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Sam BourgiライターRobert Lakin監修編集者

「ドルがないならUSDTを使え」ボリビア政府が暗号資産を“通貨扱い”へ 国民生活を救う切り札になるのか

最新ニュース公開日2026年7月14日

深刻なドル不足に苦しむ南米ボリビアが、テザーのステーブルコイン「USDT」を日常の支払いや貯蓄に使える“第3の通貨”として認めることを検討している。銀行や現金に頼らない異例の国家実験は、ラテンアメリカ最大級の暗号資産導入策となる可能性がある。

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南米ボリビアで、にわかには信じがたい“通貨革命”が動き始めている。

同国政府は、テザーが発行する米ドル連動型ステーブルコイン「USDt(USDT)」を、国内の決済システムに組み込むことを検討している。慢性的な米ドル不足にあえぐなか、暗号資産を事実上の決済通貨として活用しようというのだ。

実現すれば、ラテンアメリカにおけるステーブルコイン導入策として、最大級の事例になる可能性がある。

USDTを「普通の通貨」として流通させる

ボリビアのホセ・ガブリエル・エスピノサ経済・財政相は月曜日の記者会見で、USDTを自国通貨ボリビアーノや米ドルと並ぶ、「単なるもう一つの通貨」として流通させるための規制枠組みを検討していると明らかにした。

スペイン語圏の暗号資産メディア「クリプトノティシアス」によると、この制度は現在も審査段階にある

導入されれば、USDTは日常の買い物や代金の支払いだけでなく、貯蓄や商取引にも利用できるようになる。現金や従来型の銀行システムだけに依存せず、スマートフォン上のデジタル資産で生活費を支払うことも可能になるわけだ。

ただし、政府も無条件で解禁するつもりはない。

エスピノサ氏は、制度導入には強固な規制と厳格なマネーロンダリング対策が必要になると強調した。

ボリビアは現在、金融活動作業部会(FATF)の「グレーリスト」に入っている。これは、マネーロンダリングやテロ資金供与の防止体制に不備があり、国際機関による監視強化の対象となっている国・地域を示すものだ。

便利だからといって、野放図にUSDTを流通させれば、犯罪資金の温床になりかねない。政府は利便性と金融犯罪対策の間で、難しいかじ取りを迫られる。

Source: EL DEBER

かつて暗号資産を禁止していた国が一転

今回の構想は、ボリビア政府が進めるデジタル資産政策の一環だ。

ボリビアは長年、暗号資産の使用を禁止してきた。しかし、2024年にこの禁止措置を撤廃。以来、政府は暗号資産を正式な金融システムに組み込む方向へと、大きく方針を転換している。

2025年末に就任したロドリゴ・パス・ペレイラ大統領の政権も、デジタル資産を公的な金融システムに統合する方針を掲げている。

これにより、将来的には銀行が暗号資産関連の商品やサービスを提供するほか、USDTなどのステーブルコインを利用した預金口座が登場する可能性もある。

USDTは、米ドルとほぼ同じ価値を保つよう設計された世界最大のステーブルコインだ。

コインマーケットキャップによると、USDTの時価総額は1840億ドルを超えている。日本円に換算すると、実に約29兆8000億円に達する。

すべての原因は「ドルが手に入らない」

なぜボリビアは、ここまでUSDTに期待しているのか。

最大の理由は、国内で続く深刻な米ドル不足だ。

ボリビアでは、自国通貨ボリビアーノと並び、米ドルが貯蓄や商取引に広く使われてきた。輸入品の購入や海外との取引には、とりわけドルが欠かせない。

ところが、国内の外貨準備が減少し、必要なドルを確保できなくなった。

ロイターによると、ボリビアは2011年から、1ドルを購入時6.86ボリビアーノ、売却時6.96ボリビアーノとする固定相場を維持してきた。

しかし、外貨準備への圧力が限界に達し、政府は2026年6月、約15年間にわたって続けてきたドルとの固定相場制をついに終了した。

新たな為替水準は一時、1ドル=9.73ボリビアーノまで下落。事実上、大幅な通貨切り下げとなった。

ドル不足が深刻化するにつれ、正規の銀行や両替所ではドルを入手できない国民が続出。その結果、非公式の「並行為替市場」が急拡大した。

そこでは、ドルが政府の公式レートを大幅に上回る価格で売買されていた。

つまり、銀行に行ってもドルは買えず、闇市場に行けば高値を吹っかけられる――。国民や企業は、そんな八方ふさがりの状態に追い込まれていたのである。

「デジタルドル」に国民が殺到

公式レートと実勢レートの差が広がるにつれ、米ドルの代替手段に対する需要も急増した。

そこで注目を集めたのが、1USDTがおおむね1ドルになるよう設計されたステーブルコインだ。

現物のドル紙幣が国内になくても、USDTであれば暗号資産取引所やデジタルウォレットを通じて保有できる。送金や支払いにも利用しやすく、銀行の営業時間や外貨在庫に左右されにくい。

ボリビア国内ではすでに、USDTなどのステーブルコインが代金の支払いに使われるケースが増えている。

政府の構想は、こうした“事実上のドル代替通貨”を地下経済のまま放置するのではなく、正式な制度の中に取り込もうとするものだ。

ブロックチェーン分析企業チェイナリシスによる2025年の調査でも、ボリビアはラテンアメリカにおける暗号資産普及率の上位に入った。

同国の12カ月間の暗号資産取引額は148億ドル、日本円で約2兆4000億円に達した。

かつて暗号資産を禁止していた国が、いまやUSDTを国民生活を支える通貨として認めようとしている。

ドル不足という現実に追い詰められた末の苦肉の策なのか。それとも、国家がステーブルコインを本格採用する新時代の幕開けなのか。

ボリビアの実験を、世界中の新興国が固唾をのんで見守ることになりそうだ。

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