
仏半導体会社、暗号資産財務戦略を撤回 ビットコイン保有分を売却へ
Sequans Communicationsがデジタル資産の財務戦略を採用すると発表してから1年で、ビットコインの価格は30%以上下落した。

フランスの半導体企業が、鳴り物入りで始めた“ビットコイン財務戦略”から、わずか1年足らずで撤退することがわかった。
対象となるのは、IoT向け半導体を手がける仏シークアンス・コミュニケーションズ。同社は28日の発表で、デジタル資産を財務資産として保有する戦略について「もはや追求しない」と表明した。現在保有する658BTCについても、今後、時間をかけて売却していく方針だという。
発表時点で同社のビットコイン保有額は約4800万ドル。日本円にしておよそ76億円にのぼる。しかも同社は、このビットコインについて「担保などの制約はなく、完全に自由に処分できる資産」と説明している。つまり、売ろうと思えば売れる状態にある、というわけだ。
株価は75%超下落 それでも発表後は一時急騰
皮肉なことに、市場はこの“撤退宣言”を好感した。
ニューヨーク証券取引所に上場する同社株は、発表後の朝方取引で14.5%超上昇した。もっとも、昨年6月以降で株価はすでに75%以上も下落している。暗号資産に社運を賭けるような財務戦略は、少なくとも投資家から長く歓迎され続けたわけではなかったようだ。
同社は2025年6月、ビットコインを財務資産として保有する戦略を開始。その翌月には、転換社債も発行していた。しかし今回、一部のBTCを売却して得た資金で、2025年7月発行の転換社債を全額償還したと明らかにした。
ジョルジュ・カラムCEOは今回の発表で、「IoT半導体事業の拡大に全面的に注力する」とコメント。かつて語っていた暗号資産投資の拡大については、沈黙した。

Source: Sequans
かつては「ビットコインは魅力的な長期投資」と絶賛
だが、振り返れば同社の言葉はずいぶん勇ましかった。
シークアンスは約1年前、株式と転換担保社債の発行で3億8400万ドル、約612億円を調達すると発表していた。米Investopediaによると、その資金は主にビットコイン購入に充てる計画だった。カラムCEOは当時、ビットコインについて「財務の強靱性を高め、長期的な株主価値を生み出す」と強調していた。
ところが、その後の相場は冷たかった。
同社が戦略を始めた時点で10万5419ドルだったビットコイン価格は、足元で7万2780ドルまで下落。日本円では約1679万円から約1159万円へ、30%超の値下がりとなった。
「最上級の資産」「魅力的な長期投資」と持ち上げていたビットコインは、結果として同社に重い含み損と戦略転換を迫る存在になった格好だ。
欧州の“ビットコイン財務企業”は40社に
今回の撤退で、欧州の上場企業のうちビットコインなど暗号資産を財務資産として保有する企業は40社に減る。米国では、同様の企業が67社あるという。
代表格は、マイケル・セイラー氏率いる米ストラテジーだ。同社は5月18日、20億ドル、約3186億円相当のビットコイン購入を発表し、保有量を84万3738BTCまで増やした。
一方、フランスでは別のビットコイン財務企業Capital Bが、先週1500万ドル超、約24億円相当のBTCを追加購入したばかりだ。これにより保有量は3135BTCとなったが、同社株はその後16%超下落している。
暗号資産を“企業価値向上の切り札”として掲げた企業群に、市場の目は次第に厳しくなっている。米紙フィナンシャル・タイムズも、デジタル資産財務戦略を採用した企業の株価下落や、資産売却による債務返済の動きを報じている。
一時は「ビットコインを買えば株価も上がる」ともてはやされた財務戦略。しかし相場が逆回転すれば、企業は本業回帰を迫られる。
シークアンスの撤退は、そんな暗号資産ブームの“宴のあと”を象徴する動きといえそうだ。

Source: Yahoo! Finance
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