
AIが匿名投稿を特定 イーサリアム創設者ブテリン氏の“思考の癖”まで見抜く
イーサリアム共同創業者は、AIが自らの“知的な癖”を見抜いたと認めた。匿名で行った投稿者を特定せよ――2週間にわたる公開チャレンジは、こうして幕を閉じた。

イーサリアム共同創業者のヴィタリック・ブテリン氏が、コーインベストCEOのフランクリン・ワン氏によるAI支援分析について、自身が匿名で関与したイーサリアム提案を正しく特定していたと認めた。
この“身元割り出し”は、ブテリン氏が「現在のAIツールはオンライン上の匿名性を暴けるのか」と公に問いかけてから、わずか2週間後のことだった。
ワン氏の提出した“勝利答案”は、EIP-7503の匿名の書き直し文書について、数学的・技術的な概念の説明の仕方を分析することで、ブテリン氏の関与を突き止めたものだった。
「その文書は、彼が中国語で書き、機械翻訳にかけることで隠していた、EIP-7503の匿名の書き直しだった」
ブテリン氏が結果を認めた後、ワン氏は月曜日のX投稿でそう明かした。
「決め手は言葉づかいではなかった。彼の“思考の筋道”だったのだ」

Vitalik Buterin's June 22 post challenging viewers to discover his anonymous writing. Source: Vitalik Buterin
暗号資産業界では、ビットコイン創設者サトシ・ナカモトをはじめ、正体を隠すために偽名やペンネームを使ってきた重要人物が少なくない。だが、もしAIが“推論の癖”から著者を高精度で見抜けるようになれば、オープンソースのブロックチェーン・コミュニティにおいて、匿名で技術的貢献を続けることは今後いっそう難しくなる――そう見る分析者もいる。
ブテリン氏が仕掛けた「AI匿名剥がし」実験
今年2月、スイス連邦工科大学チューリッヒ校(ETHチューリッヒ)とアンソロピックの研究者らは、ある論文で、大規模言語モデルによってオンライン上の匿名解除、いわゆる“身元特定”が大規模に実用化されつつあると主張していた。
その研究によれば、AIは構造化されていない文章から身元に関わる情報を抽出し、候補者を探し出し、もっとも可能性の高い人物を推論することで、従来型の匿名解除手法を上回る結果を出したという。
この流れを受け、ブテリン氏は6月22日、こう投稿した。
「最近、AIによる文章分析によってオンライン上の匿名性は維持できなくなる、という主張が出ている。ならば、自分自身の匿名性を少し切り売りして、実験してみよう」
ブテリン氏は、過去10年のどこかの時点で、イーサリアムにとって「中程度に重要」な文書を、別名義で公開していたと告白した。
そして、短くこう挑発した。
「見つけてみろ」
ワン氏によれば、コーインベストは2024年12月に公開されたEIP-7503の匿名の書き直し文書について、ブテリン氏を最有力の著者候補と判定した。確信度はおよそ20%。分析対象となった27文書の中で、次点候補の約10倍にあたるスコアだったという。
その後、ブテリン氏は、自身がその匿名の書き直し文書を中国語で執筆し、Qwen 2.5を使って英語に翻訳したうえで、さらに手作業で訳文を修正していたことを明かした。つまり、自分の文体を隠すための“偽装工作”を施していたのである。
だが、その目論見は破られた。
「彼のAIが拾い上げた文体上の手がかりは、知的習慣や、数学・アルゴリズムを説明する際のスタイルだった。これは、私の偽装戦略を完全にすり抜けていた。私が隠そうとしたのは、あくまで文章表現だけだったからだ」
ブテリン氏はそう書いている。
ライトCEOのウラジーミル・ノヴァコフスキー氏も月曜日、2023年にワン氏とともにGPT-4を使い、暗号学研究における文体の一致からビットコイン創設者サトシ・ナカモトの正体を特定しようとするプロジェクトに取り組んでいたと明かした。
ただし、その試みでは高い確信度のある結果は得られなかったという。
ノヴァコフスキー氏によれば、ワン氏はその後、同様のアプローチをブテリン氏の匿名性チャレンジに応用したという。

