Cointelegraph
DOGE$0.06968 0.82%
TRX$0.3288 0.56%
LINK$8.13 0.49%
ZEC$507.84 0.94%
ADA$0.1906 0.96%
XRP$1.05 2.18%
ETH$1,906.37 1.72%
BTC$64,551.05 0.26%
XMR$366.38 3.33%
BNB$593.79 1.74%
XLM$0.1616 3.58%
SOL$73.67 0.70%
HYPE$56.45 1.12%
Felix Ng編集者Yohan Yu監修編集者

142億円が“乱数のミス”で蒸発 「コールドカード」、5年間誰も気づかなかった致命的欠陥の恐怖

最新ニュース公開日2026年8月5日

クラーケン最高セキュリティ責任者が「業界全体への警鐘」と断罪——「乱数生成」というブラックボックスの中で、いったい何が起きていたのか

「まさか、あの“鍵”がずっと偽物同然だったとは——」。暗号資産の自己管理(自己保管)の要として世界中の投資家に信頼されてきたハードウェアウォレット「コールドカード(Coldcard)」。その心臓部ともいえる「シードフレーズ生成」の仕組みに、なんと5年間も見抜かれなかった欠陥が潜んでいたことが発覚し、業界に衝撃が走っている。

暗号資産大手取引所クラーケンの最高セキュリティ責任者、ニック・パーコッコ氏は今週日曜、X(旧ツイッター)への投稿でこの問題を「業界全体への目覚まし時計だ」と表現。ハードウェアウォレットメーカーに対し、「認可された乱数源が、実際にファームウェアで使われているものと同一かどうか」を独立機関が検証する体制を作るよう訴えた。

パーコッコ氏は「利用者はシステムで最も重要な機能の実装をメーカー任せで信頼させられているのに、認可されたエントロピー(乱数の元)経路が本当に稼働しているという独立検証は一切ない」と指摘している。

この発言の背景にあるのが、まさに現在進行形で起きている攻撃だ。コールドカードの欠陥品から生成された“弱い”シードフレーズが悪用されているとみられ、日曜時点ですでに4,500以上のアドレスが被害に遭い、ビットコインにして**約9,000万ドル(約142億円)**が抜き取られたという。

発端は2021年の“ライブラリ乗り換え” 気づかれないまま5年が経過

コールドカードを開発するコインカイト(Coinkite)社は木曜、この欠陥が2021年3月から存在していたことを公表した。当時、新しい暗号ライブラリへの移行作業を行った際、ウォレット生成の処理が誤って、コード内にたまたま存在していた**予測可能な疑似乱数生成器(PRNG)にルーティングされてしまっていたのだ。本来使われるべきだった真性乱数生成器(TRNG)**ではなく、である。つまりシードは、チップのシリアル番号とタイマーを組み合わせたソフトウェア的な生成方法で作られていたことになる。

コインカイトは事後検証報告の中で、「コールドカードの乱数の大部分は、ソースコードに紛れ込んでいたPRNGから来ていた」と説明。一方で「入念に作り込んだTRNGのコードも動いてはいたが、それはあくまで“偶然”そうなっていただけで、重要度の低い処理にしか使われていなかった」と明かしている。

皮肉なのは、本来のTRNGコード自体は存在していたため、コードレビューでは「TRNGが実装されている」ことだけが確認され、「実際に呼び出されているのがそのTRNGかどうか」まではチェックされてこなかった点だ。これが5年間もの間、欠陥が野放しにされた最大の理由だという。

「決済端末より甘い」暗号資産業界の検証体制に厳しい指摘

パーコッコ氏によれば、こうした検証は他のセキュリティ業界ではすでに常識だという。米国の乱数生成器に関する政府標準「NIST SP 800-90B」や、ドイツ連邦情報セキュリティ庁(BSI)が定める同種の規格「AIS-31」を例に挙げ、「ハードウェアウォレット業界には、これに相当する仕組みが存在しない。セキュアエレメントに関するコモンクライテリアや一部のCSPN認証、ベンダー主導の監査はあるが、いずれも“検証済みの乱数源が実際にファームウェアで呼び出されているか”をエンドツーエンドで強制的に確認するものではない」と手厳しい。

さらに「決済業界では、独立した検査機関のテストを経ないPIN入力端末の出荷など認められていない。米政府も、エントロピー源の検証なしに暗号モジュールを受け入れない。暗号資産の自己管理だけが“例外”であっていいはずがない」と畳みかけた。

これに対し競合のレジャー(Ledger)社はX上で、自社のTRNGはドイツの基準「AIS-31」の下で評価されており、厳格な安全性・統計基準を満たす「PTG.2」認証を取得済みだと反論。さらに、フランス国家サイバーセキュリティ機関(ANSSI)による「CSPN認証」も保有しているとアピールしている。

コインカイトは出荷停止・在庫廃棄も…「デバイスは捨てないで」の呼びかけ

事態を受け、コールドカード側は日曜、木曜に脆弱性を確認して以降すべての出荷を停止し、施設内に残っていた該当ファームウェア搭載の在庫はすべて廃棄したと発表した。

一方で、コインカイトは影響を受けたデバイスをすでに持っているユーザーに対しては「資金回収の際に必要になる可能性がある」として、廃棄しないよう呼びかけている。同社は「複数の司法管轄にまたがり、法執行機関と連携しながら、犯人特定に向けた取り組みを支援していく」とも表明した。

“絶対安全”のはずだった暗号資産の金庫番に空いていた、誰も気づかなかった5年越しの穴——業界全体の信頼性そのものが問われる事態になりそうだ。

Cointelegraphは、独立性と透明性のあるジャーナリズムに取り組んでいます。本ニュース記事はCointelegraphの編集方針に従って制作されており、正確かつ迅速な情報提供を目的としています。読者は情報を独自に確認することが推奨されます。編集方針はこちらをご覧ください https://cointelegraph.jp/editorial-policy

この話題についてもっと