
SEC、暗号資産の新規制案を公表 最大120億円のトークン発行を容認へ
米議会で暗号資産市場のルールを定める「CLARITY法案」が足踏みするなか、SECが独自の規制案を打ち出した。企業には最大7500万ドル(約120億円)のトークン発行を認める一方、財務情報の開示と継続報告を求める。だが、将来の政権による“ちゃぶ台返し”を防ぐには、なお議会による法制化が欠かせない。

米議会が答えを出せないなら、規制当局が先に動く――。
米証券取引委員会(SEC)は、暗号資産業界を大きく左右しかねない新たな規則案を公表した。議会が暗号資産市場構造法案を成立させられないまま、約1カ月の休会に入った直後のことだった。
SECは火曜日の発表で、「暗号資産に関わる特定の投資契約について、明確かつ目的にかなった枠組み」を整備するための規則案を提示したと説明した。
SECによれば、暗号資産向けに設計された「証券募集制度」によって、投資家保護を維持しながら、企業などが資金を調達できるようになるという。
一方、今回の規則案には、暗号資産を基盤とする株式などを対象とした「イノベーション免除措置」は盛り込まれなかった。この措置についても、同時に発表されるとの見方が出ていた。
注目すべきは、そのタイミングだ。
SECが規則案を発表したのは、米上院が「デジタル資産市場明確化法案」、いわゆるCLARITY法案の審議を前進させられなかった数日後だった。同法案は、暗号資産の監督・規制をめぐり、SECや商品先物取引委員会(CFTC)など連邦機関の役割分担を明確にすることを目指している。
SECのポール・アトキンス委員長は声明で、こうクギを刺した。
「将来を見据えた、長く持続する市場ルールを実現するには、法律が不可欠だ。いま進めている取り組みが、将来の暴走した規制当局によって覆されないようにしなければならない」
さらに、こう続けた。
「SECはこれまでも、そして今後も、CLARITY法案をトランプ大統領の机まで届けるため、議会を支援していく」
最大120億円のトークン発行を容認
規則案によると、暗号資産企業には一定の適用除外が設けられる。
具体的には、4年間で最大500万ドル(約8億円)、または12カ月間で最大7500万ドル(約120億円)のトークン発行が認められる見通しだ。
さらに、一定の条件を満たす暗号資産について、「投資契約」として扱わないセーフハーバーも設けられる。
ただし、野放しというわけではない。トークンの発行者には財務諸表の開示が求められ、発行後も継続的な報告義務を負うことになる。
規則案が官報に掲載された後、一般から60日間にわたって意見を募集する。
議会を横目に、SECとCFTCが動く
議会による法律が成立しないなかでSECが規則案を出した。その直後の木曜日には、CFTCも暗号資産、人工知能(AI)、予測市場をテーマとする会合を予定している。
CFTCは、今後成立する可能性のある議会法制を補完できる規制分野について、対応を検討すると説明している。
アトキンス氏は火曜日、ワイオミング・ブロックチェーン・シンポジウムで講演する予定だった。しかし、SECによる規則案の発表を受けて、登壇を取りやめた。
同シンポジウムでは、ホワイトハウスの暗号資産担当顧問パトリック・ウィット氏が、議会がCLARITY法案を前進させられない場合、米規制当局は暗号資産規制を「一気に動かすことになる」と語った。
CLARITY法案、新議会発足までに成立するのか
上院が8月の州内活動期間に入る前、共和党のジョン・スーン上院院内総務は、議員が9月中旬に戻り次第、CLARITY法案の審議を始めるための動議について、討論終結手続きを申し立てた。
しかし、残された時間は決して多くない。
8月休会後、上院が開かれるのは、11月の選挙に向けて再び休会するまでわずか14日間だ。
スーン氏と共和党議員がそれまでに本会議での採決へ持ち込めなければ、2027年の新議会発足までに残される会期は、さらに22日間しかない。
SECが先に道を描き、CFTCも動き始めた。だが、規制当局が作ったルールは、次の政権によって書き換えられる可能性がある。
暗号資産市場のルールを本当に固定できるのか。その答えは結局、休会明けの米議会に委ねられている。

