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Turner WrightライターRobert Lakin監修編集者

米兵、"マドゥロ排除作戦"の機密情報で6300万円の賭け——暗号資産をめぐる米法廷の3事件

最新ニュース公開日2026年8月3日

落選候補の妻は"夫の有罪答弁"を法廷から締め出そうと画策し、元下院議員は自身の演説出席をネタに賭けで一儲け。極めつけは軍事機密を握った現役米兵の6300万円大博打——。暗号資産と予測市場をめぐって米法廷でいま何が起きているのか、話題の3件を一挙まとめてお届けする。

元FTX幹部の妻、"夫の有罪答弁"を法廷から締め出そうと画策

「夫の罪を、私の裁判に持ち込まないでほしい」——。そんな虫のいい主張が飛び出した。

8月1日(金)、選挙資金規正法違反に問われているミシェル・ボンド被告の弁護団は、ニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に一通の書面を提出した。狙いは、ある"証拠"を法廷から排除させること。その証拠とは、他ならぬ彼女の夫に関するものだった。

夫の名は、ライアン・サラメ。経営破綻した暗号資産取引所FTXの子会社「FTXデジタルマーケッツ」の元共同CEOである。サラメは2023年に有罪を認め、現在は90カ月(7年6カ月)の実刑に服している身だ。

ボンド被告にかけられた疑惑はこうだ。2022年、彼女はニューヨークで連邦議会議員選挙に出馬するも落選。その選挙資金の一部が、サラメを通じてFTXから流れ込んでいた——というのである。サラメ自身、「自分名義で行った政治献金は、FTX関連企業の銀行口座からの送金で賄われていた」と法廷で認めている。

弁護団の言い分はこうだ。

「検察はサラメ氏の有罪答弁やそれに関連する資料を持ち出すべきではない。証拠としての価値はごくわずかであり、それによってボンド被告が不当に不利になる危険のほうがはるかに大きい」

さらに、「サラメ氏の答弁は"彼自身の罪"の告白にすぎず、ボンド被告の意図や関与を示す証拠には一切なり得ない」とも主張。加えて弁護団は、犯行とされる時期に二人がまだ結婚しておらず、現在は"離婚および親権をめぐる係争中"であることまで書面に盛り込むよう求めた。要するに「夫は普通の"個人献金者"ではなかった」という理屈である。

このボンド被告の一件は、2022年に崩壊したFTX関係者をめぐる、数少ない"最後の刑事事件"の一つだ。サラメ、元CEOのサム・バンクマン=フリード(通称SBF)、そして関連ファンド「アラメダ・リサーチ」の元CEOキャロライン・エリソン——顧客資金の不正流用などで、いずれも実刑判決を受けている。

元下院議員、"自分の演説出席"を賭けにして約550万円の支払い命令

次なる主役は、お騒がせ男ジョージ・サントスだ。

2023年に下院を追放された元ニューヨーク州選出議員のサントスが、なんと合計3万5000ドル(約550万円)の支払いを命じられた。内訳は、民事制裁金1万7500ドル(約276万円)と、不正利益の吐き出し1万7570ドル(約277万円)。米商品先物取引委員会(CFTC)が下した処分である

問題は、予測市場プラットフォーム「カルシー(Kalshi)」での賭けだ。サントスは、自らが2026年の一般教書演説(ワシントンDC)に出席するかどうかを賭ける"イベント契約"で取引を行っていた。

CFTCによれば、手口はこうだ。

「サントスは、この市場でポジションを売買しながら、演説に出席するかどうかについてSNSに投稿していた。その投稿には、出席するか否かをめぐる重大な虚偽表示や情報の隠蔽が含まれていた。投稿の後、契約価格はサントスのポジションに有利な方向に動き、彼は1万7500ドル(約276万円)超の利益を得た」

February X post about his State of the Union attendance. Source: George Santos

つまり、自分でSNSを操って値段を動かし、自分の賭けで儲けた——というわけだ。この処分によりサントスは今後3年間、予測市場での取引を禁止された。

なお、この男の"前科"も凄まじい。2025年に電信詐欺と加重身分詐称で87カ月(7年3カ月)の実刑判決を受けたものの、実際に服役したのはわずか3カ月。ドナルド・トランプ大統領によって刑を減免され、シャバに舞い戻っていたのである。

現役米兵、"マドゥロ排除作戦"の機密握り6300万円の大博打

そして本命——最も"文春砲"の匂いがするのがこの一件だ。

ガノン・ケン・ヴァン・ダイク。現役の米兵である彼は、予測市場「ポリマーケット」のイベント契約で40万ドル(約6,300万円)超を稼いだ疑いで訴追されている。使ったのは、公になっていない機密情報。しかもその情報とは、1月に実行されたベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の"排除作戦"に関するものだった。

米司法省によれば、ヴァン・ダイクはこのマドゥロ排除作戦そのものに関与していた人物。そのインサイダー情報を使い、「マドゥロが失脚するかどうか」に賭けた——として、4月に刑事訴追された。

これに対し8月1日(金)、ヴァン・ダイクの弁護団はニューヨーク州南部地区連邦地方裁判所に51ページに及ぶメモを提出。起訴の棄却を求めて反撃に打って出た。その論拠の一つが、3つの訴因の核心にある「商品取引所法(CEA)」の曖昧さだ。イベント契約を"スワップ"として扱う点が不明確だ、というのである。

CFTCはマイケル・セリグ委員長のもと、「イベント契約はスワップにあたる」として予測市場に対する"排他的管轄権"を主張してきた。だが弁護団はこう斬り込む。

「連邦議会も、行政機関も、裁判所までもが"スワップ"の定義を曖昧だと認めているのなら、一般市民はどうやって予測市場の賭けがCEAの対象だと知り得るというのか。知り得るはずがない」

この裁判、行方次第では波紋は大きい。予測市場を利用する議員や政府関係者に飛び火する可能性があるからだ。実際、トランプ大統領のテレプロンプター操作担当者が、大統領の演説に絡むカルシーのイベント契約で10万ドル(約1,570万円)超を稼いだとも報じられている。

6月に提出された日程によれば、ヴァン・ダイクの公判は2026年後半から2027年初頭に始まる見通し。本人は全ての訴因について無罪を主張している。

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