
イーサリアム財団、AI決済を「匿名化」する新システム「zkAPI」をメインネットで公開 請求先バレずにAIが使える
イーサリアム財団が、AIなどのAPIサービスを「誰が払ったか分からない」状態で利用できる新システム「zkAPI」を本番環境で稼働させた。ゼロ知識証明を使い、課金のための身元を明かさずに支払いができる仕組みだ。ただし、プライバシーには依然として「穴」も残る。

AIを使うたびに、「誰が、いくら使ったか」が丸裸になる——。そんな当たり前を覆す仕組みが、ついに本番環境で動き出した。
イーサリアム財団は木曜日、新システム「zkAPI」がイーサリアムのメインネット(本番環境)で稼働を開始したと発表した。AIをはじめとするAPIサービスの利用料を、請求先の身元を一切明かさずに支払える——。それがこのシステムの売りである。開発は「オープン・アノニミティ・プロジェクト」との協業によるものだ。
仕組みはこうだ。
イーサリアム財団のdAIチームでAIコーディネーターを務めるヴィットリオ・リヴァベラ氏の投稿によれば、ユーザーはまずイーサリアムの「保管庫(ヴォールト)」に資金を預け入れる。そのうえで、ゼロ知識証明(ZKP)を用いて、API利用料を支払うのに十分な残高があることを「証明」する。このとき、どの預け入れが自分のものかは明かさずに済む、というわけだ。
すぐ使える用途は「AIの匿名利用」
このシステムの、手っ取り早い使い道のひとつがAIの利用だ。支払いとユーザーを紐づけずにAIを使える。
zkAPIは、あらかじめ上限額を定めた「使い捨て」の短命なAPIキーを発行する。プロンプト(指示文)はAIプロバイダーへ直接送られ、利用料の精算は別の「決済レイヤー」で処理される仕組みだ。プロジェクトはローカルクライアントとソフトウェア開発キット(SDK)、さらにブラウザ上で動くAIチャットの実装例も公開している。
今回の公開は、2月に提出されたある提案を受けたものだ。イーサリアム財団の研究者ダヴィデ・クラピス氏と、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリン氏が、ZKPを基盤としたAPI利用クレジットの構想を打ち出していた。今回のリリースは、その設計図を、メインネット上で実際に動く実装へと落とし込んだかたちだ。
もともとこの構想は、AIをはじめとする従量課金制のAPIに対し、プライバシーを保ったプリペイド(前払い)式のアクセスを提供する手段として提示されていた。
残された「穴」
もっとも、万能ではない。
zkAPIは、プロンプトの中身や、ネットワーク上のメタデータまでをプロバイダーから隠してくれるわけではない。つまり、IPアドレスや通信のタイミング、リクエストに含まれる情報などを手がかりに、ユーザーがセッションをまたいで特定されてしまう可能性は、依然として残っているのだ。

