
暗号資産の冬でも「爆買い」止まらず コインベース系VCが半年で30社に投資、資金調達額は63%激減の異常事態
暗号資産市場が冷え込み、6月の資金調達額が約2274億円まで急減するなか、コインベース・ベンチャーズは2026年上半期だけで30件の投資を敢行。DeFi、決済、AIに巨額マネーが流れ込む一方、投資家の数はほぼ半減している。

暗号資産市場に「冬」が到来しても、金を出し続ける者はいる。
暗号資産取引所コインベースのコーポレート・ベンチャーキャピタル部門である「コインベース・ベンチャーズ」が、2026年上半期に暗号資産関連VCとして最多となる30件の投資案件を手がけたことが分かった。
データ集計サイトのクリプトランクによれば、2位はアニモカ・ブランズの19件。シリコンバレーの有力VC、アンドリーセン・ホロウィッツ(a16z)が18件で続き、ステーブルコイン最大手のテザーも15件の投資を実行した。
過去12カ月に対象を広げても、コインベース・ベンチャーズの勢いは際立っている。
同社の投資件数は、業界最多となる75件。アニモカ・ブランズが40件、旧バイナンス・ラボとして知られるYZiラボが39件、GSRが31件、a16zが30件で後を追った。

Top active investors and top categories by funding deals. Source: CryptoRank
資金調達額は2カ月で63%蒸発
ところが、業界全体を見渡せば景色は一変する。
暗号資産企業が6月に調達した資金は、わずか14億ドル(約2274億円)。4月の38億ドル(約6171億円)から、わずか2カ月で63%も減少した。
大型案件を連発する一部のVCとは裏腹に、市場全体では投資マネーが急速に細っているのだ。
資金調達ラウンドの件数も減少した。
5月には89件あったが、6月には61件まで落ち込んだ。ただし、4月には71件の資金調達で合計6億9800万ドル(約1134億円)と、暗号資産VC投資が過去2年間で最低の水準に沈んでいたため、金額ベースでは6月に若干持ち直した格好だ。
7月に入ってからは、これまでに12件の資金調達が実施され、合計**4億5600万ドル(約741億円)**が集まっている。
コインベースが狙う「決済」と「現実資産」
コインベース・ベンチャーズがこの半年間、どこに金を投じてきたのか。
その内訳を見ると、決済プロトコル関連の投資ラウンドが7件で最多だった。分散型金融(DeFi)関連が4件、インフラ関連と現実資産(RWA)のトークン化関連が、それぞれ3件となっている。
単なる暗号資産の売買ではなく、「実際に金を動かす仕組み」や「現実世界の資産をブロックチェーン上に載せる技術」に狙いを定めていることが分かる。
しかし、ここにも気になる数字がある。
暗号資産企業に投資した固有投資家数は、2025年10月の452から、2026年6月には242まで減少した。わずか8カ月で、投資家の顔ぶれがほぼ半分に縮小したことになる。
つまり現在の暗号資産VC市場では、誰も彼もが参入しているわけではない。体力のある一握りの投資家だけが、下落相場のなかで黙々と「仕込み」を続けているのだ。
DeFi、決済、AIにマネー集中
過去1年間でVC資金を最も引き寄せた分野は、DeFi、決済、人工知能(AI)だった。
DeFiプロトコルは216件の資金調達を実施。決済関連のスタートアップが131件、AIと暗号資産を組み合わせた企業が128件で続いた。

Crypto VC capital, invested by category, one-year chart. Source: CryptoRank
インフラ事業者の資金調達は110件。それ以外の分野は、いずれも100件未満にとどまっている。
投資対象が乱立していた時代は終わり、現在は「金融として使えるDeFi」「実需のある決済」「成長期待の大きいAI」という、分かりやすいテーマに資金が集中している。
米国から約9420億円、豪州から約5846億円
地域別では、過去6カ月間に米国を拠点とするVCから58億ドル(約9419億円)が投じられた。
オーストラリアを拠点とするVCからの投資額は36億ドル(約5846億円)。さらに、所在地が明らかにされていない投資家からは、116億ドル超(約1兆8838億円超)が投じられている。
市場全体の資金調達額は急減し、参加する投資家の数も減った。
それでもコインベース・ベンチャーズをはじめとする大手VCは、決済、DeFi、AI、RWAといった次の成長分野に資金を投入し続けている。
暗号資産市場が再び上昇局面を迎えたとき、笑うのは誰なのか。
答えは、誰もが怖がって金を引き揚げた今、ひそかに30件、75件と投資を積み重ねている者たちなのかもしれない。

