5,300ドル超、約85万2,000円という過去最高値をつけた際に急拡大した。ただし、その後は19%下落している。
テザーは2月、貴金属プラットフォームゴールド・ドットコムの株式12%を1億5,000万ドル、約241億円で取得した。今後は同プラットフォームにXAUTを統合する計画もある。
人民元、ユーロ建てステーブルコインも整理
アロイ・バイ・テザーだけが、今年棚上げされたプロダクトというわけではない。
2月、テザーは中国人民元建てステーブルコイン「CNHT」の終了を発表した。その理由として同社は、「市場環境の変化」「プロダクトへの関心の低さ」「継続的なコミュニティ需要の限定性」を挙げている。他の対応資産と比べ、需要が伸びなかったという判断だ。
さらに昨年11月には、ユーロ建てステーブルコイン「EURT」も終了させた。背景にあったのは欧州の規制問題であり、同時に2024年に立ち上げた資産トークン化プラットフォーム「ハドロン」など、別の取り組みに注力する方針だった。
もっとも、テザーは法定通貨建てステーブルコインから完全に手を引くわけではない。5月には、ジョージア政府との協力により、ジョージア・ラリ建てステーブルコイン「GELT」を立ち上げる計画を明らかにしている。

