
EU暗号資産市場で大移動 MiCA未認可のバイナンス・バイビットから認可済み取引所へ
EU規制当局からすでに認可を受けた複数の暗号資産取引所が、MiCA(暗号資産市場規制)の下でライセンスを取得できていない企業のユーザーを取り込もうとしている。移管ボーナスや賞金キャンペーンを掲げ、規制の網から外れたライバル企業の顧客に秋波を送っている格好だ。

欧州連合(EU)でまもなく本格施行される暗号資産規制「MiCA(暗号資産市場規制)」をめぐり、すでにEU加盟国で営業認可を得た暗号資産取引所が、認可取得に失敗した企業のユーザーを取り込もうと動き出している。
MiCAに基づく規制は7月1日から適用される予定だ。これを前に、コインベースやOKXなどの暗号資産取引所幹部は、SNS上でユーザー獲得に向けた発信を強めている。狙いは、バイナンスやバイビット・グローバルといった、まもなくEU域内で未認可となる企業の利用者だ。
世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスは先週、MiCA申請を取り下げたことを受け、EU在住ユーザー向けサービスを制限すると明らかにした。バイビット・グローバルも月曜日、欧州経済領域(EEA)のユーザーに対するサービスへのアクセスを、7月1日から「段階的に制限する」と発表した。ただし、同社のバイビットEU部門は、オーストリアのライセンス保有法人を通じてMiCA下での営業認可を得ている。
月曜日時点で、EU加盟国の規制当局はMiCAに基づき、暗号資産企業に対して合計244件のライセンスを承認している。そのうち約4分の1にあたる57件は、ドイツの連邦金融監督庁、いわゆるBaFinによるものだ。一方で、ギリシャ、ハンガリー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニアの当局は、金曜日時点でまだ1件もライセンスを発行していなかった。
OKXヨーロッパのエラルド・グースCEOは月曜日、バイナンスやバイビットのユーザーに対し、資金移動を促す形で、新規入金に8%の特典を提供すると述べた。コインベースのブライアン・アームストロングCEOも金曜日、MiCA施行から約2週間後となる7月13日までに移管したユーザーに対し、5%の移管ボーナスを提供すると発表した。MiCA下で認可を受けているクラーケンも、ユーロ入金者を対象に110万ドル、約1億7850万円相当の賞金抽選を打ち出している。

Source: OKX CEO Mingxing “Star” Xu
MiCAの下では、EU27カ国のユーザーにサービスを提供する暗号資産企業は、いずれかの加盟国の規制当局から「暗号資産サービスプロバイダー(CASP)」としての認可を受ける必要がある。コインベース、ファルコンX、クラーケン、OKXなど多くの取引所は、6月30日の期限後も営業を継続できるライセンスを取得した。一方で、主要プレイヤーの一部が市場から後退することになれば、欧州の暗号資産市場に大きな影響を及ぼす可能性がある。
バイビット、EEAでは後退 一方で中東・北アフリカ事業を拡大
バイビットはEEAでサービス制限に動く一方、中東では事業拡大を加速させている。
バイビットの中東・北アフリカ地域責任者であるデレク・ダイ氏は日曜日、テルアビブで開かれたイベントで、EUユーザー向けの一部サービスを制限する一方、同地域での事業構築を強化していると語った。
「MENA地域における当社の事業戦略は、マーケティングと事業計画を差別化し、それぞれの顧客層に適切なサービスを提供することにある」とダイ氏は述べた。

Bybit MENA head Derek Dai (left) and Collider partner Eylon Aviv (right) at Sunday's event in Tel Aviv. Source: Cointelegraph
さらに同氏はこう続けた。
「アラブ諸国の中でも、より保守的な顧客のニーズに応えるハラル商品を開発している。一方で、モロッコでは、取引スキルや関心を高めつつある若年投資家向けに、デリバティブ商品に注力している」
MiCA施行を目前に、欧州では“認可組”と“退場組”の明暗がくっきり分かれつつある。規制対応を済ませた取引所にとっては、これは単なるコンプライアンス対応ではない。競合の空白を突く、またとない顧客獲得の好機なのである。

