
日米「27年ぶり円買い介入」の裏でビットコインに追い風!? ベッセント財務長官の“隠れ本音”
1ドル=164円という40年ぶりの円安水準で発動された日米協調介入。だがその舞台裏では「円キャリートレード崩壊」という時限爆弾が静かにカウントダウンを刻んでいた——暗号資産市場を待ち受ける、なんとも皮肉な結末とは。

先週、金融市場に衝撃が走った。日本と米国が、実に1998年以来となる円買いの協調為替介入に踏み切ったのだ。きっかけは、1ドル=164円という約40年ぶりの円安水準への急落。ニューヨーク連邦準備銀行が米財務省の代理として市場に介入したが、その手口がまた一筋縄ではいかない。売ったのは「ドル」ではなく「ユーロ」。米財務省が保有する外貨準備の“隠し金庫”とも言える為替安定化基金(ESF)を使った、玄人好みの一手だった。
そして事件はここで終わらない。この協調介入の直後、米財務長官のスコット・ベッセント氏が妙に張り切って発信を始めたのだ。

USD/JPY one-day chart for Tuesday. Source: Cointelegraph/TradingView
ベッセント財務長官、日銀との“急接近”をアピール
ベッセント氏がまず持ち出したのが、8月末にノースカロライナ州で開かれるG20財務相会合。そこで日銀の植田和男総裁と会談する予定だと、わざわざ公にアピールしてみせた。
高市早苗首相のもとで日本経済は好調を維持しており、植田総裁率いる日銀も金融・財政の安定に強くコミットしている——そのうえで日米は「強固な関係と緊密な連携」を続けている、と持ち上げた。
ここで注目すべきは、日銀が数少ない「特権クラブ」の一員だという事実だ。日銀は、米連邦準備制度理事会(FRB)が外国当局向けに用意する「FIMAレポ制度」を利用できる立場にある。この制度を使えば、保有する米国債を売り払わずにドル資金を調達できる。日本は世界最大の米国債保有国であり、もし本当に米国債の売却を加速させれば、米国債利回りが急騰し、米政府・企業・個人すべての借入コストを押し上げかねない——というのが市場の警戒シナリオだった。
だからこそ、ベッセント氏は続く投稿でこう畳みかけた。「FIMAレポ制度は重要な安全網だ」「今後数カ月で規模を拡大するよう促したい」。そして日本が進める「円の著しい過小評価を是正する断固たる市場・金融措置」を強く支持すると表明したのだ。
タネを明かせば、FIMA制度の拡大とは、FRBが海外の金融当局に米国債を担保としてドル資金を融通する仕組みを強化するということ。結果として市場に出回るドルの量が増える——つまりグローバルな「ドル流動性」にとってはプラス材料というわけだ。
エラリアン氏「ワシントンは自分の手の届かない賭けに出た」
とはいえ、この協調プレーに諸手を挙げて拍手する声ばかりではない。著名エコノミストのモハメド・エラリアン氏は、米国がもはや日銀の一挙手一投足に運命を委ねる立場になったと指摘。今後の成否は米国自身の手中にはなく、日銀・財務省・首相官邸という東京側の足並みが揃うかどうかにかかっている、との見立てを示した。
暗号資産界隈でも、今回の円買い介入の長期的な影響を疑問視する声は根強い。皮肉なのは、こうした動きが結果的にビットコイン(BTC)強気派を後押ししかねないという点だ。
皮肉にも「円キャリー崩壊」がビットコインを押し上げる?
市場では以前から、日銀が長年続けてきた超低金利政策からの脱却に伴い、「円キャリートレード」がいずれ崩壊するとの見方が根強かった。円を安く借りて高利回り資産に投資するこの取引が、逆回転を始めるというシナリオだ。

Japan two-year bonds, one-day chart. Source: Cointelegraph/TradingView
背景にあるのは、日本自身の財政事情。政府支出の膨張が国債利回りを数十年ぶりの高水準に押し上げており、これが「安く円を借りる」という円キャリー取引の魅力を削いでいる。月曜日には日本の2年物国債利回りが1.57%を突破。これは、市場予想を先取りする形で低金利時代の終焉を告げるサインとも受け取れる。
日本の投資家たちが、この国内経済の地殻変動を見越して資金を自国に還流させ始めれば、円キャリートレードの巻き戻しにはさらに拍車がかかる——そしてその先で溢れ出す“行き場を失ったマネー”が、ビットコインをはじめとするリスク資産になだれ込む可能性がある、というのが一部の見立てだ。
日米協調介入という“表舞台”の裏で進行する、ドル流動性拡大とキャリートレード崩壊という“もう一つの物語”。その着地点が暗号資産市場にとって追い風となるのか、それとも新たな火種となるのか——目が離せない展開が続く。

