
トランプ一族の暗号資産会社が「銀行」に? 米OCCがワールド・リバティを条件付き承認、議会は利益相反を猛批判
トランプ米大統領と3人の息子が関わるワールド・リバティ・フィナンシャルが、米銀行監督当局からナショナル・トラスト・バンク設立の条件付き承認を得た。ドル連動型ステーブルコイン「USD1」の発行や暗号資産の保管を自前で手掛ける道が開く一方、米議会ではトランプ一族の利益相反や、アラブ首長国連邦(UAE)資本との関係を巡る追及が激しさを増している。

トランプ一族の暗号資産ビジネスが、ついに「銀行」の看板を手に入れようとしている。
米通貨監督庁(OCC)は8月14日、ワールド・リバティ・フィナンシャルによるナショナル・トラスト・バンク設立申請を条件付きで承認した。多くの議員から利益相反を疑う声が上がるなかでの決定だ。
OCCが公表した承認文書によると、同社は今後、一定の規制・政策上の要件を満たせば、「ワールド・リバティ・トラスト・カンパニー・ナショナル・アソシエーション」の名称で事業を行えるようになる。
申請書では、米ドルを裏付け資産とするステーブルコインの発行に加え、同社のステーブルコイン「USD1」に関連する暗号資産のカストディ(保管・管理)業務を手掛ける計画を示していた。
大統領一家が株式38%を支配
だが、この承認には拭いきれない疑問がつきまとう。
ワールド・リバティには、ドナルド・トランプ大統領本人と3人の息子が関係している。さらに同社ウェブサイトによると、トランプ一族の関連法人が同社の持分の38%を支配している。
一方、承認を出したOCCのトップ、ジョナサン・グールド通貨監督官を指名したのも、ほかならぬトランプ大統領だ。つまり、大統領一家が経済的利益を持つ企業の銀行申請を、大統領が指名した規制当局トップが審査するという構図である。
OCCは疑惑を意識したのか、今回の審査について次のように強調した。
「通貨監督官および職員は、この申請に関し、法定の職務および倫理上の義務に従って行動した」
グールド氏も以前、エリザベス・ウォーレン上院議員から書簡を受け取った際、申請は「政治的立場や党派に左右されないプロセス」で審査すると説明していた。
ウォーレン議員「前代未聞の腐敗だ」
もちろん、これで疑惑が収まったわけではない。
ウォーレン議員は承認当日の14日、OCCの決定について「米国の金融システムが目にしたなかで、最もあからさまな自己利益の追求だ」と痛烈に批判した。
さらに同氏は、こうした「前代未聞の腐敗」を阻止するとして、ほかの上院議員9人とともに「銀行分野における大統領腐敗終結法案」を提出した。法案は、大統領やその家族が利害関係を持つ企業に対し、銀行監督当局が認可を与える行為などを制限する狙いがある。
トランプ政権下で暗号資産企業の「銀行化」が加速
トランプ政権とグールド氏の下で、OCCは米国内でのサービス拡大を目指す暗号資産企業に対し、ナショナル・トラスト・バンクの認可や条件付き承認を相次いで出してきた。
米議会でステーブルコイン規制法「GENIUS法」が成立した後、サークルやリップル・ラボ、クリプト・ドットコム、コインベースなどの申請が順次承認されている。
もっとも、ナショナル・トラスト・バンクは一般的な商業銀行とは異なる。通常の預金受け入れや融資を中心とする銀行ではなく、主に資産の保管や信託、決済関連業務を行う。ただ、連邦政府の監督下でステーブルコインの発行と準備資産の管理を一体化できる点は、ワールド・リバティにとって大きな意味を持つ。
5億ドルで株式49%――浮上するUAEとの関係
議会が問題視しているのは、トランプ一族との関係だけではない。ワールド・リバティと外国勢力との結びつきが、米国の政策判断に影響を与えているのではないかという疑惑もある。
報道によると、UAEの国家安全保障顧問を務めるシェイク・タフヌーン・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン氏の支援を受けたアブダビの投資会社は、2025年1月、ワールド・リバティの株式49%を5億ドル(約795億円)で取得したという。
さらに別のUAE系企業であるMGXは、暗号資産取引所バイナンスへの20億ドル(約3180億円)の投資に、ワールド・リバティのステーブルコイン「USD1」を使用した。
その後、トランプ大統領はバイナンスの元最高経営責任者(CEO)、チャンポン・ジャオ氏に大統領恩赦を与えている。
巨額投資、トランプ一族の事業、そして大統領恩赦――これらに因果関係があると確認されたわけではない。だが、米議会が「単なる偶然なのか」と追及を続けるのも無理はない。
ホワイトハウスの報道官は、トランプ氏の投資を巡って「利益相反は存在しない」と繰り返し説明している。
それでも、大統領一家が深く関わる暗号資産企業に、大統領が指名した規制当局トップが銀行設立への道を開いたという事実は残る。条件付き承認は、疑惑の終着点ではない。むしろ本格的な追及の号砲となりそうだ。

