
ビットコイン採掘会社がAIに全賭け 借金5670億円でアンソロピック向け巨大データセンター建設へ
ビットコイン採掘からAIインフラへ――。米上場企業テラウルフが、アンソロピック向け巨大データセンターの拡張費用として約5670億円の借り入れを計画している。20年間で約3兆780億円を稼ぐという“夢の契約”の裏で、内部者による株式売却や事業モデルへの疑念もくすぶっている。

米国に上場するビットコイン採掘会社、テラウルフが、約35億ドル(約5670億円)もの巨額資金を借金で調達しようとしていることがわかった。
目的は、ケンタッキー州にある「ジャスティファイド・データ」キャンパスの拡張だ。同施設は、生成AI「クロード」を開発するアンソロピックが長期契約で借り受ける予定となっている。
ブルームバーグが木曜日に報じたところによると、資金調達は2026年中にも始まる見通し。テラウルフの最高財務責任者、パトリック・フルーリー氏が明らかにしたという。
旗振り役を務めるのは、米投資銀行大手のモルガン・スタンレーだ。
調達手段としては、信用力が比較的低い企業にも融資する「レバレッジドローン」と、高い利回りを付ける代わりに債務不履行リスクも高い「ハイイールド債」を組み合わせる可能性がある。
実現すれば、テラウルフにとってレバレッジドローン市場への初参入となる。
20年で「3兆円超」を稼ぐ皮算用
この巨額借り入れ計画が浮上したのは、テラウルフがアンソロピックとの20年間に及ぶ賃貸契約を発表してから、わずか数日後のことだった。
AIの性能競争が激化するなか、膨大な計算能力を提供できるデータセンターの需要は急増している。かつてビットコイン採掘に使われていた大量の電力と設備が、いまやAI企業を呼び込む“金のなる木”に変わりつつあるのだ。
ジャスティファイド・データは、ケンタッキー州ホーズビルに建設される大規模データセンターだ。AIの学習や推論といった、莫大な計算処理を必要とする作業を支える。
第1段階の稼働開始は2027年後半を予定。施設全体の完成は2028年初頭を目指している。
テラウルフによれば、アンソロピックとの当初20年間の契約だけで、約190億ドル、実に約3兆780億円の契約収入を生み出す見込みだ。
同社の公式発表では、アンソロピックとの契約対象は最大401メガワット規模。20年間にわたる長期収入を確保し、変動の激しいビットコイン採掘事業からAIインフラ事業への転換を鮮明にしている。

Source: TeraWulf
すでに巨額調達を連発
もっとも、テラウルフが巨額の資金調達に乗り出すのは今回が初めてではない。
同社は2025年12月に約13億ドル(約2106億円)、同年10月にも約32億ドル(約5184億円)を調達している。
今回報じられた約35億ドルの借り入れまで実現すれば、同社がAIデータセンター事業に注ぎ込む資金は、さらに膨れ上がることになる。
コインテレグラフは、今回の資金調達についてテラウルフとモルガン・スタンレーにコメントを求めたが、記事掲載時点までに回答は得られていない。
経営陣だけが儲ける? 投資家の疑念
華々しいAI転身の一方で、投資家の間には不穏な空気も漂っている。
テラウルフを巡っては最近、内部者による株式売却や、経営陣と一般株主の利害が本当に一致しているのかという疑問が相次いでいる。さらに、借金と巨額投資を前提とする成長モデルそのものを不安視する声もある。
ビットコイン採掘業界の調査会社ブロックスブリッジ・コンサルティングは木曜日、AIブームの追い風を受けた採掘会社で内部者による株式売却が相次いでいる問題を取り上げ、その代表例としてテラウルフを挙げた。 (LCX)
要するに、株価がAI期待で盛り上がるなか、会社の内情をよく知る経営陣らが持ち株を売っているのではないか――。そんな疑念が投資家の警戒心を強めているのだ。
「設備更新費が膨らむ」との批判に反論
テラウルフのAIデータセンター事業については、採算性そのものを疑問視する声も上がっている。
火曜日に配信された投資番組「マクナリー・マネー」のポッドキャストで、フルーリー氏は、ある空売り投資家が示した試算に反論した。
その試算では、テラウルフのデータセンターは将来、設備の維持や更新に想定以上の費用がかかるとされていた。
これに対しフルーリー氏は、テラウルフの仕事は電力と建物などの基盤を提供することだと説明。サーバーや半導体などの計算機器を所有し、技術更新を行うのは顧客側だと強調した。
つまり、AI用半導体が数年で旧式になったとしても、その交換費用までテラウルフが負担するわけではない、という主張だ。
さらに同氏は、長期賃貸契約を採用しているため、一般的なデータセンターで繰り返し発生する設備更新や構成変更の費用を抑えられると説明した。

Source: Matthew Sigel
ビットコインを掘っていた会社が、今度はAIブームを当て込んで約5670億円を借りる――。
20年間で3兆円超を稼ぐ壮大な計画は、AI時代の新たな成功物語となるのか。それとも、巨額の借金だけが残るのか。テラウルフの“大勝負”に、市場の視線が注がれている。

