
米SEC、暗号資産の自己保管を容認へ 投資顧問の規制障壁を緩和
米証券取引委員会(SEC)は、投資顧問会社やファンドによる暗号資産の保管ルールを緩和する規則案を公表した。適格な暗号資産カストディアンが存在しない場合、一定の条件のもとで投資顧問会社自身による保管を認めるほか、州の信託会社を暗号資産カストディアンとして利用できるようにする。

米証券取引委員会(SEC)は1日、投資顧問会社やファンドが顧客の暗号資産を保管する際の規則を緩和する規則案を公表した。
規則案では、一定の条件を満たせば、適格な暗号資産カストディアンが存在しない場合に投資顧問会社自身が顧客の暗号資産を保管できるようにする。また、州の信託会社を暗号資産カストディアンとして利用することも認める。
SECのポール・アトキンス委員長は声明で、「暗号資産市場は、単なるニッチな存在から、投資家が積極的に投資を求める数兆ドル(数百兆円)規模の資産クラスへと成長した。しかし残念ながら、われわれの規則や規制はその変化に追いついていない」と述べた。
今回の提案が焦点を当てるのは、暗号資産への投資をめぐる実務上の障壁だ。
投資顧問会社は、特定のトークンを保管できる適格なカストディアンを見つけられない場合があり、そのことが顧客に提供できる投資商品の制限につながっていた。
暗号資産の適格なカストディアンが不足している問題については、デジタル・チェンバー(The Digital Chamber)も以前から懸念を示していた。
同団体は2025年5月にSECへ提出した文書で、一部の投資顧問会社がトークンの割り当てを断ったり、カストディが利用可能になるまで投資先企業にトークンを保有させたりしていたと指摘している。
SECのヘスター・パース委員は1日の声明で、こうした不確実性を規制上の「ジェットコースター」に例え、投資顧問会社は実用的なカストディ規則を待ちながら「歯を食いしばり、必死にしがみついてきた」と述べた。
暗号資産の自己保管には条件
SECの規則案では、顧客の暗号資産を自社で保管しようとする投資顧問会社は、まず資産ごとに利用可能な適格カストディアンが存在しないことを確認する必要がある。
さらに、その判断を四半期ごとに見直さなければならない。カストディアンが利用可能になった場合には、合理的に可能な限り速やかに暗号資産を移管する必要がある。
自己保管を行う場合には、秘密鍵やサイバーセキュリティーに関する安全対策に加え、顧客ごとの資産を分別して管理することも求められる。
また、自己保管している暗号資産を移転する際には、少なくとも2人の権限を持つ人物による承認が必要となる。
SECのマーク・ウエダ委員は、投資顧問会社によるカストディには「本質的な利益相反」が存在するとしたうえで、投資顧問会社が顧客の暗号資産を保管する場合でも、受託者としての義務は引き続き適用されると述べた。
規制対象ファンドについても、投資顧問会社が自己保管の要件を満たし、ファンドの取締役会がその取り決めを監督することを条件に、投資顧問会社による暗号資産の自己保管を認める。
州の信託会社もカストディアンに
今回の提案では、州の信託会社を暗号資産カストディアンとして利用する選択肢も設ける。
州の信託会社とは、米国の州政府から認可を受け、他人の資産を管理する金融会社を指す。
利用する場合には、暗号資産のカストディ業務を行う権限を関連する州当局から取得していることが条件となる。
また、暗号資産を紛失、盗難、不正流用から守るための合理的な手続きを整備していること、監査済み財務諸表や内部統制報告書を備えていることも求められる。
さらに、顧客が保有する暗号資産を信託会社自身の資産から分別して管理する必要がある。
この規則案では、監査や記録保存、情報開示に関する要件の変更も提案されている。
SECは、規則案が連邦官報(Federal Register)に掲載されてから60日間、一般からの意見を受け付ける。
今回の提案は、SECと米商品先物取引委員会(CFTC)が、それぞれ既存の権限を使って暗号資産に関するルールを明確化しようとする動きの一環だ。
暗号資産市場の規制枠組みを定めるCLARITY法案は先月、米上院で前進しなかった。
CFTCはホワイトハウスの審査に暗号資産市場の規制案を提出している。一方、SECはトークン化された株式の取引に向けた道筋を示している。

