米証券取引委員会(SEC)が、ブロックチェーン企業Paxosに“お墨付き”を与えた。
ブロックチェーン基盤の提供やステーブルコイン発行を手がけるPaxosは、子会社のPaxos Securities Settlement Company(PSSC)がSECから清算機関としての登録を認められたと発表した。Paxosによれば、ブロックチェーンを前提に設計された企業が、米国で清算・決済サービスを担う登録清算機関として承認されるのは初めてだという。Paxosの発表でも、PSSCは「米国で中央証券保管機関として清算・決済サービスを提供できる、唯一のブロックチェーン・ネイティブ企業」と説明されている。
清算機関とは、株式などの売買が正しく成立し、資金と証券がきちんと受け渡されるよう管理する金融市場の裏方である。投資家同士が直接やりとりしているように見えても、実際には取引内容の確認、買い手と売り手の照合、資金と証券の決済を担う存在が不可欠だ。
今回の承認は、その重要な市場インフラにブロックチェーン企業が正式に入り込むことを意味する。
Paxosは、今回の承認について「ブロックチェーン技術と従来型の資本市場が融合する中で、金融市場インフラの重要な一部になる」としている。
2019年から始まっていた“実証実験”
PaxosとSECの関係は、今回突然始まったものではない。
2019年10月、SECはPaxosに対し、米国株式を対象としたブロックチェーン決済サービスの実証を認めるノーアクション・レターを出した。これを受け、Paxosは2020年2月から同サービスを開始した。
Paxosによれば、この実証では、ブロックチェーンを使った取引後処理インフラが、完全に規制された枠組みの中でも、同日決済、コスト削減、業務効率化を実現し得ることを示したという。
共同創業者で最高経営責任者(CEO)のチャールズ・カスカリラ氏は、こう胸を張る。
「今回の清算機関登録は、2019年のノーアクション・レターに始まり、世界最大級かつ最も洗練された金融機関の一部とともに実施した決済実証を含む、SECとの7年にわたる取り組みの成果だ」
かつてはSECから“警告”も
ただし、Paxosの歩みは順風満帆だったわけではない。
同社はPayPal USD(PYUSD)、Global Dollar(USDG)、Pax Gold(PAXG)など、複数のステーブルコインやデジタル資産を発行している。一方で、ゲーリー・ゲンスラー前委員長時代のSECとは、厳しい局面も経験している。
2023年には、暗号資産交換業者Binanceに関連するステーブルコイン「Binance USD(BUSD)」の発行をめぐり、SECからウェルズ通知を受けた。これは、SECが将来的な執行措置を勧告する可能性があることを事前に知らせる通知だ。SECはBUSDを未登録証券とみなしていた。
ほぼ同時期に、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)もPaxosに対し、BUSDの新規発行停止を命じた。
その後、SECは2024年に調査を終了し、正式に執行措置を追求しないと通知した。だがPaxosは2025年8月、BinanceおよびBUSDをめぐるコンプライアンス問題について、NYDFSと4,850万ドルの和解に達している。日本円では約77億2,600万円に相当する。
「暗号資産企業」から「市場インフラ企業」へ
今回の承認が注目されるのは、単にPaxosという一企業の勝利にとどまらないからだ。
これまで暗号資産関連企業は、既存の金融市場から見れば“外側”の存在とみなされることが多かった。だがSECに登録された清算機関となれば、話は変わる。銀行や証券会社が暗号資産ベースのインフラを構築する際、Paxosのような事業者を使いやすくなる可能性がある。
ブロックチェーンは、暗号資産の売買だけでなく、株式や債券など従来型資産の決済インフラにも入り込もうとしている。
かつてSECから警告を受けたPaxosが、今度はSECの承認を得て、米金融市場の中枢に近づく。
暗号資産業界にとっては、規制当局との長い攻防の末に得た、ひとつの転換点と言えそうだ。

