
クラーケンを追い詰めた“監査撤退”の代償 元監査法人マザーズに2200万ドル支払い命令
クラーケン親会社、マザーズの監査撤退で数百万ドル規模の損害と主張 「オペレーション・チョークポイント2.0」との関連も指摘

暗号資産取引所クラーケンの親会社ペイワードが、かつての監査法人マザーズUSAを相手取った仲裁で、2200万ドル、日本円にして約35億8000万円の賠償を勝ち取った。
同社はこの仲裁判断について、デラウェア州衡平法裁判所に正式な判決として認めるよう申し立てた。クラーケン共同CEOのアージュン・セティ氏が火曜日に公開した書簡で明らかにした。
ペイワードによれば、マザーズは2022年の監査がほぼ完了していたにもかかわらず、突然手を引いたという。しかも同社は、不正を見つけたわけでもなく、経営陣の誠実性に疑義を呈したわけでもなく、会社側との意見対立を報告したわけでもなかった。
「監査は好意ではない。酸素なのだ」
セティ氏はそう書きつけた。銀行サービスを受けるにも、ライセンスを取得するにも、事業上の関係を築くにも、独立監査は欠かせない。つまり監査法人の撤退は、暗号資産企業にとって“息の根”にかかわる問題だったというわけだ。
セティ氏は、マザーズの辞任は「オペレーション・チョークポイント2.0」の一環だったと主張している。これは、銀行、監査法人、その他の金融機関に圧力をかけ、合法的に運営されている暗号資産企業との関係を断たせようとした、より広範なキャンペーンだったという見立てだ。
同氏の書簡では、その根拠として2023年以降の一連の規制動向が挙げられている。米銀行規制当局による共同ガイダンス、米証券取引委員会(SEC)がのちに撤回したスタッフ会計公報第121号(SAB121)、そして暗号資産業界向けの銀行ネットワークであるシルバーゲートのSENと、シグネチャー銀行のシグネットの崩壊である。
セティ氏はさらに、米議会に対してCLARITY法案の可決を求めた。包括的な市場構造の枠組みが整えば、デジタル資産企業にとってルールがより明確になり、規制当局による“取り締まり頼み”の状況を減らせると訴えている。
クラーケン幹部が語る「監査法人との泥沼」
クラーケン共同CEOのデイブ・リプリー氏も火曜日、Xでこの問題に言及した。
同氏は、この一件について「心的外傷を呼び起こすような話ではあるが、表に出す価値がある」と述べたうえで、「あの時代に起きたことのうち、語られてきたのはほんの一部にすぎない」と投稿した。
リプリー氏は、今回の2200万ドル、日本円で約35億8000万円の仲裁判断について、暗号資産業界に対して行われた「組織的キャンペーン」によって生じた金銭的損害への補償だと位置づけた。
一方、米規制当局も暗号資産関連企業の「デバンキング」、つまり銀行サービスからの排除をめぐる懸念への対応を続けている。
米連邦準備制度理事会(FRB)は2月、銀行監督から「レピュテーションリスク」を正式に外す提案について、パブリックコメントを求めた。これは、2025年にFRBが銀行に対して、評判上の懸念を理由に顧客口座を閉鎖するよう圧力をかけることをやめるよう指示した流れに続くものだ。
批判派からは、この動きが「オペレーション・チョークポイント2.0」を終わらせる一助になる可能性があるとの声も出ている。

Source: Dave Ripley
クラーケンは2011年に設立され、以前から新規株式公開(IPO)を目指す可能性が広く取り沙汰されてきた。2025年11月には、同社が米証券取引委員会に対してフォームS-1登録届出書のドラフトを非公開で提出したと発表している。
ただし、5月の報道では、暗号資産市場の地合い悪化や、同取引所が進めるコスト削減の影響により、上場は2027年までずれ込む可能性があるとも伝えられている。

