
トランプ家の暗号資産ビジネスに利益相反疑惑 米銀行規制トップが反論
ドナルド・トランプ大統領が指名した米通貨監督庁(OCC)長官、ジョナサン・グールド氏が、トランプ家の金融利害に絡む暗号資産企業の免許申請をめぐり、議会で厳しい追及を受けた。

ドナルド・トランプ大統領が指名した米通貨監督庁(OCC)長官、ジョナサン・グールド氏が、トランプ家の金融利害に絡む暗号資産企業の免許申請をめぐり、議会で厳しい追及を受けた。
焦点となったのは、トランプ氏とその息子らが共同創業者に名を連ねる暗号資産企業、ワールド・リバティ・フィナンシャルである。同社は今年1月、OCCに対し、全米信託銀行免許を申請した。これに対し、民主党議員らは「大統領一家の利益相反ではないか」と反発を強めてきた。

Representative Gregory Meeks at a Thursday hearing. Source: House Financial Services Committee
火種は、5日に開かれた米下院金融サービス委員会の公聴会だった。テーマは「健全性規制当局の監督」。ニューヨーク州選出の民主党議員、グレゴリー・ミークス氏は、ワールド・リバティと外国政府、さらに暗号資産取引所バイナンスとの関係について、グールド氏を問いただした。
ミークス氏は、同社について「大統領一家の懐を直接潤している」と指摘。OCCがワールド・リバティの申請を審査するにあたり、他社と同じ基準を適用すべきだと迫った。
「あなたが今もアメリカ国民のために働いているのか。それとも、トランプ一家の“揉み消し役”に成り下がったのか。それを証明してもらいたい」
委員会室では、ミークス氏とグールド氏の発言が何度も重なった。ミークス氏はグールド氏を「トランプのフィクサー」とまで呼び、ワールド・リバティの申請が承認されるとの見方をにじませた。
これに対し、グールド氏は反論した。
「私が感じている政治的圧力は、あなたと、あなたの上院の同僚議員たちからのものだけだ。これは極めて残念で、前例のないことだ」
つまり、トランプ大統領から承認を命じられたことも、特別扱いを求められたこともない――。グールド氏は、そう示唆したのである。
ただ、疑惑の目が向けられる背景はある。OCCはすでに、コインベース、リップル、ビットゴー、サークル、フィデリティ・デジタル・アセット、パクソスなど、複数の暗号資産企業による全米信託銀行免許の申請を承認、または条件付きで認めている。
グールド氏は2025年7月、共和党が多数を占める上院で、党派に沿った採決により承認され、OCC長官に就任した人物だ。
ワールド・リバティの申請が出された直後の1月、グールド氏はOCCの審査について「政治的でも党派的でもない」と述べていた。だが、マサチューセッツ州選出の民主党上院議員、エリザベス・ウォーレン氏は、同社の審査停止を求めた一人である。ウォーレン氏は、OCCによる一連の承認について、「明らかに資格を欠くように見える企業」に対するもので、連邦銀行法に違反していると批判している。

Four of World Liberty’s co-founders, including two of Donald Trump’s sons. Source: World Liberty Financial
全米信託銀行免許が承認されれば、暗号資産企業は、伝統的な銀行と同じ規制要件をすべて負うことなく、一定の金融サービスを提供できるようになる。
ワールド・リバティだけではない。暗号資産取引所クラーケンの親会社であるペイワードも、5月にOCCへ申請を提出している。
上院では「クラリティ法案」採決へ
一方、米国では暗号資産市場の包括的な制度設計をめぐる動きも進む。
デジタル資産市場構造法案、いわゆる「クラリティ法案」は、今年、重要な2つの委員会を通過しており、近く上院本会議で採決にかけられる見通しだ。
スコット・ベッセント財務長官は4日、トランプ政権として今夏中の成立を目指していると述べた。一部の上院議員は、8月前の採決を見込んでいる。
暗号資産業界にとっては、規制の明確化に向けた前進となる可能性がある。だが同時に、トランプ一家の関与する企業がその恩恵を受けるのではないか――。ワシントンでは、制度改革と利益相反疑惑が、いま同じテーブルの上に置かれている。

