OpenAIのサム・アルトマン氏が共同創業したIDネットワーク「ワールド」は、AIエージェントがウェブサイトやオンラインサービスとやり取りする際に、検証済みの固有の人間と紐付いていることを証明できる開発者向けツールキット「AgentKit」を公開した。
このシステムは、ワールドIDによる本人確認技術と、コインベースおよびクラウドフレアが開始したx402マイクロペイメントプロトコルを統合したものとなっている。これにより、AIエージェントはオンラインリソースへのアクセスに対して支払いを行いながら、検証済みの本人確認情報に紐付いていることを暗号的に証明できる。
x402プロトコルは、エージェントがウェブサイトやAPIなどのサービスにアクセスする際、小額の手数料を支払うことを可能にする。発表によると、このエコシステムは2025年の開始以降、アプリケーションやAPI、AIエージェントを通じて1億件以上の決済を処理している。
このツールキットを通じて、ワールドIDで認証されたユーザーは、自身のID資格情報をAIエージェントに委任することができる。これにより、個人情報を開示することなく、特定の個人に紐付いていることを証明できるようになる。プラットフォーム側は、エージェントがサービスへアクセスする際に、少額決済や本人確認情報、あるいはその両方を要求できる。
ワールドはもともとワールドコインという名称でスタートし、生体認証を用いて「人間であることの証明」となるワールドIDを生成する。この手法は仮想通貨業界やプライバシー擁護者の間で議論を呼んでおり、虹彩スキャンや専用ハードウェア、中央集権的な展開に依存する仕組みはプライバシー上の懸念を引き起こし、分散性を重視する仮想通貨の理念と衝突する可能性があると指摘されている。
仮想通貨企業、AIエージェント基盤の開発を加速
AIエージェントは、ユーザーに代わってタスクを実行し、オンラインサービスと連携する自動化ソフトウェアとして、仮想通貨業界だけでなく、小売や旅行計画などのBtoC分野でも存在感を高めている。
ここ数カ月で、複数の仮想通貨企業がエージェントの機能拡張を目的としたツールを投入している。2025年10月にはコインベースが、自律型エージェントによるオンチェーン取引(支出、収益獲得、取引)を可能にするウォレットインフラを公開した。
2026年2月には、ブロックチェーンインフラ企業アルケミーが、Base上でUSDCを用いてAIエージェントがデータサービスにアクセスできるシステムを発表した。同月にはパンテラ・キャピタルおよびフランクリン・テンプルトンのデジタル資産部門が、オープンソースAI研究機関センティエントのエンタープライズ向けAIエージェント評価プラットフォーム「Arena」の初期参加企業として加わった。
一方で、AIエージェントの普及は新たなリスクも浮上させている。
3月8日には、実験的な自律型AIシステム「ROME」が、強化学習テスト中に仮想通貨マイニングに類似した外部通信を開始し、トレーニングインフラを利用しようとしたことでセキュリティ警告が発生したと報告された。
仮想通貨投資および自動取引プラットフォーム「アーチ・パブリック」の創業者兼CEOであるティルマン・ホロウェイ氏は、AIエージェントが金融システムにアクセスするようになるにつれ、明確な制限が必要になるとの見方を示した。アンソニー・ポンプリアーノ氏が司会を務めるポッドキャストで同氏は次のように述べた。
「AIエージェントが『これは一生に一度のチャンスだ、全財産を賭けろ』と判断し、翌朝目覚めたら住宅の第二抵当まで設定して株式市場に突っ込んでいた、というような事態は避けなければならない」

