
ブロックワークス、メッサーリを買収 暗号資産データ業界で進む“淘汰”の波
メッサーリでは近ごろ、経営トップの交代や人員削減が相次いでいた。そんな中で実現した今回の買収により、ブロックワークスは暗号資産業界屈指のデータ・分析プラットフォームを、拡大中のリサーチ事業に取り込むことになった。

暗号資産データ・メディア企業のブロックワークスが、分析会社メッサーリを買収した。買収額は1000万ドル超、日本円で約16億円超。ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。
メッサーリといえば、暗号資産業界では知られた調査・分析会社である。出資者にはブレバン・ハワード・デジタルやポイント72ベンチャーズなどが名を連ねる。2022年にはシリーズBラウンドで3500万ドル、約56億円を調達し、その際の評価額は約3億ドル、約480億円に達していた。
それが今や、16億円超での売却である。かつての480億円評価から見れば、まさに“叩き売り”に近い。

Source: Messari
ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、この大幅なディスカウントは、メッサーリ自身の苦境と、暗号資産セクター全体の弱含みを映したものだという。
今年に入り、メッサーリはCEOをエリック・ターナー氏からディラン・リー氏へ交代。さらに人員削減にも踏み切った。リー氏はリンクトインへの投稿で、同社が「多くの仲間と袂を分かった」と明かし、同時に「AIファースト企業」への転換を進めていると説明していた。

Source: LinkedIn, Diran Li
一方のブロックワークスは2018年創業。当初は暗号資産メディアとイベント運営の会社として出発したが、その後、調査・データ事業へと軸足を広げていった。今年4月にはシリーズAの追加調達を発表し、その評価額は1億9200万ドル、約307億円とされた。
ブロックワークスは買収発表のブログ投稿で、メッサーリが4万以上のデジタル資産をカバーするデータを持ち、投資家、取引所、開発者が利用するAPIを運営していると説明した。両社の統合により、市場データ、リサーチ、コンプライアンス、投資家向け広報サービスを拡充するという。
またメッサーリはXへの投稿で、既存ユーザーについては、今回の買収後もエンタープライズサービスやAPIへのアクセスは途切れないと説明している。
暗号資産インテリジェンス業界を揺さぶるM&A再編
ブロックワークスによるメッサーリ買収は、暗号資産データ、リサーチ、メディア各社のあいだで進む再編の一幕にすぎない。
今月初めには、パリ拠点の暗号資産データ企業カイコが、米国に強みを持つデジタル資産データプロバイダーアンバーデータを買収した。狙いは、デリバティブ分析、オンチェーンデータ、AIを活用したリサーチツールの拡充である。
カイコは、この買収によって銀行、資産運用会社、ヘッジファンド、取引所といった機関投資家向け顧客への対応力を高めるとしている。さらにアンバーデータが持つデリバティブ分析やオプションデータ商品も取り込む。カイコはこの取引を、機関投資家向けの暗号資産市場データ・分析を統合する戦略の一環と位置づけた。
1月には、ブロックチェーン・オラクル企業のレッドストーンが、セキュリティ・トークン・マーケットと同社のカンファレンストークナイズディスを買収した。これにより、株式、不動産、債券、ファンドなど、800以上のトークン化資産を対象とするデータセットを手に入れ、機関投資家向けデータ事業を拡大した。
さらに数カ月後には、ジト財団がソラナ専門のニュース・リサーチ・分析プラットフォームソラナフロアを買収した。ソラナフロアは、親会社であるステップ・ファイナンスの財務ウォレットから4000万ドル、約64億円が流出した事件を受けて閉鎖されていた。ジト財団の買収により、同メディアは復活し、編集チームも維持されることになった。
かつては「暗号資産の成長を読むための羅針盤」ともてはやされたデータ企業たち。だが市場の熱狂が冷め、AIという新たな主役に資金が流れるなか、業界地図は静かに、しかし確実に塗り替えられている。

