
ビットコイン139億円が流出、コールドカード狙う攻撃で被害4585アドレスに
ハードウェアウォレット「コールドカード」を狙った連続ハッキングが止まらない。被害総額はすでに1367BTC(約139億円)、実に4585アドレスに拡大した。恐怖に駆られたビットコイン保有者たちが一斉に資産を"避難"させ、その移動量はなんと、あのFTX破綻直後以来の異常な水準に達していた——。「セルフカストディは終わった」という悲鳴すら飛び交うなか、暗号資産界を揺るがすパニックの一部始終を追った。

その日、暗号資産業界を走った動揺は、3年近く前の"あの悪夢"を呼び起こすものだった。
ハードウェアウォレット「コールドカード」を狙ったとみられる大規模ハッキングが続くなか、小口のビットコイン送金が、あのFTX破綻以来まったく見られなかった水準にまで急増していたというのだ。
分析企業クリプトクアントのリサーチ責任者フリオ・モレノ氏が土曜日に公開したデータによれば、1BTC未満のビットコイン送金は金曜日、実に3万9600BTCに達し、2022年11月以来の高水準を記録した。
この数字、なんと2022年11月16日——暗号資産取引所FTXが経営破綻を申請したわずか数日後——に記録された3万9900BTCまで、あとたった300BTCに迫る"異常事態"である。
「FTX崩壊以来、ビットコインの“庶民(プレブス)”がこれほどの量を1日で動かしたことは一度もなかった」とモレノ氏。ユーザーたちが「行動を起こしている」ことに勇気づけられた、とも語った。
コールドカードのハッキング疑惑がなおも拡大を続けるなか、この一件は「セルフカストディ(自己保管)」という暗号資産の根幹思想そのものを問う、大きな試金石となりつつある。自分の資産は自分の手で守るべきなのか、それとも第三者のプラットフォームに委ねるべきなのか——。積年の論争に、再び火がついた。
収束せぬ被害、ギャラクシーが追う“3つの攻撃の波”
小口ビットコイン送金の急増の裏では、研究者たちが次々と新たな被害者を掘り起こしていた。7月下旬に初めて表面化したこのハッキング疑惑は、本稿執筆時点でもなお進行中とみられる。
暗号資産投資企業ギャラクシー・デジタルの調査部門ギャラクシー・リサーチが土曜日に報告したところによると、直近で特定された"波"だけで、さらに207.7BTC(約1320万ドル、約20億8000万円)が抜き取られていた。これにより被害推計は1367BTC(約8860万ドル、約139億円)、対象は4585アドレスにまで膨れ上がった。

Bitcoin drained from Coldcard wallets. Source: Coldcard Watch
ギャラクシー・デジタルの全社リサーチ責任者アレックス・ソーン氏は日曜日、X(旧ツイッター)への投稿で、攻撃がいまだ継続中であると警告。コールドカードで生成したアドレスにまだ資産を置いている者は、いますぐ移動させるよう呼びかけた。
ソーン氏によれば、チームは新たな被害者アドレスと攻撃者アドレスの特定を続けており、ユーザーからの通報が、研究者や当局による盗難資金の追跡に役立っているという。
「セルフカストディは終わった」——再燃する大論争
今回のコールドカード・ハッキング疑惑は、ビットコインの根幹思想である「セルフカストディ」のリスクと利点をめぐる論争に、再び油を注いだ。第三者に頼らず、自らの手で資産を管理する——それこそが暗号資産の核心である。
ビットコインのセキュリティ企業カーサの最高経営責任者(CEO)ニック・ノイマン氏は、「セルフカストディは終わった」との声に真っ向から反論。分散型ゆえに、ユーザーには対応する時間が残されていたと主張した。同氏の見立てでは、今回の攻撃でこれまでに盗まれ特定された量の、実に10倍ものビットコインが、セルフカストディによって守られていた可能性があるという。
論争は、伝統的金融(トラッドファイ)の支持者たちをも巻き込んだ。ブルームバーグのシニアETFアナリスト、エリック・バルチュナス氏は、ビットコインの上場投資信託(ETF)は多くのユーザーにとってより安全で便利な選択肢だと指摘。ETF業界の長い運用実績を引き合いに出した。一方で、これに反発する声も上がる。今回のコールドカードの一件は、あくまで一ウォレット提供業者の失態であって、セルフカストディそのものの失敗ではない、というわけだ。

