
米国、暗号資産の窃盗対策で新組織案 司法省主導で被害1.8兆円の犯罪捜査を強化
暗号資産をめぐる窃盗事件に、米司法省が“司令塔”として乗り出すことになるかもしれない。超党派で提出された法案は、捜査の連携、地方警察への支援、ブロックチェーン解析の強化を柱に据えている。

暗号資産を狙う窃盗、詐欺、そしてデジタル資産絡みの犯罪に、米国が本腰を入れ始めた。
米議会では、司法省主導のタスクフォースを新設し、連邦、州、地方の捜査機関を横断して、暗号資産犯罪の捜査を連携させる法案が提出された。
この提案では、司法省が暗号資産窃盗捜査の「司令塔」となる。そこにFBI、国土安全保障捜査局、さらに財務省の金融犯罪取締ネットワーク、いわゆるフィンセンなどが加わる構図だ。
法案を提出したのは、共和党のランス・グーデン下院議員と、民主党のジョシュ・ゴットハイマー下院議員。党派を超えた格好である。
法案は、タスクフォースに対し、証拠収集、ブロックチェーン・フォレンジック、資産追跡、被害者支援に関するベストプラクティスを整備するよう求めている。さらに、州や地方の法執行機関に対して、研修や技術支援も提供する。
背景にあるのは、膨れ上がる被害額だ。
FBIの「2025年インターネット犯罪報告書」によれば、米国人が昨年報告した暗号資産関連の損失は110億ドル超、日本円にして約1兆7600億円にのぼった。

Source: Gooden.house.gov
タスクフォースは、国境をまたぐ捜査についても、海外の法執行機関と連携する。また、新たな脅威、捜査上の課題、政策提言の可能性などについて、毎年、議会に報告書を提出することになる。
ただし、この法案は暗号資産市場に対する新たな規制を認めるものではない。連邦機関の権限を拡大するものでもなく、新たな犯罪類型を作るものでもない。あくまで、すでに金融犯罪を捜査する責任を持つ機関同士の「連携」に焦点を当てている。
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暗号資産捜査にもAIの波
こうしたタスクフォース構想が浮上する一方で、ブロックチェーン分析企業の間では、AIを活用した捜査ツールの導入が加速している。
盗まれた資金の流れを追い、違法行為を特定し、デジタル資産ネットワーク上の複雑な取引を解析する。そんな作業を、AIで支援しようという動きだ。
3月には、TRMラボが「コーケース・エージェント」を発表した。暗号資産犯罪やコンプライアンス対応を担うチーム向けのAI捜査アシスタントである。同社によれば、このツールは自然言語での指示をもとに、資金の流れを追跡し、ブロックチェーン上の取引グラフを監査し、次に取るべき捜査手順を提案できるという。

Source: TRMLabs
同じ月には、チェイナリシスも同様のブロックチェーン・インテリジェンス・エージェントを発表した。同社は、夏にかけて捜査・コンプライアンス向けに展開するとしている。
チェイナリシスによれば、暗号資産犯罪者がAIを使って活動規模を拡大するなか、捜査側もAIを活用し、資金追跡や情報収集を効率化する必要があるという。
捜査ツールへの注目が高まるのも無理はない。暗号資産関連の被害は、なお巨額だ。
デフィラマによると、ハッカーらは4月だけで約6億3000万ドル、日本円にして約1008億円を盗み出した。これは、2025年2月以来、業界で最大の月間損失額となった。

