
【暗号資産の税金】年72兆円が課税対象なのに、国際ルールが見ているのはたった14%だった
ブロックチェーン分析大手チェイナリシスが衝撃のレポートを公表した。2025年の1年間で、世界では少なくとも4570億ドル(約72兆6000億円)もの「課税対象になりうる」オンチェーン取引が動いていたという。ところが今年1月に始まった国際ルール「CARF」が捕捉できるのは、そのうちわずか14%。残る86%は、いったいどこへ消えたのか——。

「4570億ドル」という、あまりに大きすぎる数字
その数字を目にした瞬間、世界中の税務当局の担当者は言葉を失ったのではないか。
ブロックチェーン分析大手チェイナリシスが公表した最新レポートによれば、2025年の1年間で、世界の「課税対象になりうる」オンチェーンの暗号資産取引は、少なくとも4570億ドル(約72兆6000億円)に達していた。
しかも、である。国際的な報告ルールがこのうち捕捉できるのは、ほんの一部にすぎないというのだ。
アメリカだけで約18兆円
内訳を見ていこう。
国別では、アメリカが推計1126億ドル(約17兆9000億円)。地域別では北米が1346億ドル(約21兆4000億円)で全地域トップに立ち、これに欧州連合(EU)の1251億ドル(約19兆9000億円)が続く。
チェイナリシスの推計に含まれるのは、実現益、マイニングやステーキング、レンディングといった活動から得た所得、そして暗号資産建ての決済——主要6ブロックチェーン上で起きた、これらの動きである。
逆に言えば、中央集権型取引所(CEX)の内部で完結する売買などは、この数字にすら入っていない。
つまり72兆円という金額ですら、「氷山の一角」にすぎない可能性があるのだ。
捕捉率、たったの14%
問題はここからである。
チェイナリシスによれば、経済協力開発機構(OECD)が策定した「暗号資産報告フレームワーク」(CARF)の対象となる取引は、同社が特定したオンチェーンの課税対象活動のうち、**わずか14%**にすぎなかった。
残る86%——。その中身は、分散型取引所(DEX)での取引、ピア・ツー・ピア(P2P)送金、オンチェーンで発生する所得、そして決済である。いずれも、当局の目が届きにくい領域ばかりだ。
CARFは2022年にOECDが策定した枠組みで、対象となる暗号資産サービス事業者に対し、顧客の取引データを税務当局へ報告するよう義務づけている。

CARF covers only 14% of potentially taxable onchain crypto activity.
Source: Chainalysis
CARFの「設計思想」に潜んでいた穴
CARFに基づくデータ収集は、2026年1月1日、英国やEUを含む48の国・地域で一斉に始まった。対象となる暗号資産プラットフォームには、顧客情報や税務上の居住地情報の追加収集が求められる。
集められた情報は各国の税務当局へ報告され、当局同士が国境を越えて共有する。壮大な国際包囲網である。

CARF framework. Source: OECD
だが、そこにこそ落とし穴があった。
CARFが仲介事業者(インターミディアリー)に照準を絞っていること。これこそが、チェイナリシスの指摘する「空白」を生んだ元凶なのだ。
CARFの策定に携わった元OECDアドバイザーのコルビー・マンゲルス氏は今年1月、コインテレグラフの取材に対し、CARFは暗号資産取引を「業として」仲介する事業者を前提に設計されている、と明かしている。
裏を返せば——。中央集権的な運営者も、顧客資産を預かる関係も存在しない分散型金融(DeFi)の大部分は、そもそも報告義務を課す相手が「いない」。網の目をすり抜けているのではない。最初から網が張られていないのである。
規制当局の"次の一手"はあるのか
もっとも、この構図が永遠に続くとは限らない。
マンゲルス氏によれば、税務当局はマネーロンダリング対策(AML)規制の動向を注視しているという。DeFiプラットフォームやその運営者を、どの時点から「規制対象の暗号資産サービス事業者」として扱うべきか——。その線引きをめぐる議論が、いままさに進んでいるからだ。
分散型プラットフォーム向けのルール整備が進めば、86%という巨大な"死角"は、やがて狭まっていくかもしれない。
72兆円の行方をめぐる攻防は、まだ始まったばかりである。

