
暗号資産を食い荒らす北朝鮮ハッカーの影 被害額は3カ月で約1308億円、ケルプDAOとドリフトが標的に
第2四半期の暗号資産エクスプロイト被害額は、前四半期比59%増の8億750万ドル、約1308億円に膨らんだ。背景には、北朝鮮系ハッカーの手によるケルプDAOとドリフト・プロトコルへの攻撃がある。

2026年上半期、暗号資産関連の被害額は前年同期比46.8%減の13億2000万ドル、約2138億円となった。数字だけ見れば、業界はようやく落ち着きを取り戻したかに見える。だが、暗号資産セキュリティ企業サーティックは、そうした見方に冷や水を浴びせる。
「被害が減った」という見出しに飛びつくのは早い。攻撃者はむしろ、より巧妙に、より破壊的になっているというのだ。
サーティックの報告によれば、第1四半期の被害の中心はフィッシングだった。被害額は5億820万ドル、約823億円にのぼる。一方、第2四半期に最大の攻撃手法となったのはウォレット侵害で、被害額は8億750万ドル、約1308億円に達した。
第2四半期の被害額の7割超は、ケルプDAOとドリフト・プロトコルへのハッキングによるものだった。これらの攻撃は、北朝鮮の国家支援を受けたハッカー集団による犯行とみられている。
サーティックはコインテレグラフに対し、こう語っている。
「『被害額が50%近く減少』という見出しだけを読めば、暗号資産エコシステムが大きく安全になったように見える。しかし、データはその結論を支持していない」
前年同期の数字は、史上最大の暗号資産エクスプロイトとなったバイビットへの14億ドル、約2268億円規模のハッキングによって大きく押し上げられていた。つまり今年の減少は、業界全体の防御力が高まったというより、昨年の“特大事件”が異常値だっただけ、というわけだ。
データは、北朝鮮系ハッカーがいまなお暗号資産業界にとって最大級の脅威であることを示している。TRMラボは4月、北朝鮮系ハッカーが2017年以降に盗み出した暗号資産は60億ドル、約9720億円を超えると推計している。

北朝鮮の国家関与、日米韓も警戒
ケルプDAOとドリフト・プロトコルの事件は、先月下旬、米国、日本、韓国の当局者による協議まで引き起こした。議題は、北朝鮮による悪意あるサイバー活動と、不正な収益獲得をどう抑え込むかだった。
各国当局者はまた、北朝鮮のIT労働者が詐欺スキームを強化するため、AIをますます活用していることも認めた。この動きについて、一部のサイバーセキュリティ業界幹部は、プロトコル攻撃の規模、速度、巧妙さを大きく引き上げているとみている。
サーティックは、業界が昨年よりも「構造的に高い攻撃活動」を受け止めていると警告する。バイビット事件を除けば、攻撃はより標的型になり、1件あたりの金銭的被害もより深刻になっているという。
TRMラボも、水曜日に公表した2026年上半期報告書で同様の結論に達した。
「盗まれた総額が減少したことをもって、安全な環境になったと誤解してはならない」
「総額が下がったのは、記録的な窃盗事件が再び起きなかったからであり、攻撃者の能力が低下したからではない」
TRMの分析では、上半期のインシデント件数は83件から207件へと2倍以上に増えた。これは、TRMが6カ月間の期間で記録した件数としては過去最多だ。
スマートコントラクトのエクスプロイトは125件で、上半期のインシデント全体の60%を占めたという。
秘密鍵を守れるかが、生死を分ける
サーティックは、秘密鍵とマルチシグウォレットの管理こそ、攻撃者にとって「最も重大なセキュリティ上の攻撃対象」であり続けていると指摘する。
同社は、多額のオンチェーン資産を保有する暗号資産プロトコルや機関投資家に対し、秘密鍵管理のあらゆる層を強化するよう求めた。ハードウェア面のセキュリティ、マルチシグのガバナンス、さらには署名者の拠点を地理的に分散させることまで含まれる。
サーティックは、この分野について「セキュリティ投資が非対称的なリターンをもたらす領域」だとしている。少しの備えが、巨額の損失を防ぐことにつながるという意味だ。
レジャーのような暗号資産用ハードウェアウォレット事業者も、以前から利用者に対し、シードフレーズをオフラインで保管し、決して他人と共有しないよう警告してきた。フィッシング被害を防ぐうえで、それは最も基本的な防衛線である。

