
S&Pグローバル、暗号資産レンディングを評価 1.5兆円規模の「ボールト」向けリスク評価を開始
S&Pグローバル・レーティングスが、暗号資産のレンディング・ボールト向けに新たなリスク評価制度を開始した。9月時点で預入額は約100億ドル(約1兆5000億円)に達しており、6つのリスク要因を評価する。

S&Pグローバル・レーティングスは、オンチェーンの投資商品が広がる中、デジタル資産のレンディング・ボールトを対象とするリスク評価の枠組みを発表した。
この枠組みでは、ボールトを「ポートフォリオの信用リスク」「流動性のミスマッチリスク」「キュレーターリスク」「ブロックチェーンリスク」「プロトコルリスク」「ボールトのセキュリティー・ガバナンスリスク」の6つの分野から評価する。
S&Pによると、この評価はレンディング・ボールトに投資した場合の損失リスクを評価するもので、信用格付けには当たらず、利回りも評価対象としない。
また、S&Pグローバル・レーティングスのアナリスト、リサ・シュローアー氏によると、この枠組みは6つのリスクのうち、特定の1つを他より重大なリスクとして扱うことを目的としたものではない。
シュローアー氏はコインテレグラフに対し、「どの要素であっても重大な弱点があれば、全体的なVRA(ボールト・リスク評価)を制約する。ある要素で高い評価を得ても、別の要素にある重大な弱点を補うことはできない」と説明した。
同氏によると、このアプローチは「多くのリスクや障害となるポイントが存在し、それらのどこかが破綻につながる」業界の実態を反映しているという。
デジタル資産のレンディング・ボールトは、投資家から資金を集め、スマートコントラクトや人間のキュレーターが管理するあらかじめ定められた戦略を通じて運用する仕組みだ。預け入れた投資家には、ボールトが保有する資産と収益に対する持ち分を示すトークンが付与される。
S&Pによると、デジタル資産のレンディング・ボールトへの預入額は9月時点で約100億ドル(約1兆5000億円)に達した。2年前は15億ドル(約2250億円)だった。
S&Pは今後の発表で、最初のボールト・リスク評価を公表する予定だが、どのボールトを最初に評価するかについては明らかにしていない。
この評価が投資家に果たす役割について、シュローアー氏は「この評価は、リスクについてより透明性を高め、あらゆる主体がDeFiボールトへの資金配分を決める際に、より十分な情報に基づいて判断できるようにすることを目的としている」と述べた。
暗号資産ボールトが拡大、リスクに注目集まる
暗号資産ボールトはこの1年で拡大している。取引所やウォレット、DeFiプラットフォームが、レンディングなどの収益を生み出す戦略を組み込んだ商品を相次いで提供しているためだ。
2月にはテレグラムのウォレットが、モルフォ、TAC、Re7のインフラを利用した自己管理型のBTC、ETH、USDTボールトを導入した。
5月にはクラーケンが、ベーダ(Veda)の技術を基盤とし、セントラ(Sentora)が運用戦略を管理するビットコインの利回りボールトを開始。開始からわずか10時間で4000ウォレットから3000万ドル(約45億円)を集めた。
このモデルは、その後トークン化された証券にも広がっている。
9月にはクラーケンが、エヌビディア株やSPDR S&P500、インベスコQQQのETFをトークン化した商品向けに利回りボールトを開始。セントラが運用戦略を管理し、DeFi市場を通じてこれらの資産を貸し出している。

Source: PeckShieldAlert
暗号資産ボールトの人気が高まる一方で、リスクも明らかになっている。
8月には、レンディングプロトコルのターム・ファイナンスで、攻撃者が「メタ・ボールト」のガバナンス権限を悪用し、推定850万ドル(約12億7500万円)の被害が発生した。
現時点で、米国における暗号資産ボールトは規制上のグレーゾーンにある。
7月には米証券取引委員会(SEC)のヘスター・パース委員が、一部のボールトやオンチェーン・レンディング商品について、仕組みや運営方法によっては連邦証券法の対象となる可能性があると述べた。
パース氏によると、資産配分や利回り戦略、貸し出し条件、清算のしきい値について裁量的な判断を伴うボールトは、証券規制や投資会社、投資顧問に関する規制の対象となる可能性がある。

