
金トークン、取引量14兆円の裏で"99%が放置プレー"!? DeFiで使われぬ「デジタル金塊」の不都合な真実をレッドストーンが直撃
金(ゴールド)価格が史上最高値を更新し、トークン化ゴールドの需要は今年、爆発的に膨れ上がった。だが——その大半は、DeFi(分散型金融)の世界で一切"働いて"いなかった。レッドストーンの新報告書が白日の下にさらした、笑うに笑えない「採用ギャップ」の全貌とは。

現物の金(ゴールド)が史上最高値へと駆け上がるなか、その値動きに連動する「トークン化ゴールド」への需要が今年、堰を切ったように膨張している。ところが、だ。この"デジタル金塊"、肝心のDeFi(分散型金融)の現場ではほとんど使われていない——。暗号資産インフラ企業レッドストーン(RedStone)がまとめた新報告書が、業界の急所とも言える「採用ギャップ」を白日の下にさらした。
数字を見れば、その落差は一目瞭然である。金先物が1トロイオンスあたり5,600ドル(約88万円)超まで跳ね上がった第1四半期、トークン化ゴールドの現物取引高はなんと907億ドル(約14兆2400億円)に到達した。ところが、だ。テザー・ゴールド(XAUT)とパックス・ゴールド(PAXG)のうち、アーベ(Aave)v3とモルフォ(Morpho)で担保として実際に使われているのは、わずか6,300万ドル(約99億円)相当にすぎない。両トークンの時価総額合計42億ドル(約6,600億円)に照らせば、たったの1.5%——。残りの98.5%は、いわば"塩漬け"状態というわけだ。
「極めて残酷な投げ売り」を耐え抜いた"デジタル金塊"
もっとも、採用こそ細々としているものの、トークン化ゴールドはすでに"本物の試練"をくぐり抜けている、とレッドストーンは指摘する。
舞台は3月23日。金相場が急落するなか、アーベはXAUTの大量清算(リクイデーション)を、システム障害を一切起こすことなく処理しきってみせた。トークン化された金塊が、市場ストレス下でもDeFiの担保として"使い物になる"ことを、身をもって証明した格好だ。
この清算劇の引き金となったのが、前週の金相場のつるべ落としである。金はわずか1週間で10%も下落——実にこの40年超で最悪の週間成績を叩き出した。JPモルガンの貴金属ストラテジスト、グレッグ・シアラー氏は、この売り浴びせを「極めて残酷な投げ売り」と表現している。

Tokenized gold liquidations peaked in late March across Morpho and Aave. Source: RedStone.
そして下落は、これで終わりではなかった。1月のピークから金先物は26%超も値を下げている。背景にあるのは、米国の金利上昇観測だ。金利のつかない貴金属のような資産は、金利が上がるほど妙味が薄れ、投資家の食指が動きにくくなる——という寸法である。
次なる関門は「DeFiでの採用」
レッドストーンの調査が突きつけた結論はこうだ。トークン化ゴールドは、DeFi担保として"打たれ強さ"こそ証明した。だが、採用の裾野は依然として狭いまま——。市場のごく一部しかレンディング(貸付)プロトコルに投入されていないという事実は、トークン化されたRWA(現実資産)が拡大を続けるうえでの、根深いインフラ課題を浮き彫りにしている。
金は今、急拡大するトークン化RWA市場の一角を占める存在だ。この市場には、プライベートクレジット(私募融資)や米国債も名を連ね、さらに株式(エクイティ)の存在感も増している。6月にはトークン・ターミナル(Token Terminal)が、同セクターの規模が430億ドル(約6兆7500億円)を突破したと報じた。
一方、中央集権型の暗号資産取引所も、伝統的金融(TradFi)とデジタル資産の橋渡しを狙い、トークン化資産の取り込みを猛烈な勢いで進めている。コインゲッコー(CoinGecko)の最新レポートによれば、新興の「暗号版トラッドファイ(crypto TradFi)」市場は6月時点で66億ドル(約1兆400億円)規模にまで成長したという。

