
ストラテジーはビットコインを売ったのに「売ってない」判定 ポリマーケットで128億円賭け市場が炎上
争点となったのは、マイケル・セイラー氏率いるストラテジーが「5月31日までにビットコインを売却したか」を問うイベント契約である。市場は2度にわたる異議申し立てを経た末、最終的に「ノー」と判定された。

予測市場ポリマーケットで、またしても“判定”をめぐる火種が噴き上がった。
争点となったのは、マイケル・セイラー氏率いるストラテジーが「5月31日までにビットコインを売却したか」を問うイベント契約である。市場は2度にわたる異議申し立てを経た末、最終的に「ノー」と判定された。
ところが、である。
その後、ストラテジーは米当局への提出書類で、対象期間中に32BTCを売却していたことを明らかにした。売却は5月26日から31日の間に行われていた。まさに市場が問うていた期間内だった。
にもかかわらず、判定は「売っていない」。
この“ねじれ”に、利用者たちは色めき立っている。
UMA保有者の98.6%が「ノー」に投票
ブロックチェーンデータによれば、ポリマーケットの判定に使われるUMAオプティミスティック・オラクルのトークン保有者は、2回目の解決サイクルで「ノー」決着を支持した。投票は木曜日午前0時34分(UTC)に締め切られた。
ベットモアのデータでは、607人の参加者のうち実に98.6%が「ノー」に投票。「イエス」はわずか1.4%にとどまった。
ポリマーケット側の理屈はこうだ。
対象期間中にストラテジーが売却したことを示す情報、オンチェーンデータ、信頼できる報道は確認できなかった。したがって、期限後に得られた確認情報は、判定材料として認められない――。
ストラテジーは5月26日から31日にかけて32BTCを売却していたが、その事実を公表したのは月曜日の提出書類だった。つまり、市場の締め切り後である。
この32BTCの売却額は250万ドル、約4億円。平均売却価格は1BTCあたり7万7135ドル、約1234万円だった。
「起きたこと」ではなく「確認された時点」で決まるのか
今回の判定は、ポリマーケットのトークン加重型の紛争解決システムに対する不信感を一段と強めることになった。
この仕組みでは、UMAトークンを多く保有するウォレットほど大きな投票力を持つ。つまり、判定の重みは「1人1票」ではない。
利用者からは「売却がいつ確認されたかではなく、実際にいつ起きたかで判定すべきだ」とする批判が相次いだ。ある不運なトレーダーは、このイベント契約で50万ドル、約8000万円の損失を出したと訴えている。
この市場には、ストラテジーが5月31日までにビットコインを売却するかどうかをめぐり、8000万ドル超、約128億円が賭けられていた。

Polymarket dispute on Strategy selling Bitcoin by May 31. Source: Betmoar
ギャラクシー・リサーチは水曜日、Xへの投稿でこう指摘した。
「予測市場が価格に織り込むべきなのは、実際に何が起きたかであって、オラクルが後からルールをどう解釈し直すかではない」
同社は、判定の信頼性は個別の結果よりも重要だとし、上場時点で判定基準を固定すること、検証可能なイベントには機械的な解決方法を導入すること、米商品先物取引委員会(CFTC)の規制を見据えた構造改革を進めることなどを提案した。
なお、ギャラクシーはこの市場に金銭的利害を持っていたことも明らかにしている。同社は予測市場のポジションを日常的にヘッジする戦略の一環として、「イエス」株を購入していたという。
ポリマーケットは、今回の契約結果や追加調査の可能性についてコメントを控えた。
巨額UMA保有者が判定を左右
今回の紛争で最大の票を投じたのは、「borntoolate.eth」というブロックチェーンウォレットだった。このウォレットは311万UMAトークンを保有していた。
次いで大きかったのは、「0xd2a」というウォレットを使うケビン・チャン氏で、153万UMAトークンを保有していた。
紛争解決への参加は、大口トークン保有者にとって利益にもなり得る。borntoolate.ethはイベント契約の紛争投票で29万9000ドル超、約4780万円を得た。ケビン・チャン氏とされるウォレットも37万ドル超、約5920万円を稼いだ。
「判定に参加する者が、判定によって利益を得る」
この構図が、ポリマーケットの信頼性に影を落としている。

UMA token holders who voted on the disputed Strategy market. Source: Betmoar
過去にもあった“判定疑惑”
批判者たちは、今回の件だけが例外ではないとみている。
たとえば、ウクライナが2025年4月までにトランプ米大統領の鉱物資源取引に合意するかを問うイベント契約では、2度の異議申し立てを経て3月に「イエス」と判定された。
しかし、実際に合意文書が署名されたのは4月30日だった。
ポリマーケットのトレーダー、fr1ko.ethは火曜日、Xでこの件について「ガバナンス攻撃であり、クジラによる操作だった。それでもポリマーケットは何もしなかった」と批判した。
規制当局の視線も強まる
今回の騒動は、米議会でも予測市場への視線が厳しくなる中で起きた。
米下院の民主党議員9人は前日、連邦取引委員会(FTC)に対し、予測市場が顧客にどのように広告を出し、規制当局に対してどのように自らを説明しているのか調査するよう求めた。
ポリマーケットは「未来を賭ける市場」として急成長してきた。だが今回の一件は、その看板の裏側にある弱点をあぶり出した。
問われているのは、ストラテジーが32BTCを売ったかどうかだけではない。
予測市場は「現実」を判定するのか。
それとも、「期限内に確認された現実」だけを判定するのか。
そのわずかな違いに、128億円規模の資金が振り回されたのである。

