
ビットコインを担保に162億円を調達?ニューハンプシャー州の“暗号資産債”に米国がざわつく
暗号資産を担保とするこの債券案は、ニューハンプシャー州のケリー・エイヨット知事と、5人からなる州執行評議会の承認を得て、初めて実現に向けて動き出す。

ニューハンプシャー州務長官室は、ビットコイン(BTC)を担保とする1億ドル(約162億円)規模の債券発行について、州議会関係者が公聴会で協議すると発表した。
ニューハンプシャー州知事および執行評議会の議題更新によれば、同州の事業金融庁(BFA)は水曜日、ビットコイン担保債の発行案をめぐる会合を予定している。BFAは2025年11月にこの債券を承認しており、ケリー・エイヨット州知事と5人で構成される州執行評議会の承認を得たうえで、発行に踏み切る方針を示していた。
エイヨット知事はBFA承認後、この債券についてこう述べている。
「これは、州の資金や納税者の税金を危険にさらすことなく、より多くの投資機会を州にもたらし、ニューハンプシャーをデジタル金融のリーダーとして位置づける革新的な手法です」
高額のビットコイン担保債が実現すれば、同州がデジタル資産に寛容な政策へ舵を切っていることを改めて示すことになる。ニューハンプシャー州は2025年5月、戦略的ビットコイン準備金を創設する法律を全米で初めて承認した州でもある。この法律により、州政府は時価総額が5000億ドル(約81兆2350億円)を超えるデジタル資産に、公的資金の5%まで投資することが可能になった。

New Hampshire governor signing the May 2025 crypto reserve bill into law. Source: Kelly Ayotte
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一方で、この“ビットコイン債”には冷ややかな視線も向けられている。
マーケット大学の金融学名誉准教授デイビッド・クラウス氏は、ビットコイン担保債について、従来型の地方債とは異なる革新的な金融商品になり得る一方で、「重大なリスク」を伴う可能性があると指摘する。
クラウス氏は4月、この債券案に関する分析を公表している。それによれば、民間借り手であるクリーンスパークが担保資金を差し入れる仕組みであり、州の資金や納税者に対する請求権は生じないという。
ただし同氏は、次のようにも釘を刺している。
「この債券は、デジタル資産をストラクチャード・ファイナンスに組み込むための概念実証としては機能するかもしれません。しかし、一般的な公共財政の手段としては適していません」
さらに同氏は、その本質的な意義について、伝統的な金融の枠組みを、値動きの激しいデジタル資産へ適用する難しさを浮き彫りにする点にあると述べている。
格付け会社ムーディーズは3月、このビットコイン債に暫定的な「Ba2」格付けを付与した。これは同社の分類では、信用リスクが大きい金融商品を意味する「投機的等級」に該当する。
エルサルバドルの“ビットコイン債”構想は頓挫
ニューハンプシャー州は、米国の州としては初期のビットコイン担保債発行主体となる可能性がある。しかし、この構想自体はまったく新しいものではない。かつてエルサルバドルでも同様のアイデアが脚光を浴びた。
ナジブ・ブケレ大統領のもと、エルサルバドル政府はビットコインを法定通貨とする法律を推進した。その流れのなかで、同政府は「ビットコイン・シティ」構想の資金調達を目的に、10億ドル(約1625億円)規模のビットコイン担保債、いわゆる「ボルケーノ債」の発行を発表した。
だが、2022年に提案されたこの計画は、暗号資産市場の下落を受けて、結局実現には至らなかった。

