
ブラックロック、ステーブルコイン向け新ファンド2本を投入 米国債トコークン化で"準備資産"市場に本格参入
総資産約1300兆円を運用する世界最大の資産運用会社ブラックロックが、ステーブルコインの裏付け資産として使える米国債トークン化ファンドを2本発表した。今年施行された米国「GENIUS法」への対応を見据えた動きだ。

ウォール街の巨人が、またしても抜け目のない一手を打ってきた。
世界最大の資産運用会社ブラックロックが8月3日、暗号資産の「ステーブルコイン」を裏で支える"準備金"専用に設計されたトークン化マネー・マーケット商品を、なんと2本同時にローンチした。狙いは明白――ブロックチェーン上に規制対応の金融商品を送り込み、この分野の主導権をがっちり握ることだ。
その正体は「米国債の生き写し」
1本目は「ブラックロック・セレクト・トレジャリー・ベースド・リクイディティ・ファンド・オンチェーン・シェアーズ」、通称BSTBL。既存ファンドをイーサリアム上でトークン化した"分身"のような商品で、投資資格を持つ投資家は承認済みウォレット間でトークン化された持ち分を移転できる仕組みだ。中身は現金、短期米国債、そして米国債を担保にした翌日物レポ取引――つまり、超手堅い運用先ばかりを固めている。移転代理人およびトークン化提供者を務めるのは、名門金融機関のBNY。
2本目が「ブラックロック・デイリー・リインベストメント・ステーブルコイン・リザーブ・ビークル」、通称BRSRV。こちらは機関投資家向けに新規設立されたトークン化マネー・マーケット・ファンドで、複数のブロックチェーンに対応し、配当は毎日自動で再投資される念の入れよう。最初からステーブルコインの準備資産管理という"暗号資産のためだけ"の用途を見据えて設計されている。移転代理人とトークン化を担うのはセキュリタイズだ。
狙いは「GENIUS法」利権の先取り
ブラックロックいわく、この2本のファンドはいずれも、2025年7月に施行された米国の連邦ステーブルコイン法「GENIUS法」の下で、認可を受けた米国のステーブルコイン発行体が保有できる"適格準備資産"の要件を満たすよう設計されているという。
つまりこれは、単なる新商品のお披露目ではない。今後ステーブルコイン発行体が「何を裏付け資産に選ぶか」という一大市場において、真っ先に旗を立てておく――そんな抜け目のない布石なのだ。
すでに独走中の"元祖"トークン化ファンド
ブラックロックがこの分野で持つ切り札は、実はすでに存在する。トークン化された米国債ファンドとしては世界最大級の「USDインスティテューショナル・デジタル・リクイディティ・ファンド」、通称BUIDL(ビルド)だ。業界データによれば、その運用資産はすでに26億ドル超――日本円換算(1ドル=158円換算)でおよそ4,100億円にのぼる。
今回の新商品2本は、この"独走状態"にさらに追い打ちをかける格好となる。ステーブルコインという暗号資産の根幹インフラを、ブラックロックという一社がじわじわと握りつつある――そんな構図が、またひとつ濃くなった格好だ。

