
ビットコイン採掘屋がAIインフラ企業に変身 テラウルフ、アンソロピックと3兆円契約で株価急騰
ビットコインを掘ってきたテラウルフが、今度はAIインフラへ大きく舵を切った。アンソロピックと20年契約を結ぶ一方、別のAIデータセンター共同事業では過半数持ち分を手放した。

ビットコインマイニング企業のテラウルフが、いよいよAIインフラ事業へ本格的に舵を切った。
同社は、AI企業アンソロピックとの間で、20年にわたるデータセンターのリース契約を締結した。契約収入は約190億ドル、日本円にして約3兆700億円に達する見込みだ。
さらにテラウルフは月曜日、別のAIデータセンター共同事業について、過半数持ち分を売却すると発表した。売却で得た資金は、同社が完全所有するAIインフラ事業に再投資する方針だ。
この発表を受け、同社株は月曜午前の取引で約12%上昇。ヤフー・ファイナンスのデータによれば、執筆時点で年初来の上昇率は約107%にまで膨らんでいる。

TeraWulf stock price. Source: Yahoo Finance
今回の契約では、アンソロピックが、ケンタッキー州ホーズビルにあるテラウルフの「ジャスティファイド・データ」拠点で、AI専用に設計されたデータセンター・キャンパスをリースする。
この施設は2月に取得されたもので、重要IT設備向けに401メガワットの電力容量を支える設計となっている。初期稼働は2027年後半、全面稼働は2028年初頭を目指す。
一方で、テラウルフはテキサス州のAIデータセンター計画「アバーナシー」共同事業について、保有する50.1%の持ち分を売却することで合意した。買い手は、提携先であるフルイドスタックが主導する投資家グループだ。
同社によれば、この売却によって、これまで投じてきた約4億5000万ドル、約727億円の投資資金を回収できる見通しだという。その資金は、今後、同社が単独で保有するAIインフラ案件に振り向けられる。
AI需要がビットコインマイニング業界を作り替える
今回の発表の背景には、AIインフラ需要の急拡大がある。生成AIの学習や大規模AIモデルの運用には、高性能チップ、先進的な冷却設備、そして大量かつ安定した電力を備えたデータセンターが欠かせない。
つまり、電力を潤沢に確保できる拠点の価値が、かつてないほど高まっているのだ。
そこで浮上しているのが、ビットコインマイニング企業である。彼らはすでに、送電網との接続、電力契約、そして電力集約型コンピューティングに必要なインフラを持つ拠点を抱えている。
AIデータセンターで使う機器は、暗号資産マイニング設備とは異なる。だが、電力を大量に消費するという点では重なりがある。このため、複数のマイニング企業がAIや高性能コンピューティング、いわゆるHPC領域へ事業を広げ始めている。
もっとも、この転換には巨額の資金が必要だ。
ブロックスブリッジ・コンサルティングは6月、AIインフラを追求する上場ビットコインマイニング企業は、近い将来におよそ500億ドル、約8兆800億円の資本を必要とする可能性があると試算した。AIデータセンターは、従来型のビットコインマイニング施設よりもはるかに大きな投資を要するためだ。
先月には、ハイブ・デジタルが、AIスタートアップのコヒア向けにGPUクラウドインフラを提供する3年契約を締結した。契約額は2億2000万ドル、約355億円にのぼる。提供はベル・カナダの「AIファブリック」を通じて行われる。
また、アイレンはスペインのデータセンター開発企業ノストラム・グループを買収した。これにより、送電網に接続済みの確保済み電力約490メガワットを追加し、欧州AI市場へ本格参入する形となった。
ビットコインを掘っていた企業が、今やAIを動かす「電力の大家」へ――。暗号資産マイニング業界の地殻変動は、いよいよ鮮明になってきた。

