
トランプ氏の「暗号資産2273億円利益」が大炎上! 米CLARITY法案が“倫理問題”で潰れかけている
米国の暗号資産市場に明確なルールを設けるはずの「CLARITY法案」が、成立目前で思わぬ壁にぶつかった。火種となったのは、トランプ大統領が暗号資産事業で稼いだ約2273億円と、政治家の利益相反をめぐる問題だ。業界団体トップは「倫理はわれわれの問題ではない」と訴えるが、民主党は一歩も引く気配を見せていない。

米国の暗号資産業界が待ち望んできた大型法案が、最後の最後で「倫理」という巨大な地雷を踏み抜こうとしている。
ブロックチェーン・アソシエーションのサマー・マーシンガーCEOは16日、米ワシントンで開かれた「インジェクティブ・サミット」に登壇し、暗号資産市場構造法案の上院採決が、早ければ来週にも行われる可能性があるとの見方を示した。
ただし、残された時間は少ない。米議会は8月に地元での活動期間、いわゆる夏季休会に入る。法案を前進させるなら、その前に議員同士の折り合いをつけなければならない。
問題の法案は「デジタル資産市場明確化法案」、通称「CLARITY法案」だ。米国で暗号資産を誰が、どのようなルールで監督するのかを明確にしようとするもので、業界にとっては今後の命運を左右する重要法案といえる。
マーシンガー氏によれば、法案の文言には「まだ細かな調整事項がいくつか残っている」ものの、主要部分については「合意に非常に近づいている」という。
ところが、最後まで決着していないのが、政治家と暗号資産の関係をめぐる「倫理規定」だった。

Summer Mersinger speaking at Injective Summit on Thursday. Source: Injective
「部屋の中の象」はトランプ氏の暗号資産ビジネス
マーシンガー氏は、法案をめぐる最大の問題について、こう語った。
「倫理問題は、部屋の中にいる大きな象です。どの議員事務所からも『倫理問題を何とかしなければならない』と言われています」
「部屋の中の象」とは、誰もが問題の存在を認識しながら、触れることを避けている重大な問題を指す表現だ。
その“象”の正体は、ドナルド・トランプ大統領と暗号資産業界の、あまりにも深い金銭的な結びつきである。
トランプ氏は6月、自身のミームコインや、一族が関与する暗号資産事業「ワールド・リバティ・ファイナンシャル」などから、合計14億ドルを得たと開示した。1ドル=162.39円で換算すると、約2273億円に上る。
暗号資産事業で巨額の利益を得ている大統領が、暗号資産業界のルール作りにも影響を及ぼす――。
民主党議員から見れば、これほど分かりやすい利益相反の構図はない。
ホワイトハウスでは16日、トランプ氏と共和党上院議員らがCLARITY法案について協議する予定となっていた。焦点の一つには、当然ながらトランプ氏自身と暗号資産業界との関係も含まれるとみられている。前日の15日には、民主党上院議員らも法案をめぐる会合を開いていた。
「倫理は政治家の問題。法案を殺さないで」
しかし、暗号資産業界側からすれば、政治家同士の倫理論争によって、これまで積み上げてきた規制整備の努力を台無しにされてはたまらない。
マーシンガー氏は、業界の本音を隠さなかった。
「倫理についてどのような結論を出すかは、正直に言って、われわれの関心事ではありません。それは政治の問題であり、議会や選挙で選ばれた公職者の問題です」
そのうえで、こう訴えた。
「どうか倫理問題によって、法案の残りの部分に注ぎ込んできたすべての努力を潰さないでください」
要するに、「政治家の金の問題は、政治家同士で勝手に片付けてくれ。ただし、暗号資産の規制法案まで道連れにするな」というわけだ。
マーシンガー氏は、米商品先物取引委員会(CFTC)の元委員でもある。2025年にCFTCを離れ、暗号資産業界の主要ロビー団体であるブロックチェーン・アソシエーションのCEOに就任した。
同団体は、CLARITY法案が上院銀行委員会と農業委員会を通過する過程で、議員らとの協議に深く関与してきた。
民主党「倫理規定なしなら賛成しない」
CLARITY法案が成立するためには、共和党だけでなく、民主党議員からも一定数の賛成票を取り付ける必要がある。
共和党は上院でわずかな多数を握っているものの、法案を前進させるには複数の民主党議員の協力が欠かせない。
しかし、民主党側の態度は硬い。
14日には民主党上院議員3人が記者会見を開き、明確な倫理規定が盛り込まれない限り、暗号資産市場構造法案を支持しないと表明した。
議員らはトランプ氏の財務情報を問題視し、大統領や議員が、自ら利益を得る可能性のある暗号資産政策を決定すれば、汚職につながりかねないと警告している。
採決実現の確率は75.1%に急上昇
議会内で激しい駆け引きが続く一方、市場は法案の行方を比較的楽観視しているようだ。
予測市場カルシでは、CLARITY法案が8月の休会前に上院本会議の採決にかけられる確率が、記事掲載時点で75.1%に達していた。
7月10日時点の47%から、わずか数日で大幅に上昇したことになる。
暗号資産業界が長年求めてきた「明確なルール」は、ようやく成立目前までたどり着いた。
だが、その最後の関門に立ちはだかったのは、技術的な問題でも、金融当局の縄張り争いでもない。
大統領や議員が暗号資産で金を稼ぎながら、その暗号資産を規制する法律を作ってよいのか――という、あまりにも基本的な問題だった。
トランプ氏の約2273億円に上る暗号資産関連収入をめぐる疑念を払拭できなければ、CLARITY法案は「市場を明確にする法律」になる前に、政治家と暗号資産の不透明な関係を浮き彫りにするだけの法案となりかねない。

