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Ezra ReguerraライターYohan Yu監修編集者

銀行預金が「ブロックチェーン化」されると、なぜあなたのローン金利が上がるのか──米ダラス連銀エコノミストが弾き出した「111兆円」の衝撃試算

最新ニュース公開日2026年8月27日

米ダラス連銀のエコノミスト2人が、銀行預金の「トークン化」が銀行の資金調達を不安定にし、米国の家計や企業が支払う借入コストを押し上げかねないと分析した。24時間365日、瞬時に動く預金は便利だ。だが、その便利さのツケは誰が払うのか。

あなたの預金が、秒単位で別の銀行へ逃げ出す時代がやってくる──。

そんな未来図に、米連邦準備制度の中枢から冷や水を浴びせるリポートが出た。米ダラス連邦準備銀行(ダラス連銀)のエコノミスト2人が、預金の「トークン化」が銀行の資金調達を不安定にし、米国の家計と企業が負担する信用コスト、つまり借入コストを押し上げる恐れがあると分析したのである。

執筆したのはロージー・レヴィ氏とスリニ・ラマスワミ氏。両氏が問題視するのは、ブロックチェーン上の預金トークンがもたらす「速さ」だ。決済が即時に完了するようになれば、より高い利回りを求める預金者は、これまでよりはるかに素早く銀行を乗り換えられる。

しかも、話はそれだけでは終わらない。プログラム可能な預金トークンと、自律的に判断して動く「エージェント型AI」が組み合わされば、その乗り換え作業すら自動化されてしまう。人間が「金利を比べて手続きする」という手間がゼロになるのだ。結果として、預金が一つの銀行にとどまる時間は短くなり、金利の変動に対して過敏に反応するようになる、というのが両氏の見立てである。

「10%」の変化が生む7000億ドルの穴

では、その影響はどれほどか。両氏の試算は、なかなかに生々しい。

仮に預金の金利感応度が10%高まった場合、銀行が長期の融資やその他の資産を抱えていられる「体力」は、約7000億ドル(約111兆円)分縮小しうる。別のシナリオとして、預金が銀行にとどまる期間が10%短くなった場合には、その体力は約5800億ドル(約92兆円)分削られる計算になるという。

もっとも、ここは丁寧に読む必要がある。両方の数字はいずれも「10年物換算」で表現されたものであり、融資がその金額だけ直接消えてなくなる、という意味ではない。あくまで予測ではなくシナリオ分析であり、1ドル減れば1ドル貸せなくなる、という単純な話でもない。

とはいえ、である。このリポートが出てきたタイミングが、いかにも示唆的なのだ。米国の銀行界はいま、顧客の資金を規制下の銀行システムの内側に置いたまま、トークン化預金を24時間動かすための共同ブロックチェーン網の構築に、猛然と前のめりになっている。

銀行界は前のめり、39団体が結束

その象徴が、8月25日の火曜日に動いた。米国の州銀行協会39団体が「バンクチェーン・アライアンス」を結成し、トークン化預金とステーブルコイン、そして自動決済に対応する全米規模のネットワーク開発に乗り出したのである。

一方、決済インフラ大手のザ・クリアリング・ハウスも別のネットワークを開発中だ。こちらを支えるのは、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティ、BNY、ウェルズ・ファーゴという錚々たる顔ぶれ。米銀の主力が二正面で走り出した格好だ。

動きは国境も越え始めている。8月20日には、スタンダードチャータードとHSBCが、スイフトのブロックチェーン台帳を使ったクロスボーダー取引の実取引に成功した。両行それぞれのシステムを接続し、そこで生じた債権債務を記録したうえで、最終的な決済は既存の決済インフラを通じて行うという建て付けである。

ツケを払うのは誰か

では、預金が不安定になったとき、銀行はどう身を守るのか。

レヴィ、ラマスワミ両氏はこう指摘する。銀行は準備預金や米国債といった流動性の高い資産を、これまで以上に厚く積み上げることで対応するだろう、と。さらに、融資ポートフォリオを維持するために、期限付き債務(ターム債)への依存を強める可能性もある。

だが、ここに落とし穴がある。ホールセール市場での起債によって融資の原資を賄えば、そのコストは当然どこかへ転嫁される。行き着く先は、消費者と企業が支払う信用コストの上昇──つまり、私たちのローン金利だ。便利さの請求書は、結局のところ末端に回ってくるということである。

両氏が比較対象として引き合いに出したのが、ブラジルの即時決済システム「ピックス(Pix)」だ。トークン化預金と同一のものではないと断りを入れつつも、示唆に富む先例として挙げている。2025年の研究は、ピックスの利用が拡大するほど銀行の流動資産保有が増え、信用仲介機能が縮小したことを明らかにしている

暗号資産の技術が銀行の中核である預金にまで及び始めた2026年。その果実と代償の計算は、まだ終わっていない。

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