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Zoltan Vardaistaff writerBryan O'Shea監修staff editor

ロシア発「制裁逃れステーブルコイン」、西側の包囲網あざ笑い躍進——黒幕は逃亡中の親ロ・オリガルヒ

最新ニュース公開日Jun 4, 2026

ブロックチェーン・セキュリティ企業サーティック(CertiK)の調査で、ロシア・ルーブルを裏付けとするステーブルコイン「A7A5」が、累計1100億ドル(約17兆6000億円)超のオンチェーン取引を処理していたことが明らかになった。

西側諸国が束になって金融制裁を浴びせても、その流れは止まらなかった。それどころか、勢いを増していた。

ブロックチェーン・セキュリティ企業サーティック(CertiK)の調査で、ロシア・ルーブルを裏付けとするステーブルコイン「A7A5」が、累計1100億ドル(約17兆6000億円)超のオンチェーン取引を処理していたことが明らかになった。西側の金融制裁をものともせず、堂々と流通し続けているというのだ。

サーティックによれば、A7A5は米ドル以外のステーブルコイン市場でおよそ43%のシェアを掌握。保有者数も2025年2月から2026年5月までの間に、1万3000から2万9000ウォレットへと倍以上に膨れ上がった。同社はこれを「制裁逃れのステーブルコイン経済圏として最も分かりやすい実例の一つ」とし、ロシア企業群との結びつきを指摘している。

EUの制裁が効かない

この成長ぶりは、ブロックチェーン上の決済システムに対する西側制裁の限界を浮き彫りにする。欧州連合(EU)は2025年10月23日に第19次制裁パッケージを採択し、11月12日からA7A5に絡む取引を禁じた。だが、サーティックいわく、準備資産の構造そのものが、西側の執行が直接及ばない場所に主要資産を置いているのだという。

A7A5 cumulative activity, all-time chart. Source: CertiK

サーティックのオシント(OSINT)・ブロックチェーン情報分析官ジョナサン・リス氏が解き明かす、その巧妙な仕掛けはこうだ。

第一に、A7A5には中央集権的な「キル・スイッチ(緊急停止装置)」が存在しない。ウォレットや資金の凍結を司るスマートコントラクトは、ロシアとキルギスの開発者が完全に握っている。第二に、準備資産は中央アジア——とりわけキルギスとロシアの銀行網——に置かれ、西側制裁の手が届かない。第三に、中央集権的な取引所に凍結されぬよう、カーブ(Curve)やユニスワップ(Uniswap)といった分散型金融(DeFi)の流動性プールを通じた分散型の流通モデルに頼っている。

「西側の規制当局は、イーサリアムやトロンのブロックチェーンを直接書き換えてA7A5を消し去ることはできない」とリス氏は語る。EUの第19次パッケージや米英の並行措置は、あくまで物理的・デジタル的な「関門」を狙い撃ちするにとどまる、というわけだ。開発者たちは、かつて使っていたテザー(USDT)が制裁で機能不全に陥った苦い経験から、この「三つの免疫」を周到に組み込んだとされる。

黒幕は懲役15年の逃亡オリガルヒ

A7A5の出自をたどると、きな臭い人脈が浮かび上がる。発行は2025年1月、キルギスの企業オールド・ベクター(Old Vector LLC)。ロシアの国際決済企業A7 LLCの代理として動いた格好だ。そのA7は、モルドバ・ロシア系のオリガルヒ(新興財閥)イラン・ショル氏と、ロシア国営の防衛部門向け金融機関プロムスビャージバンクが共同保有している。ロシア当局はその後、A7A5を自国のデジタル金融資産の枠組みで正式に認定した。

取引の多くは「グリネックス(Grinex)」という取引所を経由している。これは、かつてコンティ、ブラック・バスタ、ロックビットといったランサムウェア集団や、北朝鮮系とされる不正資金のマネーロンダリングの場として機能していた「ガランテックス(Garantex)」の後継だ。2023年2月には、2022年のホライズン・ブリッジ・ハッキングで盗まれた3000万ドル(約48億円)もガランテックスへ流れ込んでいた。米シークレットサービスは2025年3月にガランテックスのドメインを差し押さえ、テザーはガランテックス支配下のウォレットが保有する約2800万ドル(約44億8000万円)分のUSDTを凍結している。

A7A5 network chart. Source: CertiK

そして筆頭株主のショル氏(A7の51%を保有)は、筋金入りの「お尋ね者」である。2017年までモルドバの国会議員を務めたが、2014年にモルドバの3行から約10億ドル(約1600億円)を盗み出した事件に関与したとして有罪判決を受けた。2019年にモルドバから逃亡してロシア国籍を取得、2023年には欠席裁判で禁錮15年を言い渡された。現在の住まいは——モスクワである。

制裁の包囲網は、ブロックチェーンの前にぽっかりと穴を開けられたかたちだ。

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