
東南アジア詐欺の“裏金庫”を米当局が摘発 暗号資産80億円超を差し押さえ
米司法省と財務省は、東南アジアの大規模詐欺拠点を支えたとされる暗号資産マーケット「シンビ・ギャランティ」に対し、制裁と差し押さえに踏み切った。シンビは詐欺グループの資金洗浄や換金を支える“裏インフラ”として機能していたとされ、差し押さえ対象となった暗号資産は5200万ドル超、日本円で約80億円にのぼる。

米当局が、暗号資産を使った国際詐欺ネットワークの“心臓部”にメスを入れた。
米司法省は9月9日、詐欺マーケットプレイス「シンビ・ギャランティ(Xinbi Guarantee)」とそのベンダー網に関連する暗号資産5200万ドル超、約80億円相当を差し押さえ対象としたと発表した。司法省の「スキャムセンター・ストライクフォース」による、組織的詐欺インフラへの一斉摘発の一環だ。
司法省によれば、当局はシンビがベンダーへの支払い回収に使っていた2つのウォレットを押収した。そこには約1200万ドル、約18億5000万円相当の資金が入っていたという。さらに、シンビのネットワーク内で資金洗浄に関与したとみられる47のウォレットについても、差し押さえに向けた手続きを進めている。
米コロンビア特別区連邦地方裁判所は9月7日、シンビのマーケットプレイスを運営していたテレグラム・チャンネルの押収を認めた。開示された令状によれば、同チャンネルではベンダーらが資金洗浄サービス、投資詐欺用のカスタムサイト制作、さらに東南アジアの詐欺拠点に人員を集めるリクルートサービスまで宣伝していたという。
今回の作戦が狙ったのは、単なる末端の詐欺師ではない。産業規模に膨れ上がった詐欺センターを裏で動かす金融インフラと通信インフラである。司法省は、調査にあたりステーブルコイン発行企業テザーの協力があったとしている。
米財務省、シンビと技術提供企業を制裁
同日、米財務省も連動して動いた。財務省外国資産管理局(OFAC)は、シンビを「重大な国際犯罪組織」に指定したと発表した。あわせて、シンガポール拠点のセーフWテクノロジー(SafeW Technology)と、カンボジア拠点のアンウェン・テクノロジー(Anwen Technology)にも制裁を科した。両社はシンビに対し、技術面および金融面で支援を行った疑いがあるという。
財務省によれば、法執行機関の監視が強まるなか、シンビは2025年6月ごろから、加盟業者や資金洗浄ネットワークをセーフWの暗号化メッセージアプリへ移し始めたという。またアンウェンは、シンビペイ(XinbiPay)、別名ニューペイ(NewPay)と呼ばれる暗号資産ウォレット兼決済アプリを開発したとされる。
ブロックチェーン分析企業TRMラボのグローバル政策責任者であるアリ・レッドボード氏は、コインテレグラフに対し、こう語った。
「OFACがシンビを制裁したのには、十分な理由がある。ヒュイオネが崩壊した後、シンビは東南アジアの詐欺拠点にとって、エスクローと換金の主要な受け皿になった。しかもその規模は産業レベルで、360億ドル、約5兆5400億円超を動かしていた」
財務省によれば、シンビは2022年ごろから現在までに、暗号資産と法定通貨をあわせて240億ドル超、約3兆7000億円相当を処理してきた。その大半は東南アジアを経由していたという。
さらに同省は、シンビのプラットフォームが北朝鮮のハッカーや、制裁対象となっているプリンス・グループ関連組織にも利用されていたと指摘している。
今回の制裁により、シンビおよび指定された関連企業が米国内に保有する資産や権益は凍結される。また、米国人によるこれらの指定対象との取引は原則として禁止される。
シンビをめぐっては、米国に先立ち英国も制裁に動いていた。英国政府は3月26日、シンビに対する制裁措置を発動し、同プラットフォームを暗号資産へのアクセスから切り離す方針を示していた。英国の制裁では、シンビ関連の英国内資産が凍結され、同プラットフォームは英国の金融、貿易、渡航ネットワークから排除される。

