
暗号資産の匿名送金が変わる スタークウェアとSuiが「隠せるが監査できる」新機能を発表
スタークウェアとSuiは今週、取引データを隠しながらも、監査や規制当局の目を完全には遮断しない新たなプライバシー機能を相次いで発表した。

暗号資産の世界で、「プライバシー」の意味が変わり始めている。
スタークウェアとSuiは今週、取引データを隠しながらも、監査や規制当局の目を完全には遮断しない新たなプライバシー機能を相次いで発表した。
スタークウェアは火曜日、スタークネット上のERC-20トークン向けプライバシー基盤「STRK20」をローンチしたと明らかにした。ユーザーは残高や取引データを秘匿できる一方、一定の条件下では情報開示の仕組みも備えるという。
スタークウェアの共同創業者で最高経営責任者(CEO)を務めるイーライ・ベン=サッソン氏は、コインテレグラフの取材に対し、「コンプライアンス対応」とは、STRK20自体が法令遵守を判断したり、規制当局の承認を保証したりする意味ではないと説明した。
同氏によれば、この枠組みはリスクベースのモデルに基づいている。つまり、プライバシーは無条件ではなく、条件付きだ。秘匿プールに入る段階でスクリーニングを行い、法的な要請があれば、閲覧キーに基づいて情報を開示できる仕組みを持つ。
一方、Suiも「コンフィデンシャル・トランスファー」のパブリックベータ版を開始した。これは、取引金額を隠しつつ、監査やコンプライアンス上必要な場合には、権限を持つ当事者が情報にアクセスできる機能だ。
今回の動きは、暗号資産のプライバシー技術が「完全な匿名性」から離れ、監査や開示の仕組みを組み込んだ、機関投資家に受け入れられやすいモデルへと向かっていることを示している。

Sui launches confidential transfers. Source: Sui
プライバシー技術に迫る「コンプラ」の波
ここ数週間、プライバシー重視のプロジェクトは、監督体制と信頼性の両面で厳しい問いを突きつけられている。
ブロックチェーンのプライバシー技術を手がけるザマは6月2日、コンプライアンス対応のロードマップを前倒しすると発表した。その背景には、同社のコンフィデンシャルUSDCラッパーに保管されていた約1250万ドル、日本円で約20億円相当のUSDCが、裁判所命令によって一時凍結された一件がある。凍結は、その後、法的要請の処理が解決されたことを受けて解除された。
ザマはその後、暗号化された取引に関する情報開示の仕組みや、規制当局との連携方針を強調するようになった。
暗号資産業界を代表するプライバシープロジェクトの一つ、ジーキャッシュにも改めて視線が集まっている。ジーキャッシュは、偽造トークンが検知されずに作成される可能性をめぐる懸念を招いたバグを公表した。
ジーキャッシュの開発者らは、この脆弱性について、6月上旬に完了した緊急ネットワークアップグレードで対処済みだと説明している。悪用が確認された証拠はないという。ただし、秘匿プールの性質上、脆弱性が公表された後に取引履歴を完全に再構成することは難しい。
暗号資産のプライバシーは、もはや「誰にも見えない」ことだけを競う時代ではなくなりつつある。見えないが、必要な時には見せられる。そんな都合のよい仕組みを、規制当局も機関投資家も求め始めている。

