
CFTC、暗号資産規制を独自に進める方針 CLARITY法案が通らなくても「議会を待たない」
米議会で暗号資産市場構造法案の審議が止まるなか、CFTCのマイケル・セリグ委員長が独自規制に踏み切る構えを示した。レバレッジ取引や開発者保護のルール策定を視野に入れる一方、トランプ一族の暗号資産事業をめぐる倫理問題が法案成立の壁となっている。

米議会が動かないなら、規制当局が先に動く――。
米商品先物取引委員会(CFTC)のマイケル・セリグ委員長は、議会で暗号資産市場構造法案をめぐる議論が続くなか、CFTCとして手をこまねいて待つつもりはないとの姿勢を鮮明にした。
セリグ氏は20日、CFTCのイノベーション諮問委員会の初会合に向けて用意した講演原稿で、デジタル資産市場明確化法案(CLARITY法案)が議会を通過しなくても、CFTCは暗号資産規制を前に進めると表明した。
「議会が実現しないのであれば、われわれがトランプ大統領の公約実現を後押しする」
強気な言葉である。
セリグ氏によると、すでにCFTC職員に対し、登録業者だけでなく未登録の事業者についても、一定の規制監督下で暗号資産のレバレッジ取引や証拠金取引を提供できる仕組みを検討するよう指示した。オンチェーン金融プロトコルの開発者を保護する制度も探るという。
ただし、議会に最後の猶予は与える。
「CLARITY法案には採決までの時間を与える。しかし、民主党が両党の妥協を反映した成果を支持できず、公平な法案を大統領の机まで届けられないのであれば、そのときはCFTC職員に対し、業界向けの新ルールを速やかに提案するよう指示する」
セリグ氏はそう言い切った。
CLARITY法案、勝負は9月
暗号資産市場の規制権限やルールを整理するCLARITY法案は、米上院が9月に再開するまで、事実上の店ざらし状態にある。
上院再開後には、共和党トップのジョン・スーン院内総務が討論終結採決を実施するとみられる。
法案を上院で通過させるには60票が必要だ。可決されれば下院に差し戻され、その後、トランプ大統領が署名するか、拒否権を発動することになる。
セリグ氏の発言前日には、ホワイトハウスでトランプ氏と暗号資産業界の幹部らによる会合が開かれ、セリグ氏も同席していた。
トランプ氏は、中国に先を越されないためにも「公平な形」のCLARITY法案を成立させるよう議会に要求した。
しかし、問題は票数だ。
議会民主党の多くは、トランプ一族による暗号資産投資や事業を念頭に、法案へ厳しい倫理規定を盛り込むよう求めている。記事によると、こうした暗号資産関連の投資によって、トランプ氏は2025年に14億ドルを得たという。
記事掲載日の日本銀行の17時時点レート、1ドル=約158.45円で換算すると、約2220億円にのぼる。日本銀行の2026年8月20日外国為替市況
トランプ氏は「多くの民主党議員もCLARITY法案に賛成している」と主張したが、上院通過に必要な60票を確保できるかは、なお見通せない。
SECも暗号資産ルール案を公表
セリグ氏が掲げた方針は、米証券取引委員会(SEC)の動きとも重なる。
SECは18日、デジタル資産規制に関する規則案を公表した。一定の条件を満たす暗号資産企業について、トークンが「投資契約」として扱われることを避けられるセーフハーバー制度や、発行企業に対する一部免除措置などが盛り込まれる可能性がある。
つまり、議会の法案成立を待たず、CFTCとSECがそれぞれの権限で暗号資産規制の地ならしを始めた格好だ。
CFTCは事実上「委員長1人」
もっとも、CFTC自身も正常な陣容とは言い難い。
セリグ氏は20日の会合で、イノベーション諮問委員会のウォルト・ラッケン委員長、連邦指定担当官のマイケル・パッサラクア氏とともに登壇した。
本来、CFTCの委員は共和、民主両党からなる5人体制が想定されている。ところが現在、上院の承認を受けた委員はセリグ氏ただ1人だ。
昨年12月以降、事実上、セリグ氏が単独でCFTCの政策課題を取り仕切っている。
同日の会合では、人工知能(AI)や予測市場についても議論された。
セリグ氏率いるCFTCは、予測市場で扱われるイベント契約は「スワップ」に当たるとして、同市場を監督する「排他的な管轄権」がCFTCにあると主張している。
さらにセリグ氏は、カルシやポリマーケットなどをめぐる案件で、この立場に異議を唱える州当局を相手取り、訴訟を起こすようCFTCに指示している。
議会が決めるのを待つのか。それとも、規制当局が先にルールを作るのか。
暗号資産規制をめぐるワシントンの主導権争いは、9月の上院採決を前に、いよいよ正念場を迎える。

