
IMFが警鐘、金融市場の「トークン化」は救世主か火種か ブロックチェーンが決済を一変させる可能性
IMFは、ブロックチェーンを基盤とする金融が市場の効率化につながる可能性があると指摘する一方で、標準や規制が分断されたままでは、新たなシステミックリスクを生みかねないと警鐘を鳴らしている。

国際通貨基金(IMF)は、トークン化が金融市場の仕組みを根本から作り変える可能性があるとの見方を示した。ブロックチェーンを基盤とするインフラが、もはや暗号資産業界の内輪の話ではなく、金融の本流へと入り込みつつある――。世界的な政策当局から、そうした認識がこれほど明確に示された例は少ない。
IMFの金融顧問で、金融資本市場局長を務めるトビアス・エイドリアン氏は木曜日に公開したブログで、トークン化は単なるニッチな暗号資産イノベーションではないと指摘した。資産、決済、記録管理を共有台帳の上に載せることで、現在は数日かかる決済プロセスを、ほぼ瞬時の取引にまで短縮できる可能性があるという。

Source: IMF
一方で、エイドリアン氏は警鐘も鳴らしている。トークン化によって、リスクの所在は従来の金融仲介機関から、スマートコントラクト、分散型台帳、サービス提供事業者といった基盤インフラへと移っていく。共通の標準や協調した規制がなければ、トークン化された金融市場は互換性のないプラットフォームごとに分断され、新たなシステミックリスクの温床になりかねない。
今回の報告は、金融機関が伝統的市場にトークン化を取り込む動きを加速させるなかで出されたものだ。JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、バークレイズなどを所有者に含むザ・クリアリング・ハウスは、2027年初めにもトークン化預金ネットワークを立ち上げる計画だと報じられている。狙いは、預金を規制下の銀行システム内にとどめつつ、より高速でプログラム可能な決済を実現することにある。
IMFの評価は、PwCの最近の調査とも足並みをそろえるものだ。PwCは、トークン化が従来型金融に長く残ってきた非効率、たとえば決済や資産所有権の移転といった問題に対応し得ると指摘している。また、ムーディーズが5月に公表した報告書でも、伝統的金融機関がトークン化金融への移行に向けて、すでに準備を進めていることが示されていた。
規制当局はトークン化金融のルール作りを急ぐ
IMFの報告書は、トークン化金融の形を決めるうえで、規制当局の役割がますます大きくなっている点を強調した。
エイドリアン氏によれば、政策当局者に残された時間はそう長くない。トークン化市場がどのように発展していくのかを決めるうえで、決済資産、ガバナンス、相互運用性、そして中央銀行の役割をめぐる判断が、金融システムをより効率的にするのか、それとも新たなシステミックリスクを持ち込むのかを左右するという。
米国では、証券取引委員会(SEC)が、トークン化資産に対して既存の証券法をどのように適用するのかを明確にする動きを進めている。新たに別個の規制枠組みを作るのではなく、既存のルールをどう当てはめるかを整理しようとしている形だ。

Source: Cointelegraph
SECはまた、「イノベーション免除」と呼ばれる制度の検討も示唆している。これは、長期的な規制枠組みが整備されるまでの間、市場参加者がトークン化証券向けのブロックチェーン基盤取引プラットフォームを試験的に運用できるようにするものだ。
金融の世界では、しばしば技術が先に走り、規制が後から追いかける。トークン化も例外ではない。決済は速くなり、コストは下がり、資産移転は滑らかになるかもしれない。だがその一方で、失敗の火種は銀行の帳簿からコードとプラットフォームへ移る。便利さの裏側で、金融システムの急所そのものが書き換わろとしている。

