
ビットコイン16億円が“トランプ陣営”へ――暗号資産取引所ジェミニ、制裁金8億円「チャラ」審理の直前に巨額寄付という露骨さ
米商品先物取引委員会(CFTC)との500万ドル(約8億2000万円)の和解を“なかったこと”にできるか――その判断を裁判所が下そうかという矢先、暗号資産取引所ジェミニはトランプ大統領を支援するスーパーPACに1000万ドル(約16億4000万円)相当のビットコインを送っていた。偶然の一致、で片付く話だろうか。

なんとも生々しい話である。
米商品先物取引委員会(CFTC)が暗号資産取引所ジェミニを相手取った案件で決着した500万ドル(約8億2000万円)の和解――その「取り消し」を裁判所が審理しようという局面で、当のジェミニがドナルド・トランプ大統領を支援するスーパーPAC(特別政治活動委員会)に、1000万ドル(約16億4000万円)相当のビットコイン(BTC)を送金していたことが明らかになった。
月曜日に連邦選挙委員会(FEC)へ提出されたスーパーPAC「マガ・インク」の7月分報告書によれば、キャメロン・ウィンクルボス、タイラー・ウィンクルボス兄弟が率いるジェミニ・トラスト・カンパニーは、6月19日に500万ドル超のビットコインを2回に分けて拠出している。合計で、1000万ドル。
この資金は、トランプ氏を支援する「独立支出」に充てられる可能性がある。
そして問題は、そのタイミングだ。
送金の約3週間前、CFTCはジェミニと共同で、連邦裁判所にある申し立てを行っていた。2025年1月に成立した和解――同社が虚偽ないし誤解を招く説明を行ったとされる件での和解――を、覆すための申し立てである。
CFTCのマイケル・セリグ委員長は当時、ジョー・バイデン前大統領のもとでの同委員会が、法執行を通じてウィンクルボス兄弟を「政治的に標的にした」と主張していた。
兄弟が“貢いで”きたもの
ウィンクルボス兄弟とトランプ氏の距離の近さは、今に始まった話ではない。
兄弟はそれぞれ、2024年の大統領選でトランプ陣営に100万ドル(約1億6400万円)ずつを寄付。SNSでも当時候補だったトランプ氏を後押しした。
2025年1月にトランプ政権が発足すると、双子はステーブルコイン決済法「ジーニアス法」の署名式に出席。トランプ氏の息子たちが手がける暗号資産マイニング事業「アメリカン・ビットコイン」を支援し、さらに暗号資産政策をめぐって「トランプ大統領と政権の取り組みを支援する」ためとして、PAC「デジタル・フリーダム・ファンド」に2100万ドル(約34億4000万円)相当のビットコインを拠出している。
積み上げれば、ゆうに数十億円規模。関係は、もはや“支持者”という言葉では足りない。
「投資家を守れていない」ウォーレン議員の怒り
5月にニューヨーク南部地区連邦地方裁判所へCFTCとジェミニの共同申し立てが提出されて以降、公開されている訴訟記録に判断は示されていない。
コインテレグラフはCFTCと、ジェミニの代理人であるアビ・ペリー弁護士に1000万ドルの寄付について問い合わせたが、即座の回答は得られなかった。CFTCの広報担当者は6月、裁判所が申し立てを認めた場合でも、双方は「500万ドルの制裁金はジェミニに返還されないことで合意している」とコインテレグラフに説明している。
もっとも、この構図に納得しない人物もいる。エリザベス・ウォーレン上院議員だ。
同議員は6月にセリグ委員長へ送った書簡で、和解取り消しを求める共同申し立てなどを挙げ、「政治的圧力と富裕層インサイダーの利益に従属し、法の支配に縛られず、投資家保護と市場の健全性の確保に失敗しているCFTCの、憂慮すべき兆候」だと痛烈に批判した。
なお、マガ・インクの受領額は6月30日時点で3億9700万ドル(約651億円)超に達している。
委員はセリグ氏ただ1人――指名の動きなし
不気味なのは、このCFTCという組織の“いま”である。
2025年12月に上院で承認された共和党のセリグ委員長は、通常5人の委員が超党派で構成するはずの同委員会において、現在ただ1人の委員なのだ。
議会では暗号資産の包括的な市場構造法案「デジタル資産市場明確化法(クラリティ法)」の審議が進む。同法案はCFTCにデジタル資産の規制・監督で大きな権限を与えるとみられており、多くの議員がトランプ氏に対し、追加の委員指名を早く発表するよう迫ってきた。
だが木曜日時点で、ホワイトハウスはCFTC委員の指名を一切発表していない。
つまり、暗号資産業界の運命を左右しかねない規制当局の議題を、事実上たった1人の男が握り続けているということになる。
その当局と和解“取り消し”を共に申し立てた企業が、大統領支援団体に16億円分のビットコインを送っていた――。
偶然、と言い切れる者がいるだろうか。

