
ザマ、USDC凍結騒動でコンプライアンス強化へ 裁判所命令による約20億円の凍結は解除
プライバシー重視のブロックチェーン・プロトコル「ザマ(Zama)」が、コンプライアンス体制の強化を急ぐことになった。

プライバシー重視のブロックチェーン・プロトコル「ザマ(Zama)」が、コンプライアンス体制の強化を急ぐことになった。
きっかけは、米裁判所の命令によって、同プロトコルの「cUSDC」スマートコントラクト内に保管されていた約1250万ドル、日本円にして約20億円相当のUSDCが一時凍結された一件である。
ザマ共同創業者のランド・ヒンディ氏は火曜日、Xへの投稿で、裁判所がこの一時凍結を解除したと明らかにした。そのうえで、ザマは予定通り、秘匿性を備えたUSDC商品のローンチを進めるという。
発端はザマとは無関係のプロジェクト「オーバーナイト・ファイナンス(Overnight Finance)」の関係者をめぐる係争だった。裁判所の一時的差し止め命令を受け、USDC発行元のサークル(Circle)が資金を凍結した。だが、ヒンディ氏によれば、ザマ自身はこの裁判の当事者ではなかったという。
ヒンディ氏はこう説明する。
「同じ裁判所が今回、凍結は不当だったと判断し、解除した」
同氏によれば、ザマのcUSDCコントラクトと、その裏付けとなるすべてのUSDCは、すでに通常運用に戻っている。
この一件は、プライバシーを重視するブロックチェーン基盤と、発行体が裁判所命令に基づいて資産を凍結できる中央集権型ステーブルコインとの緊張関係を、改めて浮き彫りにした。
ヒンディ氏は、今回の問題について「凍結可能な資産を保有するどんなプロトコルにも起こり得た」と指摘する。対象は分散型取引所、レンディング・プロトコル、ブリッジなどにも及ぶという。
実際、サークルがザマ関連のUSDCを凍結した件については、約1260万ドル、日本円で約20億1600万円相当が対象になったと報じられている。

Zama USDC freeze lifted. Source: Rand Hindi
「巻き添え凍結」の恐怖
ヒンディ氏によれば、約1250万ドル、日本円で約20億円相当のUSDCは、5月11日にザマの秘匿型USDCラッパーへ預け入れられた。
その後、この入金アドレスが、オーバーナイト・ファイナンスをめぐる訴訟と一時的差し止め命令の対象になったという。
問題は、その入金分がコントラクト内で秘匿化されていた総額の99%超を占めていたことだ。原告側は、サークルを通じてコントラクト全体を包括的に凍結する命令を求めた、とヒンディ氏は説明する。
ザマの最高執行責任者、ジェレミー・ブラッドリー氏はコインテレグラフに対し、裁判所は最終的に、スマートコントラクトのプール全体を凍結することは、無関係のユーザーに過度な損害を与えると判断したと述べた。
ザマ側は、自社プロトコルについて、送金者と受取人のアドレスは可視化されたまま、残高と金額のみを暗号化する設計だと説明した。そのため、問題となったアカウントだけを切り分け、他のユーザーに影響を与えずに直接凍結できることを示したという。
ブラッドリー氏は、今回の事例について、中央集権型ステーブルコインをプール型コントラクトで保有するプロトコルに共通するリスクを示したものだと語る。
「自動マーケットメーカー、レンディング・プロトコル、ブリッジ、そしてUSDCをプール型コントラクトで保有する者は誰でも、裁判所命令ひとつで同じ状況に陥り得る」
分散型金融の世界で、コードは自律的に動く。だが、裏付け資産がUSDCである限り、最後の鍵を握るのは、発行体と裁判所なのである。
ザマ、コンプライアンス計画を前倒し
ザマは今回の事態を受け、コンプライアンス計画を前倒しする方針だ。
具体的には、裏付け資産の発行体が実施したコンプライアンス上の措置を、ザマ側でも自動的に反映する仕組みを導入する。
たとえば、サークルがあるUSDCアドレスを凍結した場合、そのアドレスが保有する秘匿型USDCも連動して凍結される、という設計だ。
さらにザマは、コンプライアンス評議会の設置や、追加のコンプライアンス・ツール、取引監視ツールの統合も進める。
ブラッドリー氏は、これらの措置について、戦略転換ではなく、もともと存在していたロードマップの前倒しだと説明する。
「われわれは最初から、プログラム可能なコンプライアンスを念頭に置いてプロトコルを設計してきた」
同氏は、今回の騒動によって、そうしたツールを導入する緊急性が高まったとしたうえで、法的要請に対応できるプロトコルであることを示せれば、機関投資家にとっても安心材料になると述べた。
それでもUSDCで進む理由
騒動にもかかわらず、ヒンディ氏は、ザマがUSDC上での開発を続ける姿勢を崩していないと強調する。
ザマは今月後半にもcUSDC商品のローンチを予定しており、自社の財務資金から500万ドル、日本円で約8億円相当のUSDCを秘匿化する計画だ。
ブラッドリー氏によれば、今回の出来事は、機関投資家の関心を冷ますどころか、むしろ強めたという。
理由は単純だ。裁判所が凍結を解除したことで、ザマのプロトコルが、プライバシー機能を維持しながらも既存の法制度の中で運用できることが示されたからである。
同氏はまた、サークルは裁判所命令に従って行動したにすぎないと付け加えた。より大きな問題は、スマートコントラクトのプール全体を巻き添えにせず、特定の対象だけを凍結するための実務的なツールが不足している点にある、という。
プライバシーを守るのか。法令順守を優先するのか。
暗号資産業界が長年抱えてきたこの問いは、ザマの一件で、またひとつ現実の問題として突きつけられた。
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