
カルシを米最高裁へ「予測市場はギャンブルか」ニュージャージー州が提訴、全米の暗号資産・予測市場規制を左右する可能性
ニュージャージー州が、予測市場大手カルシをめぐる規制問題で米最高裁に上告受理を申し立てた。焦点は、スポーツの勝敗を対象とする「イベント契約」を連邦政府のCFTCが管轄するのか、それとも各州のギャンブル規制が適用されるのかという問題だ。判決次第では、カルシをはじめ米国の予測市場ビジネスのルールが一変する可能性がある。

米国で急拡大する「予測市場」を、いったい誰が取り締まるのか――。州政府なのか、それとも連邦政府なのか。
ニュージャージー州の司法長官とゲーミング規制当局トップが、この問題に決着をつけるよう米連邦最高裁判所に正式に求めた。
ジェニファー・ダベンポート司法長官と、ニュージャージー州ゲーミング執行局のメアリー・ジョー・フラハティ暫定局長は2日、スポーツイベントを対象とする契約を提供する予測市場プラットフォーム「カルシ(Kalshi)」への州当局の規制をめぐり、米最高裁に上告受理を求める申立書を提出した。
州当局によれば、同様の問題をめぐって「少なくとも20州」のゲーミング当局が民事訴訟を起こしている。
争点はシンプルだ。
予測市場会社が米商品先物取引委員会(CFTC)の規制を守っていれば、各州のギャンブル関連法に違反していても事業を続けられるのか――という問題である。
ダベンポート司法長官は声明で、カルシなどの事業者を厳しく批判した。
「カルシのような企業は、全50州で合法的なスポーツベッティングを提供していると主張している。しかし、どの州のギャンブル法にも従おうとしていない」
そのうえで、「こうした企業には州法を無視してスポーツベッティングを提供する権利はない」と主張。政治的立場を超えて数十州がカルシなどに反対していると指摘した。
さらに、「議会が何の説明もなく、スポーツベッティング業界を州法の適用対象外にしたわけではない」として、最高裁に判断を求めた。
ニュージャージー州司法長官の発表は公式Xアカウントでも公開されている。
今回の申立書でニュージャージー州側が最高裁に突きつけたのは、「2010年のドッド・フランク・ウォール街改革・消費者保護法によって、CFTCに登録された市場で提供されるスポーツベッティングについて、州が自らの管轄内で規制する権限が排除されたのか」という問題だ。
コインテレグラフはCFTCにコメントを求めたが、記事公開時点では回答を得られていない。
今回の上告申立ては、4月に米第3巡回区控訴裁判所が示した判断にも真っ向から異議を唱えるものだ。
同裁判所では、裁判官が2対1でニュージャージー州のゲーミング当局に不利な判断を下した。
裁判所は、CFTCが所管する商品取引所法(Commodity Exchange Act)が州法に優先するというカルシ側の主張について、同社には「勝訴する合理的な可能性がある」と判断していた。
一方、ニュージャージー州側は、予測市場上のスポーツベッティングをCFTCの管轄下にある「スワップ」と位置付ける考え方そのものに異議を唱えている。
州側は「連邦法は、いかなる場合であっても州のスポーツギャンブル法に優先するものではない」と主張している。
問題は、これが単なるニュージャージー州とカルシの喧嘩では済まないことだ。
ニュージャージー州司法長官室は、カルシ側が勝訴した場合について、かなり皮肉な結果が生じる可能性があると警告する。
「連邦法では、CFTCに登録された市場以外でスワップを取引することは禁止されている。そのためカルシが勝訴すれば、州法では認められている場合であっても、CFTC登録市場以外で行われるあらゆるスポーツギャンブルが違法になるようにも見える」
つまり、カルシが「これは州政府が規制する賭博ではなく、CFTCが管轄する金融商品だ」と押し通せば、従来型のスポーツベッティング市場にまで思わぬ余波が及ぶ可能性があるというわけだ。
カルシの広報担当ダニ・レバー氏はコインテレグラフに対し、ニュージャージー州が最高裁への上告を決めたことに反対するとコメントした。
同氏は、カルシが「50もの異なる規制当局から別々に規制されることはできない」と主張する。
「われわれは下級審の判断が正しいと引き続き確信している。ニュージャージー州が本日提出した申立書によって、われわれの見解が変わることはない」
もっとも、最高裁が実際に予測市場問題を取り上げるかどうかは、まだ分からない。
予測市場をめぐっては、ネバダ州の訴訟も控訴裁判所まで進んでおり、最高裁判事がいずれこの問題について判断するのではないかとの観測が専門家の間で以前から広がっている。
最高裁が選ぶのがネバダ州のカルシ訴訟なのか、今回のニュージャージー州の訴訟なのか、あるいは今後浮上する別の予測市場会社をめぐる事件なのかは分からない。
ただ、ひとたび最高裁が判断を下せば、その影響は極めて大きい。
「予測市場」をCFTCが監督する金融市場として扱うのか。それとも各州が取り締まるギャンブル市場として扱うのか。
米国で急成長する予測市場の“縄張り”を誰が握るのか。その答えを、米最高裁が決める日が近づきつつある。

