
チェイナリシスが米政府を提訴 ICEによるTRMラボへの約152億円「随意契約」に異議
米移民・関税執行局(ICE)が、競争入札を経ずにブロックチェーン分析企業TRMラボへ約152億円の契約を発注した。ライバルのチェイナリシスは、この判断が「恣意的で不合理だ」と主張。暗号資産取引を追跡する政府案件をめぐり、業界大手2社の争いが法廷に持ち込まれた。

暗号資産取引の“足跡”を追うブロックチェーン分析業界で、大手2社の争いが法廷に持ち込まれた。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは、米移民・関税執行局(ICE)が競合のTRMラボに随意契約を発注したのは不当だとして、米政府を提訴した。
「なぜTRMラボだけなのか」
チェイナリシス・ガバメント・ソリューションズは7月27日、米連邦請求裁判所に異議を申し立てた。関連する申立書は16日、裁判資料を公開するコートリスナーの「RECAP」アーカイブを通じて閲覧可能になった。
米政府の契約公告によると、契約額は約9460万ドル(約152億円)。国土安全保障タスクフォースの捜査に使用するフォレンジックソフトウェアと支援サービスが対象となる。
契約期間は2026年7月1日から2027年6月30日までの1年間だ。
チェイナリシスは、ICEの判断について「恣意的かつ気まぐれで、不合理だ」と主張している。
ICEは当初、TRMラボからフォレンジックソフトウェアと支援サービスを調達する方針を示していた。これに対し、チェイナリシス側も「自社なら業務を遂行できる」と説明する能力証明資料を提出したという。
それでも契約を手にしたのはTRMラボだった。
暗号資産捜査を支えるライバル2社
チェイナリシスとTRMラボはいずれも、ブロックチェーン上の資金移動を分析するツールを政府機関などに提供している。
政府の捜査機関は、こうしたツールを使って暗号資産取引を追跡し、資金洗浄や詐欺をはじめとする犯罪の捜査を進める。つまり今回の契約は、単なるソフトウェア導入ではない。暗号資産犯罪を追う米政府の“目”を、どちらの企業が担うのかという争いでもある。
ただし、チェイナリシスが具体的に何を問題視し、裁判所にどのような救済を求めているのかは明らかになっていない。
申立書によると、訴状にはチェイナリシスの機密情報や独自技術、営業秘密が含まれている。このため訴状は現在も封印されており、裁判所も7月31日、非公開のまま扱うことを認めた。
TRMラボも裁判に参加
一方、契約を獲得したTRMラボは7月28日、利害関係者として訴訟に参加した。
裁判所は米政府とTRMラボに対し、8月21日までに回答書面を提出するよう求めている。口頭弁論は9月2日に予定され、米政府側は9月10日までに判断を下すよう裁判所に要請した。
TRMラボはコメントを拒否した。チェイナリシスとICEからは、記事掲載までに回答がなかった。

