
米財務省、イラン最大の暗号資産取引所を制裁
アメリカ財務省が、イランの暗号資産業界にいよいよ本格的なメスを入れた。米財務省は火曜日、イランの暗号資産取引所4社を制裁対象に指定したと発表した。対象となったのは、同国最大の取引所であるノビテックスをはじめ、ワレックス、ビットピン、ラムジネックスの4社である。

「デジタル・ドルの抜け道」にメス 押収額は約1600億円
アメリカ財務省が、イランの暗号資産業界にいよいよ本格的なメスを入れた。
米財務省は火曜日、イランの暗号資産取引所4社を制裁対象に指定したと発表した。対象となったのは、同国最大の取引所であるノビテックスをはじめ、ワレックス、ビットピン、ラムジネックスの4社である。これにより、米国企業や米国人は、これらのプラットフォームにサービスを提供することを禁じられる。ロイターも、制裁対象がイラン国籍者4人とイラン拠点の暗号資産取引所4社に及ぶと報じている。
米財務長官のスコット・ベッセントは、声明でこう断じた。
「イラン経済が自由落下するなか、体制側はデジタル資産技術を自らの腐敗した目的のために取り込んできた。制裁逃れや国外への資産移転がその典型だ」
今回の制裁は、米財務省が進める対イラン圧力キャンペーン、「エコノミック・フューリー(経済の怒り)」の一環である。米国は、イランを国際金融システムから切り離すことを狙っており、その射程は銀行網だけでなく、暗号資産の“逃げ道”にも及び始めた。

Source: Treasury Department
背景には、2月に始まった米国とイスラエルによる共同攻撃をきっかけとするイラン戦争がある。米国は停戦交渉を探る一方で、世界の石油輸送の約5分の1が通過する要衝、ホルムズ海峡をめぐる対立のなか、イランへの攻撃を繰り返してきた。
ベッセント長官は、財務省の最優先課題のひとつがイランの核開発計画を終わらせることだと強調する。
「約束した通り、財務省は『エコノミック・フューリー』を支える資金の流れを追い続ける。銀行システム経由であろうと、デジタル資産経由であろうと、体制が核兵器を開発することを阻止するためだ」
今回の制裁は、ベッセント長官が、イラン戦争開始以降、イラン系の暗号資産取引所やウォレットから約10億ドル、日本円で約1600億円相当の暗号資産を押収したと明らかにしてから、わずか4日後のことだった。
ノビテックスは「イランのデジタル・ドル・パイプライン」
なかでも財務省が照準を合わせたのが、イラン最大の暗号資産取引所、ノビテックスである。
米財務省によれば、ノビテックスはイラン革命防衛隊、いわゆるIRGCや、すでに制裁対象となっている組織への送金を助け続けてきたという。ロイターは、ノビテックスがイラン中央銀行やIRGCのために数億ドル規模の取引を処理してきたと報じている。
ブロックチェーン分析企業チェイナリシスは火曜日、ノビテックスをイランの「デジタル・ドル・パイプライン」の中核と位置づけた。同社によれば、ノビテックスはイラン国内の暗号資産取引量のおよそ半分を扱っているという。
財務省はさらに、ノビテックスが単なる金融インフラにとどまらず、イラン国民への抑圧にも加担してきたと主張する。国家とつながる市民監視を支える取引を促進した、というのだ。
制裁対象には、ノビテックスの経営陣も含まれた。CEOのセイエド・アリ・ホーイー、会長のアミール・ホセイン・ラドが、米財務省外国資産管理局、いわゆるOFACの制裁リストに追加された。
ロイターによれば、米財務省はノビテックスのCEOであるアミール・ホセイン・ラドに加え、イラン有力一族ハラジ家に連なる人物らも制裁対象にした。ノビテックス側は、政府との直接的な関係を否定し、不正資金の流入があったとしても経営陣の承認や認識なしに行われたものだと主張している。
米財務省は、これまでにイラン体制やその代理勢力が利用し得た資金ルートを、数百億ドル規模、日本円で数兆円規模にわたって遮断してきたとしている。
標的となったのは暗号資産だけではない。いわゆる「影の銀行」ネットワーク、イランの石油取引を支える外国当局者や企業、軍事活動を支援する関係者にも制裁の網は広がっている。
暗号資産は本来、国境を越える金融技術として期待された。だが、制裁と戦争の時代においては、国家が資金を逃がすための地下水脈にもなり得る。今回のノビテックス制裁は、その水脈をワシントンが本気で塞ぎにかかったことを示している。
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